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ADHD

目次

ADHDとは

注意欠陥多動性障害(ADHD; Attention deficit hyperactivity disorder)とは、不注意(集中力のなさ)、多動性(落ち着きのなさ)、衝動性(順番待ちができないなど)の3つの要素を中心とした発達障害のことを指します。ADHDは7歳までの年齢で発症し、幼稚園や学校生活の様々な場面を通して、こうした3つの要素から来る行動が確認されます。ADHDに関連した症状は短期間で消失するものではなく、学業や友人関係の構築に困難を覚えることが多くあります。

ADHDは小児期に発症する疾患ですが、学童期や成人になって症状が持続することが多いです。ADHDの頻度は決して稀なものではなく、高学年以降における障害有病率は10%近くに昇るとの報告もあり、また男児の方が女児よりも多い傾向があります。

なお、ADHDと自閉症スペクトラム(自閉症やアスペルガー症候群などを含む概念)は混同されることが多くありますが、自閉症スペクトラムではコミュニケーションや対人行動の異常が中心となり、両者は異なるものです。

原因

ADHDの原因については、明らかなものはこれまでのところ知られていません。関係性が疑われるのは、何かしらの遺伝的な要素、妊娠期間中におけるタバコやアルコールへの暴露、ある種の化学物質、分娩前後で生じた脳への障害などです。

脳の機能が正常に働くためには、様々な物質が脳内で適切に働く必要があります。ADHDにおいてはこれら物質の中でも、ドパミンやノルアドレナリンと呼ばれる物質の機能が低下していることが報告されています。ドパミンが正常に働くためには、DRD5と呼ばれるタンパク質と相互作用をすることが大切であることも知られています。DRD5の遺伝子に関連して、ADHDが発症しやすくなるという報告もありますが、正確にどのような経路からADHD発症がもたらされるのか、細かい部分は未知のままです。

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症状

ADHDの症状として、不注意、衝動的な行動、多動症状の三つが主要症状として挙げることができます。

不注意

 不注意とは、与えられた課題に対して集中力が持続せずに、継続性をもって一つの物事に取り組むことができないことです。端から見ると、すぐに物事を投げ出すように見えますが、決して本人の理解力が乏しいからではなく、また反抗心からやっていることではありません。

衝動的な行動

 ADHDの人は、どのようなことが生じうるかあまり深く考えずにすぐに行動に移す傾向がありますが、このことを衝動性と呼びます。危険を顧みずに気になるものが目に入ると、突然道路に飛び出すこともありますし、相手が抱きうる感情を考えずにパッと思いついた言葉を発してしまい他人を傷付けることもります。

多動性

じっとしていることが出来ずに、絶えず動いている状態のことを多動性と呼びます。学校の授業を椅子に座って聞き続けることが困難であったり、貧乏揺すりを繰り返すこともあります。病院の診察中に、別の理由で受診した際に、じっと椅子に座っていることができずに、ADHDであることが疑われることもあります。

ADHDの症状を考える場合、周囲がそれを問題とするか否か、また問題としない場合は「努力をすれば克服できる」と考えるのか「その人の個性だから問題ない」と考えるのかによって、ADHDに対する認識は異なってきます。認識の仕方を変えることで、ADHDの特性からくる症状は、肯定的に捉えることも出来ます。

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検査・診断

画像や脳波などの検査機器を用いた、いわゆる客観的指標による診断も試みられてはいます。しかしここ何十年間、ADHDだけでなくさまざまな精神科分野で、こうした診断の進歩は少しずつにとどまっています。そのため、ADHDの診断については、症状に関しての詳細な評価が必要不可欠です。

治療

ADHDの治療に際しては、薬物療法とそれ以外の治療方法が適切に組み合わされて行われます。

薬物治療

薬物療法においては、基本的に学童期以降に適応され、幼児期では原則的に薬物療法は行いません。学童期以降においても、症状が著しく現れ、かつ環境整備による支援・治療を行ってもなお症状が残った場合のみ薬物の投与が行われることがあります。

ADHDで使用されることのある薬物は、平成29年11月現在でメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンの三剤があります。ADHDが脳内のシグナル伝達機能の異常であること原因であると考えられているため、こうした異常を是正するためにこれら薬剤が使用されています。

グアンファシンは平成29年に日本において使用可能となったばかりであり、処方日数の制限もあることもあり第一選択としては現時点では選択されにくいです。しかし、その他の薬剤の使用に際して、個人によって効く効かない、事情によって使用することができないなどもありますので、選択肢が一つ増えたと言う意味では大きなメリットと言えます。

