自閉症は、コミュニケーションや対人関係の困難、限定的な興味や関心などを特徴とする発達障害です。先天的な脳の機能発達の偏りにより生じるものであることから、自閉症の特徴は幼少時から持っています。しかしながら、知的障害を伴わない場合には、大人になってより高度なコミュニケーション能力などが要求されるようになって初めて自閉症と診断されることもあります。大人の自閉症の特徴などについて、昭和大学発達医療障害研究所 講師の太田 晴久先生にうかがいました。
自閉症とは、コミュニケーションや対人関係などに困難が生じる発達障害のひとつです。また、知的発達の遅れが伴わない「高機能自閉症」、知的発達の遅れと言語発達の遅れの双方が伴わない「アスペルガー症候群」などとまとめた、自閉症スペクトラムに含まれます。
アスペルガー症候群についてはこちら
自閉症スペクトラムの原因は、脳の機能発達の偏りによるものです。脳のはたらきや脳と体をつなぐ、中枢神経のトラブルが生じて、下記の特徴が現れるのではないかと考えられています。しかしながら、詳細な原因はまだ明らかでありません。
自閉症を含む自閉症スペクトラムでは、以下の3点の特徴があります。
上記の特徴は大人の自閉症でも、子どもの自閉症でも共通してみられます。
繰り返すように、大人であっても子どもであっても、自閉症の特徴は共通です。しかし大人になるとより高度な社会的コミュニケーション能力が要求されるため、仕事などの社会生活に困難を覚える場面が増えてきます。
自閉症の方は、相手の気持ちを理解することや想像することが苦手です。そのため、会話がかみ合わなかったり、相手の話をきちんと理解できなかったりすることがあります。 冗談や比喩(ひゆ)、あいまいな表現も苦手です。
相手の気持ちを理解しにくいことから、一方的な会話に終始してしまうこともあります。
コミュニケーションが苦手なことから、うまく上司や同僚の指示を理解できずに仕事でミスをしてしまうことがあります。ほかにも、集中しすぎてしまう特徴から遅刻や仕事の締め切りに遅れる、融通が効かず、スケジュール変更に対応できないなどの仕事のミスが目立つことも多いです。
自閉症の方は、他人に対しあまり関心を持つことができません。そのためマイペースで、チームでの仕事より個人での仕事のほうが得意な傾向にあります。チームでの仕事だと、自閉症の方が苦手なコミュニケーション能力が要求されることもその一因でしょう。
自閉症の方は、想像力や柔軟性が求められる仕事は得意ではありませんが、一定のルールに基づいてコツコツと進める必要がある仕事は得意です。単純な作業も繰り返しできます。
自閉症の方は、得意なことや好きなことに対しては高い集中力と記憶力を発揮します。論理的な思考にも長けていることが多いです。
自閉症の方は、決まった手順で取り組むことのできる仕事や一人で完結できる仕事は得意ですが、高いコミュニケーション能力や柔軟性が求められる仕事は苦手です。そのため、自閉症の方が苦手な仕事は避けたほうが、本人の能力を発揮できる機会を得られる可能性が高いです。
また、環境の変化に対応しにくい点も特徴ですから、今までできていた仕事も職場や上司が変わることでミスが多くなってしまうことがあります。そのため、できるだけ環境の変化を少なくしてもらうことも自閉症の方が本来の能力を発揮できるようにするための工夫のひとつです。
昭和大学 発達障害医療研究所 准教授
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