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インタビュー

ADHDの原因―遺伝は関係する?

ADHDの原因―遺伝は関係する?
稲垣 真澄 先生

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 元知的障害研究部長

稲垣 真澄 先生

ADHDは、多動性・衝動性・不注意の症状を持つ発達障害です。その原因は脳の機能発達が偏っていることによるといわれていますが、発症の要因として遺伝や環境が関係しているのではないかともいわれています。また、近年、ADHDの方は脳のネットワーク機能が障害されているのではないかという、新たな学説が出てきました。ADHDの原因について、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部 部長の稲垣 真澄先生にお話をうかがいます。

脳の伝達物質イメージ

ADHDは、脳の機能異常により、脳内の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)に偏りが生じていることが原因で起きるといわれています。そのため、現在ADHDの治療薬(コンサータ®、ストラテラ®、最近発売されたインチュニブ®など)は、これらの神経伝達物質の働きを調整して作用するようにつくられています。

 

ADHDの治療薬についてはこちら

ADHDは、長らく前述のような神経伝達物質の偏りがその原因と考えられてきました。しかし近年では新たな説として、脳のあらゆる部位が同調してネットワークをつくる「脳のネットワークの機能」が障害されてADHDを発症するのではないかといわれています。

ネットワークには3つが想定されています。

  1. 外的な課題に対して積極的に対処するネットワーク
  2. 外からの刺激がない状態でも常時はたらくネットワーク
  3. 両者のスイッチ(切りわけ)を行うネットワーク

1のネットワーク機能が低下すると、課題への集中力低下が生じます。2のネットワークはデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれており、DMN機能が過剰に活性化すると抑制不可能、つまり目新しいと感じた刺激に対してすぐに反応してしまう、といわれています。そして、3の切りわけネットワークのはたらきにより、通常は外部から刺激があっても脳機能が巧みに調整されて、刺激への反応を制御する力が脳のなかではたらいて衝動性や多動性を抑えていると考えられます。ただしこの分野の研究は日々進歩していますから、今後ADHDという病気の考え方が変わることも十分にありえます。

遺伝子

ADHDとの遺伝には何かしらの関係があるのではないかといわれています。実際に、ADHDの発症に関与する遺伝子はいくつか発見されていますが、いまだに遺伝的要因を確定する決定打はありません。

実際に、ADHDのお子さんの保護者の方に話を聞くと、自分の小さいころに行動が似ている、母親が忘れっぽいところがあるなど、保護者の方もADHDの傾向を持っている・かつて持っていたということがめずらしくありません。本人のほかに兄弟もADHDや、学習障害自閉症などの他の発達障害であったケースもあります。

 

ADHDと遺伝についてはこちら

ADHDは環境的な要因も大きいといわれます。環境因子では、感染症などの妊娠時や出産時のトラブルに起因するのではないか、という報告があります。そのほかにも、生育環境(経済状況や虐待の有無など)や合併症の有無などが、環境因子として考えられています。         

親子

先ほども述べたように、ADHDと遺伝は何かしら関係があると考えられています。しかしながら、親がADHDであるからといってその子どもも必ずADHDになるかというとそうではありません。ADHDは、ひとつの要因で発症するのではなく、さまざまな要因が組み合わさり発症するものだからです。

なかには、ADHDの傾向があり症状が悪化しても、悪化の要因を特定し排除するとADHDの傾向が消失したというケースもあります。要因を特定するためにも、発達障害を専門とする医師など専門家に相談することが重要でしょう。

もしご自身がADHDの傾向がある、あるいはADHDと診断されて、将来、子どもに遺伝しないか、うまく子どもを育てられるのか心配であれば、一人で悩まずに周囲に相談やサポートをお願いすることが大切です。

仮にお子さんにもADHDの傾向がみられた場合は早期に受診し、ADHDと診断されたら適正な治療・支援を受けましょう。早期から周囲の大人が支援をすれば、子どもの自尊心を傷つけることなく、ADHDの特徴をカバーし、むしろ豊かな個性を伸ばしながら生活することが可能です。

また、ADHDなど発達障害をもつ子どもの支援には、保護者の方の協力が不可欠です。保護者の方に求められる能力や行動(養育レジリエンス)にはさまざまなものがありますが、今までその保護者の方が具体的に養育において何ができていて、何ができていないかを客観的に測る指標がありませんでした。そこで国立精神・神経医療研究センターでは「養育レジリエンス評価尺度」という新たな指標を作成し、支援を受けた保護者、特にお母さん方の、発達障害児への対応力の伸びを測れるようにしました。

養育レジリエンスを保護者の方が身につけると、保護者の方の抑うつやストレスが軽くなるといわれています。また、保護者の方と子どもの関係の悪化を解決するかもしれないと期待されています。養育レジリエンスについて、詳しくは、こちらをご覧ください。

 

  • 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 元知的障害研究部長

    日本小児科学会 小児科専門医日本小児神経学会 小児神経専門医日本てんかん学会 てんかん専門医指導医・てんかん専門医日本臨床神経生理学会 専門医(脳波分野)

    稲垣 真澄 先生

    知的障害、ADHD、自閉スペクトラム症など発達障害医学の専門家。特に読み書き障害、ADHDの診断治療などを専門としており、センター病院の外来診療にも従事している。保護者の養育レジリエンス指標の開発やチック、吃音など顕在化しにくい発達障害のスクリーニング法開発研究でも活躍。関連の研究業績も多数あり、厚生労働省、文部科学省など多くの研究班の主任研究者を務める。研究者の育成にも定評があり、多数の若手が集まる。

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