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自閉スペクトラム症乳幼児期から児童期までの特徴とは〜学校生活を送る中でさまざまな“やりにくさ”を感じる〜

自閉スペクトラム症乳幼児期から児童期までの特徴とは〜学校生活を送る中でさまざまな“やりにくさ”を感じる〜
本田 秀夫 先生

信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授

本田 秀夫 先生

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自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)とは、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などを含む発達障害の総称です。ほかには“自閉症スペクトラム障害”と呼ばれることもあります。自閉スペクトラム症の特徴は乳幼児期から現れ始めますが、就学後の環境の変化によってその特徴はさまざまな形に変化して表に出てくるようになります。

そこで本記事では、自閉スペクトラム症の子どもが児童期に示す特徴について詳しく解説します。

自閉スペクトラム症は、対人関係が苦手なこと、コミュニケーションが苦手なこと、強いこだわりを示すことが典型的な特徴として知られています。生まれてから6歳までの乳幼児期にはこれらの特徴が発達のでこぼこ(得手不得手の差が目立つ状態)として現れます。

生後から2歳頃の特徴

生後から2歳頃までは運動の発達に大きな遅れはありませんが、一方でコミュニケーションの面では通常の発達との違いが現れはじめます。特に共同注意(興味をシェアすること)の発達が遅れることが多く、興味をもって他者の視線の方向を見ることや、指さしによって他者と興味を共有しようとすることが少ない、というのがこの時期に気付かれやすい特徴です。

2歳以降の特徴

2歳以降は、他者との関係性をつくるのが難しい、非言語的コミュニケーションが苦手、といった特徴が見られるようになります。この時期には相手の話した言葉をオウム返しにする、一定のパターンの行動に没頭する、順序やものの配置にこだわる、文字や数字など記号的なものに興味を示す、興味のあることに高い記憶力を発揮するなど、より特徴的な行動が見られるようになります。3~4歳頃までには自閉スペクトラム症の特徴がはっきりしてくるので、診断が可能となります。

4~6歳頃の特徴

幼児期後半の4~6歳にかけて、ある程度の対人関係やコミュニケーションが可能となる場合があります。しかし、集団活動や3人以上の対人関係において融通が利かない、自分のやり方が通らないときや思っていた予定と異なる状況が生じたときなどにイライラしたり強いストレスを感じたりするといった状態は持続しますので、表面的には改善したように見えても決して“病気が治った”ということではありません。

自閉スペクトラム症の特徴自体は6歳以降の児童期も大きく変わることはありません。しかし、この年代になると学校へ行くようになり環境が変わることで、今まで表に出ていなかった特徴がさまざまな形で現れたり、集団生活の中で過ごしづらさを感じたりするようになることがあります。

自閉スペクトラム症の児童の一部には、感覚が過敏で、通常の児童なら平気な音、光、においなどをつらく感じる場合があります。また、多くの児童が興味をもって楽しく参加できる活動に対してどうしても興味がもてないことがあります。そのような場合、集団活動からはずれて目立つこともありますが、一見おとなしく参加しているように見えて内面では苦痛を感じながらじっと耐えていることもあります。また、口頭のコミュニケーションだけでは情報をうまく取り込めないため、先生の指示を聞き漏らして伝達事項を親に伝えられない、提出物を把握できずに忘れ物が多くなるなどの問題が生じやすくなります。

また、休み時間には子ども同士の関わりが求められるため、周囲の子どもとの距離感がつかめずに孤立したり、逆に過剰に関わってトラブルに発展したりする場合があります。他者に自分の考えや気持ちをうまく伝えることが苦手であるため、困ったことがあっても誰かに相談することができず、どうしたらよいのか分からなくなってしまうことがあります。

学校生活でさまざまな“やりにくさ”を感じることは、時に心身の不調につながることがあります。登校を拒否する、朝起きられない、帰宅後に混乱した様子を見せるなどといった場合は、学校生活で何らかの問題を抱えている可能性があります。また、頭痛や腹痛など身体的な症状が現れたり、チック症状、強迫症状や抑うつ・不安などの精神的な症状が見られたりすることもあります。

自閉スペクトラム症の子どもでは、乳幼児期には発達の違いが主な特性として見られますが、児童期になると学業や日々の生活、周囲との関係がより具体的な課題として見えるようになります。時にはこれらの課題が先にあり、原因を探るなかで背景に自閉スペクトラム症があることに気付く場合もあります。まずは、周囲の大人が自閉スペクトラム症の特性を否定せずに理解し、包括的な連携体制を作ることが大切です。

小学校中学年頃になれば、本人が周囲との違いに気付くようになります。この時期には自分の特性や上手く日々を過ごすための工夫を本人が理解できるように、徐々に教える必要があります。同時に周囲の子どもにも理解を促し、いじめなどのトラブルが起こらないように介入することも必要です。自尊心や自己肯定感を育みながらサポートしていくことは、青年期以降をよりよく過ごすために重要となります。

自閉スペクトラム症にはいくつかの典型的な特徴がありますが、その現れ方や学校での過ごしにくさにつながるポイントには個人差があります。その年齢に期待される標準的な行動ができることを目標とするのではなく、それぞれのユニークな発達を前向きに評価することで、工夫できる点が見えてきます。具体的な対応については、担当医や専門機関とも相談するとよいでしょう。

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  • 信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授

    本田 秀夫 先生

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