薬物治療について詳しくはこちら

薬剤以外の治療

ADHDでは、薬剤以外の治療介入を行うことも重要です。ADHDに限らず発達障害のある方全般に対する支援の軸は、彼らが生活しやすい社会を作る点にあります。ADHDの方を支援していくために、まずは本人も周囲も特性を受け入れ、特性との上手なつき合い方を考えることが最も重要です。

例えば学校の課題等にどのように取り組んでいるかを観察し、時には報酬を与えながらこうした方がいいとか、これはよくなかったなどのフィードバックをしつつ、取り組み方を教えてきます。その他、順番の待ち方やおもちゃの共用のしかたなどを教えることもあります。

ADHDを抱える人は、周囲から孤立する、認められないと言ったネガティブな感情を持っていることも多いため、周囲の人の状況も含めつつ、そういった感情をなくさせるようにするための教育的な治療介入が必要になることもあります。ADHDの人のみならず、周囲の人もADHDに対しての理解を深めることで自尊心を保つことが可能になり、双方においてストレスを溜め込まずにポジティブな関係性を構築することができるようになります。

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診断

ADHDを診断するに際しては、症状の項目で述べた3つの主要症状(不注意、衝動性、多動性)を確認することが大切であり、DSM-5と呼ばれる診断基準などをもとに診断を行います。診断項目に含まれている内容として「不注意」を例にとると、「人の話を聞けない」「与えられた課題に集中できない」「宿題や仕事に際してケアレスミスが多い」などの具体的なものが含まれています。一つに当てはまるのみではなく、診断に際しては複数の項目が半年以上に渡って該当する必要があります。

さらに症状は12歳以前から認めていることが必要であり、一人の情報からではなく複数人からの情報聴取が求められます(学校でもそうなのか、家でもそうなのかなど)。行動観察や過去の話をしっかり聞いて、紐解いていく必要があります。子どもの頃からそのような性質が見られたかどうかの確認もしていきます。ここでは、心理テストなどを用いながら診断していきます。

子どもの場合

ADHDは小児期に診断された後に、成人になっても継続する病気です。診断に際してDSM-5に合わせて見た際、不注意、多動性、衝動性についての症状を確認することは年齢によって異なりませんが、診断に求められる項目数が異なります。すなわち、不注意を例にとると、16歳までのお子さんであれば6項目の該当が必要です。17歳以上では一つ項目が少ない5項目あてはまることが診断基準として記載されています。

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病院の選び方

ADHDが疑われた際、正確な診断を受け治療介入につなげることが重要です。その際には病院の選び方にも注意が必要です。子どもの場合、ADHDの診療は小児科や精神科で行うことができますが、中でも児童精神の治療に長けた医師の診療を受けることが重要です。児童精神科を掲げた病院はそれほど多い訳ではなく、実際の診療に当たる経験が多い医師が必ずしも多いとは言えません。

一つの判断材料となるのは、先に治療の項目で挙げた「メチルフェニデート(商品名でコンサータ)」を処方できる医師がいるかどうかです。コンサータの処方に際しては、一定の基準を満たした医師が行う必要があるため、コンサータ処方の登録医がいる病院が、ADHDの患者さんをたくさん診ている病院であると考えられます。

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アスペルガー症候群や自閉症との違い

アスペルガー症候群や自閉症では類似した特徴を共有することから、「自閉症スペクトラム」として一つの疾患概念として捉えられることがあります。ADHDが、不注意・多動性・衝動性で特徴付けられる一方、自閉症スペクトラムは社会性発達の質的障害・コミュニケーションの質的障害・興味や活動の偏りで特徴付けられます。

診断基準上は分類される両者ですが、実際の症状を見ると似通って見える部分も多く判断に難渋することもあります。いずれの場合も社会生活に困難を覚えることになります。

具体例を挙げると、両者ともコミュニケーションに問題をきたします。ADHDの場合、衝動的に相手の話を遮ってしまい話を最後まで聞けません。また衝動的に唐突に失礼な言葉を発したとしても、それが相手を傷つけてしまったと言うことは理解することができます。一方の自閉症スペクトラムでもコミュニケーションの問題を抱えることがありますが、この場合は相手の言葉そのものを理解できていないことに起因する部分があります。ADHDとは異なり、言葉の意味・文脈・身振り手振りなどのニュアンスを理解できません。

両者には類似点も多く、ADHDと自閉症スペクトラムを同時に抱えることもあります。実際の判断には難しく専門的な判断が必要となることもあるため、診療に慣れた医療機関を受診することが必要と言えます。

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