ぶんべんまひ

分娩麻痺

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

分娩麻痺は出産した新生児に用いられる疾患の名前であり、「出産時に発生したと考えられる神経損傷」のことを指します。分娩時に、産道を通ってくる際の物理的圧迫や、娩出時の牽引、手術により発生する新生児に起きた損傷を分娩損傷と呼び、分娩麻痺はこの一種です。発生頻度については明確な研究報告があまりないのですが、0.04〜0.3パーセント程度といわれています。

分娩麻痺の種類として代表的なものとして、腕神経叢麻痺(腕や手の神経損傷で、腕が上がりにくくなったり、手が動かしにくくなったりするもの)、顔面神経麻痺(顔の筋肉を動かすような動作に支障が出る)、横隔神経麻痺、Horner症候群などが挙げられます。分娩麻痺のリスクとして、巨大児(4,000gを超えるような大きい赤ちゃん)、骨盤位分娩(逆子の状態での経腟分娩)、児頭骨盤不均衡、遷延分娩(通常より長時間かかってしまう分娩)、鉗子・吸引分娩、早産による未熟性などが挙げられます。

原因

分娩麻痺の原因は、体の筋肉を動かすいずれかの神経を損傷することです。代表的な神経は、腕神経叢、顔面神経、頸髄の神経根という部分です。これが分娩時や、娩出時に赤ちゃんの体を引っ張る際などに損傷することで起こります。

もっとも多くの原因となる腕神経叢は、腕にいく神経の束で、脊髄(背骨の中を通って脳とつながっている神経)とつながっています。この腕神経叢が損傷して完全に麻痺した場合、腕はまったく動かなくなり、部分的に麻痺した場合には腕の一部の動きが障害されてしまいます。

分娩麻痺のリスクとして「巨大児」がありますが、これは赤ちゃんの体格が大きいために物理的圧迫を受けやすいこと、娩出時の牽引を通常より強い力で行う必要があること、また鉗子・吸引分娩が必要となる可能性が高くなることなどが要因となり、分娩麻痺の発生確率を上げてしまうと考えられています。

症状

損傷された神経の部位によって症状が異なります。もっとも多くみられる腕神経叢麻痺では、上腕型(Erb麻痺)と前腕型(Klumpke麻痺)があり、前者では腕を上げる動作が難しくなり、後者では手や指の運動障害や把握反射の消失などが起こります。

その他、顔面神経麻痺は顔面の筋肉に関係する神経の損傷によって発生するため、表情を変えたり口を開閉したりするなどの運動に支障が出る可能性があります。一般的に腕神経叢麻痺以外の分娩麻痺は一過性、つまり短期間かつ一時的なものが多く、経過をみている間に徐々に改善します。

検査・診断

診断は、新生児の身体診察で行われます。つまり、呼吸状態や手足の動かし方などを注意深く観察することで、どこか異常な動き方がないか、動かしにくい部位がないかを探します。診察は小児科や整形外科の医師が担当することが一般的です。

治療

神経損傷の重症度は、神経にかかる力(圧迫や牽引)の大きさに影響されます。軽症では一時的に麻痺する程度ですが、重症では神経が傷つくこともあり、手術が必要になります。全体でみると軽症のほうが圧倒的に多く、軽傷の場合には1週間以内に自然回復するので大きな問題はありません。一方、重症例はまれですが、麻痺が自然回復せず腕の運動機能に障害を残すため、生涯にわたって影響を及ぼすことになります。

治療には手術療法と、リハビリテーションを中心とした非手術療法があり、軽症では経過観察もしくは非手術療法のみで済むことがほとんどですが、非軽症ではどちらの治療も必要となる場合が多いです。

リハビリテーションや手術は専門の整形外科医が行うため、担当の産科や小児科の病院から紹介されることが一般的です。詳しい治療内容については個々の症状や年齢にもよりますので、専門の整形外科でご確認ください。

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