りんぱかんきけい

リンパ管奇形

同義語
リンパ管腫
最終更新日:
2023年08月09日
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2023/08/09
更新しました
2023/07/21
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概要

リンパ管奇形とは、リンパ液がたまった嚢胞(のうほう)が集まってコブのような塊を作る病変で、リンパ管腫とも呼ばれます。多くが首や(わき)の下などに現れますが、顔や口腔内、筋肉、縦隔(左肺と右肺の間)など全身に発生する可能性があります。

ほとんどが出生時または2歳までに発症し、体の成長に合わせてリンパ管奇形も大きくなると考えられます。遺伝やほかの部位に転移することはなく、命に直接影響を及ぼす病気ではありませんが、発生部位によっては呼吸困難を招く恐れがあります。そのため、そうしたリスクの軽減をはじめ、生活上の障害や見た目の問題を解消するために治療を行うことがあります。

リンパ管奇形は嚢胞の直径1cmを基準として、大きい嚢胞の“マクロシスティック(macrocystic)”、小さい嚢胞の“ミクロシスティック(microcystic)”、それらが混在している“混合型”の3種類に分けられ、病型によって治療の選択が異なります。

原因

リンパ管奇形の多くが先天性(生まれつき)で、胎児のリンパ管形成時に何らかの異常が生じることが原因と考えられています。リンパ管の閉塞(へいそく)やリンパ管に生じた細胞の異常などが影響するといわれていますが、詳しい原因は解明されていません。

多くが先天性ですが、成人してからリンパ管奇形を発症するケースもあります。成人でリンパ管奇形を発症する原因としては、PIK3CAという遺伝子の変異によって周辺細胞に影響を及ぼし、リンパ管奇形を招くと考えられています。

症状

一般的に痛みはないものの、リンパ管奇形が生じた部位や大きさによっては見た目が気になったり体を動かしにくかったりするほか、以下のような症状が現れることがあります。

呼吸・嚥下困難

首や舌、口腔内にリンパ管奇形ができた場合は気道を、縦隔に生じた場合は気管を圧迫して呼吸困難を招く恐れがあります。また首のほか、あごに発生した場合は食べ物や水分を飲み込む(嚥下(えんげ))ことが難しくなることもあります。

発熱・痛み

嚢胞内に細菌が侵入したり出血したりすると、嚢胞が急に大きくなることや発熱や痛みが出ることもあります。

腸閉塞・排便困難など

腹部に発症した場合は腸閉塞や血尿、腹痛、排便困難などを生じることがあります。

検査・診断

触診だけではリンパ管奇形と確定できないため、超音波やCT、MRIの画像検査を行います。

そのほか、嚢胞内にリンパ液がたまっていることを確認するため、リンパ管奇形から採取した細胞を顕微鏡で観察したり、リンパ管造影検査などを行ってリンパ液の流れをみたりすることもあります。

治療

リンパ管奇形は自然に消滅することや症状が現れないこともあるため、経過観察を行って治療を行わない場合もあります。しかし、見た目が気になる場合や気管を圧迫し呼吸困難などの恐れがある場合は治療を行います。

リンパ管奇形の治療は主に硬化療法、外科手術、内科治療の3つがあり、リンパ管奇形の患部や種類によって適切な治療は異なります。

硬化療法

リンパ嚢胞内部に硬化薬を注射する治療です。薬剤の注射後は、数週間かけてリンパ嚢胞が縮小します。嚢胞内のリンパ液を吸引した後に硬化薬を注入すると、もっとも効果が得られると考えられています。

硬化療法は傷あとが残らない治療法ですが、薬剤の反応で一時的に高熱や腫れなどが生じることがあるほか、小さく嚢胞に穿刺しづらいミクロシスティックリンパ管奇形には効果が得られにくいとされています。

外科手術

リンパ液で膨らんだ嚢胞を手術で切除する治療です。嚢胞を完全に切除できれば完治でき、硬化療法が効きづらいとされるミクロシスティックリンパ管奇形にも有効だとされています。

顔や体の奥深くに発症した場合は、重要な神経や血管などを損傷しないために嚢胞の一部しか切除できないことがあります。

内科治療

mTOR(エムトール)*阻害薬のシロリムスがリンパ管奇形を縮小させる作用があると報告されたことを受け、2021年9月に難治性リンパ管奇形がシロリムスの内服療法の適応疾患として承認されました。口内炎にきび、感染症などの副作用が生じることがありますが、重篤な症状が現れるケースはまれです。

また、漢方薬の越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)にもリンパ管奇形への有効性が報告されています。漢方薬は副作用のリスクが少ないことから使用される機会が増えてきていますが、現時点で研究成果の信頼性は十分ではないとされています。

*mTOR:血管や細胞を作るはたらきのあるタンパク質

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