インタビュー

自閉症の特徴―こだわりの強さや対人関係・コミュニケーションの困難が生じる

自閉症の特徴―こだわりの強さや対人関係・コミュニケーションの困難が生じる
宮本 信也 先生

筑波大学副学長・理事、附属学校教育局教育長

宮本 信也 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

自閉症」は、当初、子どもの精神病として捉えられていました。その後、定義が変わり2018年1月現在、自閉症の特徴がある状態のすべては自閉スペクトラム症(ASD)としてまとめられ、アスペルガー症候群も自閉スペクトラム症に包括して扱われることとなりました。

自閉症は、子どもと大人では特徴が違うのでしょうか。また、子どもの年齢によっても特徴に差が生じるのでしょうか。今回は筑波大学副学長・理事、附属学校教育局教育長の宮本信也先生に、自閉症の特徴を中心にお話しいただきます。

自閉症とは

コミュニケーションや興味などに偏りが生じる発達障害

自閉症とは、生まれつきの脳機能の特徴を持ち、そのために生活上の支障を来している発達障害の一つです。自閉症の症状の程度や、症状の生じる場面などは人によりさまざまで、幼少時から個々の状態に合わせた適切な支援が必要です。

 

自閉症の原因について詳しくはこちら

自閉症にみられる特徴

一人遊び

自閉症には、大きく3つの特徴があります。

  • 対人関係の問題
  • コミュニケーションの問題
  • 活動と関心の限定

対人関係の問題

自閉症の方は一言でいうと「マイペース」な人です。

状況に合わせた人とのやりとりが苦手です。周囲に合わせた行動が難しく、いわゆる「空気が読めない」状態に陥ることが多くあります。学校生活など、集団での活動が必要な場面でも、自分のやりたいことを主張するなど自分優先の言動が少なくありません。

コミュニケーションの問題

基本的には、言葉の使い方の問題です。言外の意味を把握できず、冗談や皮肉、比喩などが伝わりづらいです。あいまいな表現も苦手で、「少し」「適当に」といわれても、それがどの程度のものなのか理解できないことが少なくありません。

知能障害がなくても、言葉の意味が伝わらないことがあります。これは、自分の体験した範囲でしか言葉の理解をしていないからと考えられます。

以下の行動や状態は知能発達の遅れが伴う場合にみられることが多いです。

  • 言葉の遅れ
  • オウム返し
  • 方向性のある言葉の誤用(欲しいときに「あげる」といいながら欲しがる) など

活動と関心の限定

自閉症の患者さんは物事に対するこだわりが強いです。気に入ったことや気になることを繰り返し話題にするまたは確認する、同じ道順ややり方にこだわるといった、活動と関心の限定がみられます。

そのほか、融通がきかない状況もみられます。一般的には「しつこい」といわれる状態です。

自閉症の特徴的な顔つきはない

自閉症は、その人の顔つきで特徴がわかることはありません。自閉症の長い歴史のなかで、顔貌(顔つき)との関連を指摘された時代もありましたが、実際にそのような事実は確認されていません。

自閉症とアスペルガー症候群の違い

男の子

言葉の発達の遅れの有無

自閉症とアスペルガー症候群の違いは、言葉の発達の遅れがあるか否かです。

自閉症とアスペルガー症候群は、2018年1月現在は両者とも自閉スペクトラム症に含まれています。

 

アスペルガー症候群の症状について詳しくはこちら

自閉症と高機能自閉症—自閉症児の知的能力

現在は知的能力の高低により区別することは少ない

1980年代ごろまでは、自閉症は知能障害がある場合が多いと考えられていました。そのことから、知能障害がない自閉症を「高機能自閉症」と区別して呼ぶようになりました。

一方、2018年1月現在では自閉スペクトラム症全体において、知能障害がある子どもより知能障害がない子どものほうが多いと考えられるようになってきています。そのために知能障害のない高機能自閉症を区別して呼ぶ必要がなくなり、今では「高機能自閉症」と呼ぶことは少なくなってきています。

年齢を重ねて知的能力が大幅に変化することも

幼少時に知的能力が低い自閉症児であっても、年齢を重ねて飛躍的に知的能力が伸びる場合があります。言葉の理解力が発達すれば、知能検査の結果が大きく向上し、知能指数が上昇することもめずらしくありません。私の経験でも、そうしたケースはあります。

幼児期から小学校低学年までに実施した知能検査の結果は、あくまでその時点での状態を示しているにすぎません。ですから、1度の知能検査だけで、自閉症児の知能水準を判断することは好ましくなく、注意する必要があります。

年齢ごとの細かな自閉症の特徴

親と会話

年齢によって自閉症の状態像が異なります。しかし「その年齢の特徴に合致しない=自閉症ではない」ということではないと、留意しておく必要があります。

0歳

  • あやしても笑わない
  • 目が合わない
  • 名前を呼んでも無反応
  • 抱っこしたときに抱きにくい(体を反らすなど)
  • 人見知りをしない

1歳

  • 言葉の遅れ
  • 目が合わない
  • 名前を呼んでも反応しない
  • 指さしをしない、母親が指さした方を見ない
  • 母親を目で追わない、母親の後追いをしない
  • 人見知りをしない

