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インタビュー

大人のADHDの症状や特徴―ADHDでも働ける?

大人のADHDの症状や特徴―ADHDでも働ける?
太田 晴久 先生

昭和大学 発達障害医療研究所 准教授

太田 晴久 先生

ADHDなどの発達障害に対する研究や世間の認知が進んだことで、近年は大人のADHDが注目されています。特に大人になって「仕事でのミスが多い」「いつも叱られてばかりいる」ことが増え、周囲や自身がADHDではないかと疑って受診するパターンが増えています。本記事では大人のADHDについて、大人の発達障害に詳しい昭和大学発達医療障害研究所 講師の太田 晴久先生にうかがいました。

仕事のミスをする若いサラリーマン

ADHDは不注意・多動性・衝動性の3つの症状を主症状とする発達障害です。ADHDのタイプは、大人でも子どもでも下記の3種類にわけられます。             

ケアレスミスが多い、約束を忘れてしまう、物をよく失くすといった、不注意を起因とする症状が主に現れるタイプです。

上記のミスはADHDでない方でも起こりうるものですが、ADHDではこれらのミスが年齢に対して不相応に生じ、日常生活・社会生活に支障をきたします。これらの症状は決して本人のやる気がない、怠けているというわけではなく、脳の機能発達の偏りから起こるものです。

じっとすることができない、失言をしてしまうなど、多動性や衝動性から起こる症状が主に現れるタイプです。

ADHDの多動性というと、すぐに離席してしまうイメージがありますが、大人のADHDでは離席してしまうほどじっとできない方はあまり多くありません。大人のADHDで多動性が現れる場合は、何となくそわそわしている、体を小刻みに揺らす、といった形で現れることが多いです。

混合型は、上記に挙げた不注意・多動性・衝動性が同程度に目立つタイプを指します。

大人のADHDは不注意優勢型が多いです。その理由は諸説ありますが、主に下記の2点であると考えられます。

ADHD発達障害のため、ADHDの傾向は子どもの頃から持っています。しかし、幼少時から不注意優勢型のADHDである場合は、多動・衝動型のADHDより学校生活で問題視されにくく、学業や学校生活に支障がなければ「少しうっかりしているけれど普通の子」として見過ごされてしまうことが多いです。なかには保護者や先生、友人など周囲のサポートにより不注意症状がカバーされ、症状がみえにくくなっていることもあります。

しかしながら、社会に出ると自身でスケジュールやタスクを把握し、ミスなく確実に遂行する能力が求められます。そこでADHDの不注意症状が顕在化して「自分はADHDかもしれない」と受診するパターンが多いと考えられます。

詳細な理由は明らかではないものの、子どもの頃は混合型であったが大人になるにつれて多動の症状が落ち着き、結果として不注意の症状が目立つことがあります。       

探し物をする若い女性

大人のADHDの症状は、具体的に下記のような行動や状態となって現れます。症状の出方は個人差や、環境によって異なります。

繰り返しますが、ADHDの症状は決して本人の努力不足や怠けではありません。本人は「次は失敗しないようにしよう」と自分なりに対策を試みているにもかかわらずなかなか状況が改善されないのです。

  • ミスが多い、同じミスを繰り返す
  • 頭の中やスケジュール・タスクを整理できない、順序だてて行えない
  • 締め切りをなかなか守ることができない
  • 忘れ物や失くし物が多い
  • 仕事や作業に集中できない
  • 失言をしてしまう         
  • 衝動的に動いてしまう(衝動買い、独断で重要事項を決めてしまうなど)
  • そわそわしている、体を小刻みに揺らす(貧乏ゆすりなど)
  • 気分の変動が激しい(1日のなかで瞬間的に気分が変わる)
  • 過度に集中してしまう ※自閉症スペクトラムとADHDが併存している可能性             

