ぷらだー・うぃりしょうこうぐん

プラダー・ウィリ症候群

同義語
プラダー・ウィリー症候群
監修:

概要

プラダー・ウィリ症候群とは、脳の視床下部という部位が上手くはたらかないことによって体のさまざまな機能を正常に調節することができなくなる病気です。発症頻度は15,000人に1人程度とされており、染色体の異常によって引き起こされることが分かっています。

出生時に筋緊張の低下や哺乳障害を認め、プラダー・ウィリ症候群と疑われ、遺伝学的検査により診断されることが多くあります。発達の遅れ、過食による肥満、衝動性などの精神・行動症状を認めます。肥満をコントロールできないと、糖尿病などの合併症が引き起こされます。現在のところプラダー・ウィリ症候群を根本的に治す方法はありません。そのため、治療は主に肥満を予防するための食事療法や運動療法、成長ホルモン療法などが中心となります。

原因

プラダー・ウィリ症候群の原因は、15番染色体の変化とされています。1つの染色体には複数の遺伝子が含まれており、ヒトは通常1番から23番までの染色体をもっています。15番染色体がもつ遺伝子のうち、特に父親由来でのみはたらくSNORD116と呼ばれる遺伝子など、複数の遺伝子のはたらきの消失が関わっていると推測されています。詳細は分かっていません。

この病気は通常、偶発的に起こるものとされており、ほとんどの場合、遺伝性はないとされています。同じ家族の中で複数の方が発症するケースは非常にまれです。

症状

プラダー・ウィリ症候群は、脳の視床下部と呼ばれる部位の機能異常によってさまざまな症状が引き起こされます。視床下部には、ホルモン分泌、体温、呼吸、血圧、心拍数の調節のほか、満腹感や睡眠などを制御するはたらきがあります。そのため、プラダー・ウィリ症候群では過食やホルモン分泌異常を認めます。また、この病気では特徴的な外見の変化がみられ、小さな手足、アーモンドのような目、薄い上唇、下がった口角、色素低下、背骨の変形などが特徴として挙げられます。出生後、筋肉の緊張の低下や哺乳障害を認めますが、乳児期後期には改善してきます。

3~4歳頃になると、満腹中枢の異常によって過食傾向となり、過食を適切にコントロールできないと、肥満が目立つようになります。また、低身長になりやすい特徴があります。

学童期以降は、こだわり・パニックなどの行動が目立ち、日常生活に支障をきたすようになります。成人以降は糖尿病などの肥満合併症が生じやすく、慎重な経過観察が必要です。

症状の現れ方は患者によって異なり、特に近年は治療や管理方法の発展により、従来よくみられた肥満などの症状が改善傾向にあることが報告されています。

検査・診断

プラダー・ウィリ症候群が疑われる場合は、以下のような検査が行われます。

遺伝学的検査

プラダー・ウィリ症候群は染色体の異常によって引き起こされる病気であるため、確定診断には遺伝学的検査が必須となります。

血液検査

プラダー・ウィリ症候群では、ホルモン分泌の異常が生じるため、全身状態の把握を目的としたホルモン値の測定を行うのが一般的です。また、肥満に伴う糖尿病脂質異常症の発症リスクが高いため血糖値や脂質の測定も重要です。

治療

プラダー・ウィリ症候群は染色体の異常による先天性の病気であり、現時点では根本的な治療法はみつかっていません。しかしながら、肥満や糖尿病などの身体症状に加え、認知機能や精神発達への影響も認められるため、それぞれの症状に応じた治療が必要となります。

治療の中心となるのは、過食による肥満を予防するための食事療法や運動療法です。肥満や筋肉量の減少といった体組成異常に対しては成長ホルモン治療を行うことができます。また、性ホルモンなどの不足を補うためのホルモン補充療法が必要な方もいます。さらに、認知機能や精神発達の遅れに対しては、療育や職業訓練などを通じて、社会生活を営めるようになることを目的として支援を行っていきます。

最終更新日:
2025年05月29日
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2025/05/29
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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