2歳

  • 言葉の遅れ
  • 話しかけられた言葉のオウム返しが多い、会話が成立しにくい
  • 独り言が多い
  • 名前を呼んでも反応しない
  • 指さしをしない、母親が指さした方を見ない
  • 母親を目で追わない、母親の後追いをしない
  • 人見知りをしない

3歳

  • 話しかけられた言葉のオウム返しが多い、会話がかみ合いにくい
  • 相手の話を聞かない、一方的な会話が目立つ、
  • ミニカーを並べるだけなどそのおもちゃに合わせた遊び方をしない
  • ごっこ遊びをしない
  • 他の子どもに関心を示さない
  • 人見知りをしない、初対面の人でも平気
  • 迷子になっても平気
  • 同じ事柄や場所など、「同じ」ということにこだわる

児童期(4〜12歳ごろ)

  • 一人遊びが多い
  • 集団活動に入らず一人で行動している
  • 友達と遊んでいてもいつの間にか一人だけ抜けて好きなことをしている
  • 会話がかみ合いにくい
  • 冗長な会話が多い、自分の好きな話題ばかり話している
  • 言われたことの表面的理解が多い(曖昧な言葉や比喩が通じにくい)
  • 自己主張が強い
  • 関心がある事柄に関して大人顔負けの知識を持っている
  • 被害的な受け止め方が多い
  • 急に予定が変わると不安定なる
  • 状況の変化に応じて行動することができない
  • 思うようにならないと泣き騒ぐ

思春期(13〜18歳ごろ)

  • 会話がかみ合いにくい
  • 冗長な会話が多い、自分の好きな話題ばかり話している
  • 言われたことの表面的理解が多い(曖昧な言葉や比喩が通じにくい)
  • 自己主張が強い
  • 関心がある事柄に関して大人顔負けの知識を持っている
  • 被害的な受け止め方が多い
  • 急に予定が変わると不安定なる
  • 状況の変化に応じて行動することができない
  • 無気力やイライラ、八つ当たりなど

思春期になると、だんだんと自分が他の人と違うことに気づくことが多くなります。その結果、情緒的に不安定となり、無気力、イライラなどが見られやすくなります。

理解力が高まることで、かつての不適当な友達関係に気づくこともあります。たとえば、当時は仲良く遊んでいたと思っていたのに、本当はからかわれていたことに気がつくのです。

この気づきによって、本人は深く傷つき、怒りや恥辱感が生じますが、過去のことはどうしようもできません。そのために常にイライラしやすくなります。また、周囲に八つ当たりするなど、乱暴になることもあります。

(知能障害がある場合)独り言、徘徊、こだわりの一時的な悪化

知能障害を伴う場合は、思春期のあいだに一時的にこだわりや独り言、徘徊(うろうろ歩き回る)が強くなることがあります。

大人の自閉症の特徴

状況に合った柔軟な対応ができない

こだわりの強い、若いアジア人

大人の自閉症は、幼少時と同様に状況に応じた柔軟な対応が難しいです。

これに付随し、以下の特徴が挙げられます。

社会性の問題

  • 仕事に関して自己判断で行動するためにトラブルを起こしやすい
  • 自発的な手伝いをしない
  • 自分の仕事が終了する時間になったら周囲の状況に関係なく帰る
  • 注意や助言に反論する、怒る
  • 何か言われたことに必ず一言返す
  • 自己主張を押し通す など

コミュニケーション行動・想像力の問題

  • 冗談が通じない
  • 相手の態度や表情を読み取れない
  • 相手の顔・名前を覚えられない
  • 的外れの話をする、応答をする
  • 場違いないことを話し始める
  • 仕事の段取りが悪く時間がかかる など

固執性(こだわり)

  • 自分の仕事だけこなす
  • こだわりが強く前のことを何度も言う
  • 関心がある事柄に対する知識の量・質が膨大
  • 不安になると一定の動作の癖が出る(手を叩く、同じ言葉をしゃべり続ける など)
  • どんなときでも、自分の生活習慣を変えない
  • 融通がきかない など

大人の場合は、それまでの本人の成長発達の過程における療育や訓練で、さまざまな社会的・知能的スキルをすでに獲得しています。このため、子どもの自閉症に比べてこれらの問題が気づかれにくいことがあります。

 

大人の自閉症について詳しくはこちら

自閉症についての相談は増加傾向

実際の患者数の絶対数は増えていないとの見解も

自閉症について、医療機関を含めた専門機関や相談機関への相談例は増加傾向にあります。[注1]しかし、自閉症を研究する専門家のあいだでは、自閉症の実際の数はそれほど増えていないだろうという見解が多いです。

相談件数の増加には少なくとも2つの背景が考えられると思われます。1つ目は社会全体の自閉症の認知度があがったことなどにより、周囲が気づきやすくなった点、2つ目は、診断基準が整備され、診断されやすくなった点です。

注1:厚生労働省「発達障害者支援センター運営事業における新たな支援のあり方に関する調査」(2017年3月)