日本生殖医学会は2020年5月18日、一時延期していた不妊治療の再開を考慮するようにとの声明を発表しました。不妊治療を始めてよいのか迷っているカップルに向けて、恵愛生殖医療医院の院長である林 博先生は、このような時期だからこそ未来に希望を持って不妊治療に取り組んでほしいと言います。
今回は、妊娠を希望するカップルが自宅でできることや、これから不妊治療を始める方が知っておくべきことについて、林先生に伺いました。
『新型コロナウイルス感染拡大による不妊治療への影響とは?』でも述べたように、妊娠率は加齢により低下していくことが分かっています。女性の場合は特に、35歳を超えたら、できるだけ早く不妊治療を始めることが大切です。35歳より前でも“妊娠できるかどうか不安だな”と少しでも思ったら、気軽に受診していただくことをおすすめします。
妊娠のためには、普段からバランスのよい食事と十分な睡眠を心がけ、健康的な生活を送ることが大切です。
特に食事については、妊娠した後の赤ちゃんの成長を考えて、マルチビタミンと葉酸を摂取するよう心がけてください。その際、市販のサプリメントなどを使用しても構いません。
喫煙は、男女問わず妊娠率を低下させることが報告されています。喫煙者の方は、ぜひ禁煙に取り組んでください。
カフェインやアルコールの摂取については、実は、少量であれば妊娠しやすさへの影響を心配する必要はほとんどありません。リラックスできてストレスの解消につながるという方も多いと思います。
必ずしもストレスが不妊症を引き起こすわけではありませんが、強いストレスの影響で間接的に妊娠が難しくなるケースもあります。たとえば、女性の排卵障害(排卵がうまく起こらないこと)の原因の1つとしてストレスが挙げられます。上手にリフレッシュすることを心がけながら、不妊治療に取り組むことをおすすめします。
“これをすれば妊娠しやすくなる”という生活習慣や行動、治療法は特にありません。よく、妊娠した方の体験談などを見聞きして「自分もそれを試してみたくなった」というようなご相談を受けることがありますが、信頼できない情報も多いようだと感じています。エビデンス(科学的根拠)に基づいた情報かどうかを確認するよう、心がけることが大切です。具体的には、特定の治療を行ったグループと行っていないグループを比較し、どちらのグループの妊娠率が高かったか、ということが明らかにされている統計的なデータは、信頼できる情報だと考えられます。
仕事をしている方は、続けたほうがよいと思います。よく“不妊治療のために仕事を辞めなければ”と悩んでいる患者さんがいらっしゃいますが、ずっと不妊治療のことだけを考えていると、必要以上に不安を感じたり悩んだりして、ストレスをためてしまいやすくなります。
仕事をしていると気が紛れることも多いですし、不妊治療にかかる費用を確保するという意味でも、続けていくことをおすすめします。
不妊治療を受ける方は、治療にかかる費用の一部を助成する支援事業を利用できる場合がありますので、ぜひご確認ください。一部の企業では、積極的に助成事業を実施していることもあります。助成金の対象となる基準に当てはまるかどうかなど、気になることがあればお気軽にご相談ください。
不妊症は、1人で抱える病気とは違い、カップルの病気です。そのことを踏まえて、“パートナーと一緒に治療する”という意識を持つことが大切です。初めて病院を受診される際は、できるだけお二人でご来院いただければと思います。
新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、世界中で多くの方が亡くなりました(2020年6月時点)。このような時期ですから不妊治療を自粛されている方もいらっしゃるかと思います。しかし、赤ちゃんは国の“宝”です。次世代に生命を継ぐ、未来への希望でもあります。また歴史上、戦争で多くの方が亡くなった直後に出生数の増加がみられたベビーブームのように、パンデミックが去った後には人間の本能として、妊娠しやすくなる時期が来るものなのかもしれません。遺伝子を次世代につないでいくためにも、ぜひ今だからこそ妊活や不妊治療に取り組むことを考えていただければと思います。
男性は、妊娠への年齢の影響は女性より少ないものの、年齢とともに妊娠率は下がっていきます。男性と女性の複合的な要因も多いですが、不妊症の原因の半分近くは男性側にあるといわれています。極端に精子の数が少なかったり、精子の運動性が低かったりして、自然妊娠が困難な状態の方もいます。自然妊娠を目指している間に、女性が妊娠に適した時期を過ぎてしまうことも考えられるため、男性もできるだけ早く検査を受けることが大切です。
恵愛生殖医療医院 院長
恵愛生殖医療医院 院長
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医日本生殖医学会 生殖医療専門医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医日本周産期・新生児医学会 周産期専門医(母体・胎児)
1997年に東京慈恵会医科大学卒業後、同大学病院にて生殖医学に関する臨床および研究に携わる。
2011年4月恵愛病院生殖医療センター開設。
2016年1月恵愛生殖医療クリニック志木開院。院長就任。
2018年1月同クリニックを和光市に移転し、恵愛生殖医療医院へ改称。
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医、日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医、日本周産期・新生児医学会認定 周産期(母体・胎児)専門医を持つ不妊治療のスペシャリストとして活躍。自らも体外受精・顕微授精や不育治療を経験しており、患者さま目線の治療を提供することをモットーとしている。
林 博 先生の所属医療機関
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