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大人の発達障害の支援―就労支援機関、就労に必要なスキルについて
大人の発達障害において一番の課題は、就職・仕事です。どのような仕事が向いているかは人それぞれ異なるため、なるべく得意な能力が生きるように、かつ苦手なことが目立たないような仕事に就けるように支援を...
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大人の発達障害の支援―就労支援機関、就労に必要なスキルについて

公開日 2015 年 07 月 07 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

大人の発達障害の支援―就労支援機関、就労に必要なスキルについて
本田 秀夫 先生

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 教授

本田 秀夫 先生

大人の発達障害において一番の課題は、就職・仕事です。どのような仕事が向いているかは人それぞれ異なるため、なるべく得意な能力が生きるように、かつ苦手なことが目立たないような仕事に就けるように支援をしていきます。仕事に不向きな例としては、ADHDの人が精密機械の工場で勤務することは難しい(うっかりミスが多い)、自閉症スペクトラムの人には営業は厳しい、などがあります。

本田秀夫先生のご経験では、自閉症スペクトラムの方が電機メーカーのオペレーターに就職後、5年でチーフに取り立てられるなど異例の出世を果たした例もあります。仕事自体が得意領域であったことに加え、その人は思ったところをズケズケ言う性格でした。それが積極的な発言と周囲から捉えられ、好意的に受け止めてもらえたことがプラスになったのです。

大人の発達障害の人たちに必要な支援には、以下のように2つの軸があります。

この記事では、こうした就労支援について本田先生にご説明いただきます。

発達障害の支援―学校と会社は全く異なっている

学校では成績優秀で活躍していた人が、社会に出て環境が変わると急にトラブルに見舞われることがあります。これは、学校と会社が全く異なる環境であるためです。

学生は、学校にとっては「お客さん」という面があります。配慮をしなければいけない学生に対して配慮をしていくことそれ自体が、学校にとっての仕事でもあります。しかし、会社に入ったら職員は当然「お客さん」ではなくなります。発達障害の人に特別な配慮をしたからといって、それが収益になるかどうかは分かりません。そのため、支援への考え方も大きく異なってきます。

もちろん、発達障害の方は環境が合えばものすごい力を発揮することがあるので、そうなれば会社にとっても大きなメリットになりますし、収益につながることもあります。いずれにせよ、学校と比べたときの会社の何よりの違いは「経済的なメリット」を必然的に考えていかねばならない点にあります。

発達障害と就労支援

きちんと職場で理解が得られており、十分な力を発揮できている場合には、就労支援は必要ありません。しかしそうではない場合も多く、職場でトラブルが続いてしまっている場合には「発達障害者支援センター」などの相談支援機関を利用していくことも検討すべきです。

その後は就労支援機関を選択していくことになります。就労支援機関とは、ハローワークや障害者職業センターのことを指し、以下のようなものがあります。なお、就労支援機関は障害者手帳を持っていなくても利用することが可能です。

  • ハローワーク

職業相談や紹介から就労の準備、職場定着までを支援します。

  • 障害者職業センター

職業能力評価、職業準備や職場に適応するための定着支援などを受けられます。

  • 障害者就業・生活支援センター

福祉や教育との連携とそれを通した生活面における支援、就業現場での支援専門家(ジョブコーチ)による就業場所内での訓練、職場とのコーディネートや職場環境を整備するための支援を受けることができます。

また、「トライアル雇用(障害者試用雇用事業)制度」というものがあります。これは、支援を受ける側にとっては貴重な就労体験になります。企業側にとっては職場への受け入れのための準備になります。この制度においては、奨励金の支給があるのもポイントです。加えて、雇用する際には発達障害者雇用開発助成金も用意されており、企業側にもメリットを提供しています。

さらに、障害者雇用促進法における雇用率に算定することのできる障害者枠があります。ここにおける雇用は、障害者手帳の所持者が対象となります。この枠を利用して就業を目指していく場合には、障害者手帳取得の準備も必要となります。

ここまで述べてきたように、さまざまな支援制度が整備されつつあります。しかし、二次的な問題や併存障害がある場合には、カウンセリングや薬物療法を用いるときもあります。これらが必要な状況においては、精神科への受診を検討すべきです(「発達障害への精神科治療―カウンセリングと薬物療法」参照)。

就労支援におけるポイントは一気に就業を目指しすぎないことです。無理をすることが挫折につながります。基本的な考え方としては、在宅→集団参加→職業訓練→就業の4段階を、ひとつひとつステップアップ(ときにはステップダウン)を検討しながら就業を目指していきます。

発達障害―就労に必要な自律スキルとソーシャル・スキル

発達障害の方が社会人として生活していくために必要なスキルは、大きく2つに分けることができます。それは「自律スキル」と「ソーシャル・スキル」です。「自分でやれること、やれないことを判断する力」が自律スキル、「相談する力」がソーシャル・スキルと考えることができます。社会人になったあと問題なく過ごしていくためには、この2点が重要となります。

  • 自律スキル

自律スキルにおいては、「自分のことをある程度わかっている」ということが重要です。もちろん、苦手なことも含めたすべての面で客観的に自分をわかるというのは非常に難しいことですが、どこまでやれるのかを判断し、「これ以上はやれない」という線引きをする能力が大切です。

  • ソーシャル・スキル

そこで、他者から指摘や助言を受けたときに、その言葉に耳を傾ける姿勢があるかどうかで、その後の経過が大きく異なってきます。成人期の発達障害の方々への支援では、まずは他者に相談しながら自分のできることを見出していくことから開始します。この場合、必ずしも協調性という段階までいかなくてもやっていけます。「抱え込みすぎずに、きちんと相談していくことができる」能力が大切です。

発達障害の方の場合、自律スキルとソーシャル・スキルがどのレベルにあるのかを評価していきます。IQが高くて能力が非常に高い方でも、この2つのスキルが欠けていると、できないことでも「やれます」と請け負ってしまって、あとで大変なことになるケースがあります。ただし、今の日本社会ではこの自律スキルとソーシャル・スキルが十分には教えられていません。相談するとかえって叱られるなど、相談に対する否定的な態度を取られることがあり、相談意欲がなくなってしまうことがあります。

そこで我々は、子どもの頃からきちんと自律スキルとソーシャル・スキルが得られるような支援を続けてきました。子どもの頃から支援をすると、多くの場合はこれらのスキルを得ることができます(「自閉症スペクトラムの方への支援―子どもの頃からの継続的なサポートが重要」参照)。

 

発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、あらゆるライフステージにわたる臨床経験をもつ発達障害の専門家。知的障害を伴わない自閉症が稀ならず存在することを世界で初めて実証した疫学調査は国際的にも評価を受けている。現在は、大学を拠点として児童青年精神科医の育成と臨床研究体制の整備に取り組んでいる。

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