大人の自閉症についてはこちら

自身や周囲の人について「もしかして大人のADHDかも」と思ったら、発達障害を診ることができる精神科で相談してみることをおすすめします。病院の受診がためらわれるようであれば、各自治体の発達障害者支援センターの相談窓口や、職場の産業医に相談するのもひとつの手です。

薬を飲む20-30代男性

大人のADHDの治療も、基本的には子どものADHD治療と大きく変わることはありません。大きく、薬物治療とその他の治療にわけられます。しかしADHDは治療によって症状が完全に消失することはなく、治療によってADHDの症状による困難を回避し、日常生活、社会生活を不便なく送れるようにすることがその目的です。

大人のADHDの薬物治療では、現在「ストラテラ」「コンサータ」の2剤の処方が認められています。どちらの薬も脳の中枢神経に作用し、ADHDの症状を抑える効果があります。

実際に、患者さんからの希望があれば薬物治療を実施します。

しかし薬物治療は症状を抑える、いわゆる対症療法にすぎません。そのため、薬物治療と並行して次に述べる環境調整やソーシャルスキルトレーニングなどを通して、自身が仕事や生活をしやすい環境を整えることが大切です。

ADHDの薬物治療の詳細はこちら

大人のADHDの薬物以外の治療では、子どものADHD治療と同様に環境調整やソーシャルスキルトレーニングなどを実施します。

環境調整は、ADHDの方が集中して仕事や勉強などに取り組めるように周囲の環境を整えることを指します。

たとえば、大人の場合だと以下の環境の見直しを行うことで、ADHDの特性をカバーしながら生活をすることが可能です。

  • ポスターなどの掲示物など、集中できなくなる要素をなくす
  • スマートフォンのリマインダー機能などを活用して予定を忘れないようにする
  • 指示を出してもらう際には簡潔に少しずつ出してもらうようお願いする
  • 計算などの苦手な作業は、他の人にサポートや確認をお願いする など

ソーシャルスキルトレーニングとは、対人関係を構築する際に必要な技能を学ぶ訓練です。ADHDの患者さんは、頭ではわかっていても、衝動性からつい誰にも相談せずに行動してしまう、うっかり失言をしてしまうなど、対人関係に難しさが生じることがあります。

ソーシャルスキルトレーニングを受けることで、相手の気持ちを慮りながら行動できる方法を身につけられます。

大人、子どもに限らず、ADHDと遺伝の関係は以前から指摘されている点です。実際に、親子でADHDである確率は高いことがわかっています。

しかしながら注意しておきたいことは、遺伝はあくまでADHDの発症要因のひとつに過ぎないということです。遺伝的要因、周産期歴(未熟児や母体内感染症の有無)などさまざまな要因が複数組み合わさることで発症すると考えられていますが、その詳細についてはまだよくわかっていません。

ADHDと遺伝の関係について詳細はこちら     

私の勤務する昭和大学附属烏山病院に通院する、ADHDの方のおよそ半分が初診時に就労をしています。通院しながら仕事をみつける方も多く、雇用枠は一般就労の方もいれば、障害者枠での就労をしている方もいます。

ADHDの症状一つひとつは、ADHDでない方にもあるありふれたものです。そのため、周囲の理解がなければ「怠けている」「やる気がない」と評価されて、過度な叱責や自尊心の低下につながることがあります。

ADHDの症状は、努力すれば解決するものではなく、どうしても起きてしまうものです。しかし、自身の持っている特性を把握し、持てる能力を生かした形で工夫することにより乗り切れる場面も多くあります。また、職場でご自身の障害について理解してもらえている場合には、これが怠けややる気のなさではなく、ADHDの特性であることを職場の上司や同僚などに伝えましょう。

自身の障害を伝えられていない、あるいは障害に対して理解がない環境である場合には、必ずしも「ADHDである」ということまでは伝えなくてもよいでしょう。ただし自分が業務上困っているポイントについては説明し、可能な範囲で理解とサポートをお願いすることが大切です。

 

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  • 昭和大学 発達障害医療研究所 准教授

    太田 晴久 先生

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