「自閉症」は、当初、子どもの精神病として捉えられていました。その後、定義が変わり2018年1月現在、自閉症の特徴がある状態のすべては自閉スペクトラム症(ASD)としてまとめられ、アスペルガー症候群も自閉スペクトラム症に包括して扱われることとなりました。
自閉症は、子どもと大人では特徴が違うのでしょうか。また、子どもの年齢によっても特徴に差が生じるのでしょうか。今回は筑波大学副学長・理事、附属学校教育局教育長の宮本信也先生に、自閉症の特徴を中心にお話しいただきます。
自閉症とは、生まれつきの脳機能の特徴を持ち、そのために生活上の支障を来している発達障害の一つです。自閉症の症状の程度や、症状の生じる場面などは人によりさまざまで、幼少時から個々の状態に合わせた適切な支援が必要です。
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自閉症には、大きく3つの特徴があります。
自閉症の方は一言でいうと「マイペース」な人です。
状況に合わせた人とのやりとりが苦手です。周囲に合わせた行動が難しく、いわゆる「空気が読めない」状態に陥ることが多くあります。学校生活など、集団での活動が必要な場面でも、自分のやりたいことを主張するなど自分優先の言動が少なくありません。
基本的には、言葉の使い方の問題です。言外の意味を把握できず、冗談や皮肉、比喩などが伝わりづらいです。あいまいな表現も苦手で、「少し」「適当に」といわれても、それがどの程度のものなのか理解できないことが少なくありません。
知能障害がなくても、言葉の意味が伝わらないことがあります。これは、自分の体験した範囲でしか言葉の理解をしていないからと考えられます。
以下の行動や状態は知能発達の遅れが伴う場合にみられることが多いです。
自閉症の患者さんは物事に対するこだわりが強いです。気に入ったことや気になることを繰り返し話題にするまたは確認する、同じ道順ややり方にこだわるといった、活動と関心の限定がみられます。
そのほか、融通がきかない状況もみられます。一般的には「しつこい」といわれる状態です。
自閉症は、その人の顔つきで特徴がわかることはありません。自閉症の長い歴史のなかで、顔貌(顔つき)との関連を指摘された時代もありましたが、実際にそのような事実は確認されていません。
自閉症とアスペルガー症候群の違いは、言葉の発達の遅れがあるか否かです。
自閉症とアスペルガー症候群は、2018年1月現在は両者とも自閉スペクトラム症に含まれています。
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1980年代ごろまでは、自閉症は知能障害がある場合が多いと考えられていました。そのことから、知能障害がない自閉症を「高機能自閉症」と区別して呼ぶようになりました。
一方、2018年1月現在では自閉スペクトラム症全体において、知能障害がある子どもより知能障害がない子どものほうが多いと考えられるようになってきています。そのために知能障害のない高機能自閉症を区別して呼ぶ必要がなくなり、今では「高機能自閉症」と呼ぶことは少なくなってきています。
幼少時に知的能力が低い自閉症児であっても、年齢を重ねて飛躍的に知的能力が伸びる場合があります。言葉の理解力が発達すれば、知能検査の結果が大きく向上し、知能指数が上昇することもめずらしくありません。私の経験でも、そうしたケースはあります。
幼児期から小学校低学年までに実施した知能検査の結果は、あくまでその時点での状態を示しているにすぎません。ですから、1度の知能検査だけで、自閉症児の知能水準を判断することは好ましくなく、注意する必要があります。
年齢によって自閉症の状態像が異なります。しかし「その年齢の特徴に合致しない=自閉症ではない」ということではないと、留意しておく必要があります。
思春期になると、だんだんと自分が他の人と違うことに気づくことが多くなります。その結果、情緒的に不安定となり、無気力、イライラなどが見られやすくなります。
理解力が高まることで、かつての不適当な友達関係に気づくこともあります。たとえば、当時は仲良く遊んでいたと思っていたのに、本当はからかわれていたことに気がつくのです。
