概要
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、主に1歳未満の子どもに発生し突然死をもたらす症候群で、「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予想できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない」ものと定義されています。
乳幼児突然死症候群では、それまで健康であった赤ちゃんが何の前触れもなく突然亡くなってしまいます。睡眠中に亡くなることが多いとされています。
日本では、年間100名前後の子どもが乳幼児突然死症候群で亡くなっていると報告されており、2019年の統計上では乳児死亡原因の第4位となっています。生後2か月から6か月の子ども、男児に多く、12月以降の冬期に起こりやすい傾向があります。
原因
乳幼児突然死症候群に明らかな原因はありませんが、生後早期の不安定さ、脳幹の機能異常、風邪などストレスなどが関係しています。
生後2〜6か月ごろは、まだ生まれた後のこの世界に適応しようと頑張っている時期です。そのため、脳や心臓のはたらきが不安定です。このようなときに、うつ伏せ寝や風邪などのストレスを受けると乳幼児突然死症候群を発症しやすくなります。
実際に、乳幼児突然死症候群を発症した赤ちゃんの約半数は風邪などの感染症にかかっています。
そのほかにも、睡眠や呼吸などを調節する脳幹部の機能異常が関与しています。脳幹部に異常があると、鼻や口が塞がれても息苦しさを感じられず抵抗できません。脳幹部に異常が生じる原因ははっきりとは分かっていませんが、母親など身近な大人の喫煙、未熟児や低出生体重児、遺伝子の異常などが関係していると考えられています。
症状
乳幼児突然死症候群の症状は、突然死以外ありません。それまで成長発達に異常もなく、突然死を引き起こすような病気を指摘されていないような子どもに生じます。
また、睡眠時に起こることが多いのですが、赤ちゃんが寝る前も普段と比べて大きな変化を認めません。まさに、それまで健康ですくすく育っていた赤ちゃんが突然亡くなる病気です。
検査・診断
乳幼児突然死症候群を未然に予知できる検査はありません。また、乳幼児突然死症候群の診断のためには、解剖などにより突然死を引き起こした明確な原因が存在しないことを証明する必要があります。
もし解剖を行い、たとえば突然死を引き起こしうる心臓病などが見つかった場合などには乳幼児突然死症候群とは診断されません。
治療
乳幼児突然死症候群の治療方法はなく、予防のためにとるべき以下のアプローチが推奨されています。
予防
うつぶせ寝をさせない
乳幼児突然死症候群の発生率は、うつぶせ寝をさせていると高まることが知られています。そのため、特に両親の目が離れる状況ではできるだけうつぶせ寝を避け、固めのベッドの上に仰向けになるように赤ちゃんを寝かせるのがよいとされています。
ただし仰向けの状態であっても、柔らかい毛布やキルトなどが顔にかかっている状態で乳幼児突然死症候群の子どもが発見されることがあります。そのため、赤ちゃんの顔を覆うようなものを置かないことも必要です。
母乳育児の推進
母乳栄養児では、乳幼児突然死症候群の発生率が低いという調査研究が報告されています。諸説ある部分ではありますが、厚生労働省では乳幼児突然死症候群の予防のために母乳栄養も推進しています。
家族の禁煙
両親を含む家族が喫煙をしていると、乳幼児突然死症候群の発生率が高いことが知られています。
喫煙そのものは、赤ちゃんの気道だけではなく呼吸をつかさどる脳にも悪影響が及ぶ可能性があります。そのため、両親を含めた赤ちゃんの同居人が禁煙をすることが推奨されています。
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