概要
前眼部形成異常とは、目の前方に位置する角膜や虹彩、隅角といった構造物が、胎児期にうまく形成されないことによって生じる生まれつきの病気です。新生児や乳幼児のときに角膜に白い濁り(角膜混濁)をきたすため視力障害や視力の発達に影響を及ぼすことが多く、指定難病になっています。目以外の箇所に症状が現れることもあります。
前眼部形成異常の代表的なものには、角膜と虹彩がくっつくRieger異常、角膜の後ろ側に異常があって中心部が白く濁るPeters異常、角膜が白目の組織(強膜)で覆われる強膜化角膜、角膜が全体的に薄くなって前に突き出る角膜ぶどう腫などがあります。
前眼部形成異常の治療は、角膜混濁や視力障害の重症度などに応じてロービジョンケア*を行います。白内障、緑内障、弱視といった目の合併症がある場合には、それらの病気の治療を併せて行う必要があります。
*ロービジョンケア:視覚に障害をもつ人のためのさまざまな支援の総称。
原因
胎児期の前眼部(角膜や虹彩、隅角などがある部分)の形成において、何らかの異常をきたすことで生じます。遺伝子異常が関与していると考えられるケースもあるものの発症要因が不明な事例も多く、形成異常が起こる原因は明らかになっていません。
症状
症状やその進行には個人差があります。新生児や乳幼児のときに目に症状が現れるだけでなく、全身症状が出る場合もあるので注意が必要です。
目の症状
角膜に濁りがあるため、まぶしく感じたり、光が遮断されたりします。これらにより、視力の発達の遅れ、視力障害などを引き起こす事例が多くみられます。そのほか、角膜の一部または全体が不透明になる(強膜化角膜)、角膜の中間層が一部欠損する(後部円錐角膜)といった所見が認められることもあります。
前眼部形成異常の種類によっては角膜混濁が軽快するといわれていますが、強膜化角膜などでは改善することはほとんどありません。また、白内障によるまぶしさや視力低下、緑内障による視野異常、弱視を伴うこともあります。
全身症状
前眼部形成異常のある方の20~30%ほどに、全身の合併症がみられることが明らかになっています。代表的な合併症として、心血管の異常や発達の遅れなどが挙げられます。
検査・診断
前眼部形成異常が疑われる場合、眼科を受診して検査を受けることが大切です。まずは細隙灯顕微鏡検査で前眼部を観察しますが、角膜の混濁が強い場合にはOCT(光干渉断層計)検査や超音波検査などで目の状態を詳しく確認します。
治療
角膜混濁や視力障害の重症度などに応じて、ロービジョンケアを行います。具体的には、音声機能や視覚補助器具などを用いて、視力を補いながら日常生活を送れるようにサポートします。場合によっては、屈折矯正や弱視治療を行うことも検討されます。
白内障や緑内障などの目の病気を合併した際には、薬物療法を行います。薬物療法で視機能の維持が難しい場合には、必要に応じて手術を実施することもあります。
重度の前眼部形成異常では角膜移植が検討されることもありますが、拒絶反応が生じたり、術後経過が芳しくなかったりすることも多いので、実施については慎重に判断する必要があります。
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