概要
反社会性パーソナリティ障害とは、法律や規則を無視した無責任な行動を繰り返すパーソナリティ障害(一般的な常識の範囲から逸脱した行動や考えをすることで自身や周囲に人にさまざまな困難を与える精神疾患)の1つです。反社会性パーソナリティ障害は、他者の権利を無視して自身の利益や快楽を追及し、良心の呵責なく違法な行為に及ぶのが特徴とされています。
発症には遺伝や小児期の虐待などの生育環境が関与していると考えられています。また、注意欠如・多動症(ADHD)や境界性パーソナリティ障害など、ほかのタイプのパーソナリティ障害、薬物依存症などを併発することが多いのも特徴の1つです。
治療はカウンセリングを中心とした精神療法が主体となりますが、気分の変調など精神的な症状がみられるときは薬物療法が行われることもあります。治療は長期間に及ぶことが多く、治療目標を明確に設定することが大切です。一方で、この病気は年齢を重ねるごとに問題となる行動が目立たなくなっていく傾向もあります。
原因
反社会性パーソナリティ障害による衝動的な行動は、脳の興奮を抑制する機能が低下していることが原因の1つであると考えられており、その原因は遺伝と虐待やネグレクトといった生育環境の乱れとされています。
また、小児期に非行行為を伴う注意欠如・多動症(ADHD)を発症すると、大人になって反社会性パーソナリティ障害となるリスクが高くなるとの報告もあります。
症状
反社会性パーソナリティ障害は、他者の気持ちや権利を無視して自己の利益や快楽を追い求めてしまうのが特徴の病気です。
良心の呵責なく利益や快楽を求めるため、暴力、窃盗、詐欺などの犯罪行為を繰り返すようになります。行動は衝動的で計画性がなく、突然の転職やローンの未払いなど社会生活に支障をきたす行為がみられることも少なくありません。
また、反社会性パーソナリティ障害の患者は自己評価が高く、独断的で傲慢な性格であることが多いとされています。人を欺くために周囲に感じよく振る舞うこともあり、患者と深く付き合う家族や同僚などは患者の身勝手な行動に振り回されることにより、心身ともに疲弊していき、日常生活が困難になることもあります。
検査・診断
反社会性パーソナリティ障害は、これまでの患者の行動、犯罪歴、思考などを総合的に判断して診断されます。また、この病気は18歳以上の人のみが診断され、規則を守れないなどの問題行動が子どもの頃からみられたことも診断基準の1つとなっています。
一方で、反社会性パーソナリティ障害は注意欠如・多動症(ADHD)やほかのタイプのパーソナリティ障害を併発することがあります。そのため、ほかの病気との鑑別のために知能検査や心理検査などが必要になることも少なくありません。
治療
反社会性パーソナリティ障害を治すことができると明確に立証された方法は残念ながらありません。
基本的には、治療目標を定め、そこに向けて医師や臨床心理士などの治療者と患者が協力しながらカウンセリングを中心とした精神療法を行っていきます。その治療は長期間に及ぶことが多いのですが、同時に犯罪行為などに至る衝動性を抑えるなど短期的な目標を設定し、行動変容を目指すことも重要です。また、薬物依存やほかの精神疾患を伴うことが多いため、それらの治療も並行して行っていく必要があります。
なお、精神的な不安定さなどがみられる場合は気分安定薬や抗精神病薬などを用いた薬物治療が行われることもあります。
予防
反社会性パーソナリティ障害は遺伝と生育環境が発症の要因とされています。
そのため、発症を予防するには、虐待やネグレクト、一貫性のないしつけや育児方針など反社会性パーソナリティ障害の原因となり得る生育環境を避けることが大切です。特に、規則が守れない子どもがこのような環境にあると、反社会性パーソナリティ障害を発症しやすくなるとされています。
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