この気づきによって、本人は深く傷つき、怒りや恥辱感が生じますが、過去のことはどうしようもできません。そのために常にイライラしやすくなります。また、周囲に八つ当たりするなど、乱暴になることもあります。
知能障害を伴う場合は、思春期のあいだに一時的にこだわりや独り言、徘徊(うろうろ歩き回る)が強くなることがあります。
大人の自閉症は、幼少時と同様に状況に応じた柔軟な対応が難しいです。
これに付随し、以下の特徴が挙げられます。
大人の場合は、それまでの本人の成長発達の過程における療育や訓練で、さまざまな社会的・知能的スキルをすでに獲得しています。このため、子どもの自閉症に比べてこれらの問題が気づかれにくいことがあります。
大人の自閉症について詳しくはこちら
自閉症について、医療機関を含めた専門機関や相談機関への相談例は増加傾向にあります。[注1]しかし、自閉症を研究する専門家のあいだでは、自閉症の実際の数はそれほど増えていないだろうという見解が多いです。
相談件数の増加には少なくとも2つの背景が考えられると思われます。1つ目は社会全体の自閉症の認知度があがったことなどにより、周囲が気づきやすくなった点、2つ目は、診断基準が整備され、診断されやすくなった点です。
注1:厚生労働省「発達障害者支援センター運営事業における新たな支援のあり方に関する調査」(2017年3月)
関連の医療相談が6件あります
IQ検査の結果
5歳の息子が1歳半検診で指摘され結果、軽度知的障害と診断され、その後自閉スペクトラム症とも診断されました。 療育にも通い、4月から小学生になる事で療育でかかりつけのクリニックでIQの検査を受け結果IQ91でした。 同じ時期に療育手帳更新で、指定された子供センターでIQ検査をした所、IQ79でした。 IQに差がありすぎて混乱しています。 学校や保育園も境界知能か平均かで支援の仕方も変わってくるので、どちらを伝えたら良いのかも分かりません。 このように検査する場所で違った場合はどうすれば良いのでしょうか?
自閉スペクトラム症と自閉症のちがいについて
3歳3ヶ月の娘についてです。 娘ですが、先日発達センターより 『軽度の発達障害で自閉スペクトラム症』と診断されました。 そう診断された主な理由として、 ●言葉の遅れ ●コミュニケーション能力の欠如 の2つが認められるからです。 この自閉スペクトラム症と自閉症というのは別物なのでしょうか。 この診断があった際、私は自閉スペクトラム症という言葉を初めて聞いたのでいまいち理解できずに、先生に『うちの子は自閉症ということなのでしょうか?』と聞いたところ『いえ、自閉症ではありません。』との事でした。 今後、娘が成長するにあたり、自閉スペクトラム症と周りに話す機会があるかと思うので、その辺の違いについてきちんと理解をしたいと思い投稿しました。 (ネットで調べてもいまいち分かりませんでした。私が無知なのもあるかも思うのですが。)
発達障害だと思います。
仕事が長く続きません。仕事が出来ないと思われて、3カ月か半年しか続きません。 発達障害だと思います。
不登校、聴覚過敏
小さい時から、爪かみをし、指の皮膚を噛んで指先がぼろぼろになったりしていました。10歳くらいから、対人関係(大人)で悩むことが多く、学校の先生に対しての対応かしにくく、自分が嫌と思う先生には口も開けないようになったりしていました。嫌なことがあったり、親の私が怒ったりすると自室にこもり、手首をカッターで軽く切るなど自傷行為もありました。この時、小児科から精神科、カウンセラーと話す機会がありましたが、本人は拒否して、親の私だけが通いました。成績はそれなりによく、中学も友達との関係は良好で過ごせました。中学の担任の先生は女性で理解があり優しい穏やかな方だったのでなんとかやり過ごせましたが、公立の高校に入り、生徒会にはいり頑張っていましたが、担任(女性)が嫌過ぎて二学期から学校に行かなくなりました。耳なりや、聴覚過敏を訴えたので耳鼻科に行くと、自閉症ではないかといわれました。 学校での立場は、彼女的には頑張っている自分が当たり前のようにしているので かなり疲れるのだと思います。 目がうつろで暗く落ち込んでいたのですが、学校に無理に行かなくても大丈夫と関わると穏やかに笑顔も見せるようになりました。自閉症スペクトラムかもと考えて様子を見ていくべきでしょうか?
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