ぜんじゅうじじんたいだんれつ

前十字靱帯断裂

最終更新日:
2020年10月06日
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2020/10/06
更新しました
2020/03/12
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概要

前十字靱帯断裂とは、膝関節の安定性を維持する前十字靱帯が断裂する(切れる)外傷のことです。膝前十字靱帯断裂と呼ばれることもあります。

前十字靱帯は、膝関節部分で大腿骨(だいたいこつ)(太ももの骨)の外側と脛骨(けいこつ)(すね)の骨)の内側をクロスするように結ぶ靱帯です。膝関節を安定させるはたらきを担いますが、特にジャンプやダッシュ、ストップなど膝関節に過度な負担がかかる動作において、脛骨が前方へずれたり捻じれたりしないように支えるはたらきがあります。

このため、前十字靱帯はスポーツなどを行うと強い負担がかかります。特にラグビーなどのコンタクトスポーツ、ジャンプやダッシュなど動作の多いバスケットボールやバレーボールなどで膝関節に過度な負荷(膝外反、回旋)が加わると前十字靱帯が支えきれずに断裂することがあるのです。

前十字靱帯断裂が生じると、膝の安定性が低下するため歩行などの日常動作に支障をきたすほか、運動のパフォーマンスが低下し膝関節軟骨や半月板が損傷することがあり、スポーツ選手では選手生命を左右する結果となることも少なくありません。

原因

前十字靱帯断裂はスポーツ中に起こりやすい外傷のひとつです。

前十字靱帯は大腿骨と脛骨を結ぶ靱帯であり、膝関節の安定性の維持に寄与しています。非常に強い靱帯であるため、通常断裂することはありません。しかし、ジャンプ後の着地、ダッシュ後の急なストップや方向転換、後ろや横からのタックル、スキーやスノーボードでの転倒などによって膝関節に瞬間的に強い負荷が加わると、前十字靱帯が過度に引き伸ばされて断裂することがあります。

症状

前十字靱帯断裂の症状は受傷直後と受傷後3週間以降によって現れ方が異なります。それぞれの時期で特徴的な症状は次の通りです。

受傷直後

前十字靱帯断裂が生じた瞬間は強い痛みとともに膝が外れたり、崩れ落ちたりといった感覚が生じるとされています。また、靱帯が切れる音が聞こえるケースも少なくありません。しかし、受傷すると即座に歩行が不可能になるわけではなく、支えなく歩行できるケースもあります。ところが、膝関節の半月板や軟骨、ほかの靱帯にもダメージが加わっていると受傷直後から歩行困難な場合もあります。

そして、受傷後数時間~数日が経過すると膝関節内には少しずつ血が溜まっていき、関節全体が大きく腫れて強い痛みを伴うようになります。

受傷後3週間頃以降

受傷直後の膝関節の痛みや腫れは3週間ほど経過すると自然に改善していきます。問題なく歩行できるケースが多いですが、膝をひねったときや足をついたときなどに膝が外れる、膝が抜けるといった違和感のある状態は続いていき、スポーツに支障をきたすようになります。

また、前十字靱帯が断裂したままの状態が続くと膝関節の半月板や軟骨などに過度な負担がかかり、若年者であっても変形性膝関節症に移行するケースがあります。

検査・診断

前十字靱帯断裂が疑われる症状がある場合、次のような検査を行って診断を確定していきます。

X線検査

前十字靱帯断裂に限らず、外傷の多くは骨折の可能性を否定するためにも最初にX線検査を行うのが一般的です。X線では靱帯を描出することはできませんが、この外傷は膝関節がずれたりすることもあるためチェックが必要です。

CT、MRI検査

膝関節内の状態を詳しく調べるにはCTやMRI検査が行われます。特にMRI検査は前十字靱帯を描出することが可能であるため確定診断を下すことが可能となります。また、ほかの靱帯や軟骨・半月板の状態を確認することも可能です。

関節鏡検査

膝関節内に内視鏡を挿入して関節内部の状態を詳しく調べる検査です。直接前十字靱帯を観察できるので非常に優れた検査ですが、検査を行うには内視鏡を挿入するために皮膚(ひふ)の一部を切開したり、感染症のリスクも高まったりするため全てのケースで行うわけではありません。主に手術をする場合に最初の段階で行われています。

治療

前十字靱帯断裂を根本的に改善するには手術を行う必要があります。手術は関節内に内視鏡を挿入して行うのが一般的であり、体への負担は比較的少ないといえます。しかし、単に断裂した腱をつなぎ合わせても癒合しにくいため、現在ではほかの部位から採取した自身の腱を移植する自家腱移植を行う方法が主流です。

一方、アスリートやスポーツを生涯の趣味として楽しむケース以外では手術をせずにブレースで固定したり、装具を装着したりする保存的な治療を選択することもあります。

また、いずれの場合でも筋力の低下や関節の固縮が生じないよう、できるだけ早い段階からリハビリを開始することが大切です。

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