子どもが成長して言葉を使い始めるころ、ひとり言が多い、会話が一方的になるといった傾向が目立つようになる場合があります。こうした特徴は成長するにつれて目立たなくなることもあるのですが、特徴が強すぎることで対人関係の構築が難しくなってくる場合には自閉症と診断されます。
子どもの自閉症では具体的にどのような症状があらわれ、診断は何歳からできるのでしょうか。本記事では、自閉症の診療に詳しい信州大学医学部附属病院 子どものこころ診療部 部長の本田秀夫先生にお話を伺い、子どもの自閉症の特徴や診断についてご解説いただきました。
自閉症は生来性の脳の機能の異常が原因と想定される発達障害です。
典型的な自閉症では下記の3つの特徴的な症状がみられます。
自閉症は、かつてはまれにしかみられない重い障害と考えられていました。人から話しかけられても相手にしない、目をあわせないといった対人関係やコミュニケーション上の障害を持ち、まるで自身のなかの殻に閉じこもってしまったような特徴を示すとされていました。しかし1970年代後半以降からは、そうした典型的な重度の自閉症だけではなく、多少は返答することはできるがコミュニケーションがうまく成り立たない状態なども自閉症の仲間に含めようという考え方が広まってきました。
そして2013年、米国精神医学会(APA)より発表された新しい診断基準(DSM-5)では、典型的で重症とされる自閉症から、比較的自閉症の特徴が軽い状態までを含めて、自閉症の特徴を示すために共通の困難を抱える人々を捉える枠組みとして、「自閉スペクトラム症」という診断名が設けられました。そのため現在では自閉スペクトラム症というよび方が一般的となってきています。
自閉症の子どもではこのような特徴がみられます。
・他の人から話かけたときの反応が自然ではない
(他の人からの反応が極端に悪くなるなど)
・決まったフレーズを繰り返す、ひとり言を話す、身振りなどをうまく使えない
・特定のものへのこだわりや没頭が非常に目立つ など
典型的な自閉症は2歳前後から診断が可能です。典型的でない場合は2歳頃では診断が難しい場合があります。
2歳というのは、多くの子どもで他者とのコミュニケーション行動が活発になる時期です。そのため自閉症の特徴があれば最も気付きやすい時期だといえます。自閉症の特徴はだんだんと周囲に適応してくることで目立たなくなっていくことがあり、特徴が強くないタイプの人では徐々に分かりにくくなってくるケースがあります。そうした観点からも、自閉症の特徴が最もあらわれやすく、気付きやすいのは2歳ごろだといえるでしょう。
自閉症は、軽症の場合では成長につれて周囲に適応していき、特徴が目立たなくなることがあります。一方、重症の場合には完全に治すことは難しいと考えられていますが、生活上の困難さをある程度は軽減させていくため治療法や支援方法があります。
薬物療法も行われることがあります。いくつかの薬剤が、自閉症を対象とした治療への使用を認められています。
これらの薬剤は自閉症の人たちにときどき見られる「易刺激性」に改善効果が期待されるものです。コミュニケーション障害自体の改善を期待することはできませんが、患者さんがちょっとしたことでパニックになりやすい、イライラする、癇癪を起しやすいといった特徴がある場合には、こうした薬剤によって治療を行うことが検討されます。
また自閉症の支援としては、全国にある児童発達支援センター、児童発達支援事業所、放課後等デイサービスなどを活用するという方法があります。こうした施設に通っていただくことで、自閉症の子どもの運動機能、認知機能、対人機能などの発達を促すことや、生活上の困難さの改善にむけた支援を受けることが可能になってきます。サービスを提供している団体によって、サービスの内容などは異なりますのが、こうした支援制度を活用してくことも選択肢のひとつになるでしょう。
信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授
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