インタビュー

ADHDと遺伝―親がADHDの場合、子どもに遺伝する確率は?

ADHDと遺伝―親がADHDの場合、子どもに遺伝する確率は?
門田 行史 先生

自治医科大学附属病院 とちぎ子ども医療センター 准教授

門田 行史 先生

この記事の最終更新は2017年11月26日です。

「親がADHDだと子どももADHDになる」「兄弟姉妹でADHDになりやすい」など、ADHDと遺伝には何かしらの因果関係があるのでは、と気にされる方がいらっしゃいます。実のところ、ADHDは遺伝することがあるといわれる発達障害です。しかし親や兄弟がADHDだからといって、必ず他の家族も発症するわけではありません。それは、ADHDが遺伝要因だけで発症するものではないためです。ADHDと遺伝の関係について、国際医療福祉大学病院 小児科 部長・准教授の門田 行史先生に解説いただきました。

親がADHDの場合、その子どももADHDである可能性は非ADHDの親の場合と比べると5〜10倍高いといわれています。これを確率に直すと、親がADHDの場合、50〜80%(平均70%)の確率で遺伝するという研究結果が出ています。

このようにADHDと遺伝の関係は有力視されていますが、ADHDの発症にかかわる特異的な遺伝子はまだ発見されていません。なぜなら、ADHDは遺伝要因単体では発症せず、そこに経済的問題、家族背景、虐待などの環境要因が組み合わさることで発症するためです。

しかし、ADHDの発症に関与している可能性のある遺伝子がいくつか指摘されています。

<ADHDの発症との関連が有力とされる遺伝子>

  • ドーパミン関連受容体およびトランスポーター:DRD4,DRD5,SLC6A3
  • セロトニン受容体およびトランスポーター:HTR1B, SLC6A4
  • シナプス関連蛋白関連遺伝子:SNAP-25,SLC9A9, NOS1, LPHN3, GIT1, NOS1

特に、ADHDの治療薬の効果の面からみても、ADHDの発症に脳内のドーパミンを中心としたモノアミンが関連しているのではないかということは、ほぼ識者のなかでは定説となっています。

まだ研究段階ではありますが、ADHDの環境要因(関連因子)として、以下が検討されています。

<ADHDの関連因子 ※遺伝を除く>

  • 周産期歴(未熟児、母体内感染症の有無など)
  • ADHD症状の重症度・症状サブタイプ・知能レベル
  • 合併症の有無(自閉症・学習障害てんかんアレルギーなど)
  • 療育環境(子どもの健診受診歴・予防接種歴、喫煙者の有無、経済状況、ネグレクト・虐待の有無など)

このように、家族や近親者の病歴がADHDの発症に影響している可能性が指摘されています。保護者の方が、過去に自分がADHDと診断された経験があったり、現在ADHDの症状があり困っていたりする場合、子どものADHD診断や対処法の手がかりとなることもありますので、まずはかかりつけの小児科医など身近な医師に相談してみましょう。

実際、ADHDの症状を持つ保護者がADHDの子どもの様子をみていると「自分の子どものころとそっくりだ」と思うこともあるようです。その場合、保護者は「自分が感じてきた生きづらさを子どもにさせたくない」という一心で厳しく育てようとしてしまうことがあります。一方で、「ADHDの症状を知っている理解者であり、経験者」として子どもをサポートできる可能性を持っています。

ADHDは、早期に専門的な介入を行い、適切にケアをしていけば、日常生活における困難さを低減することが可能です。充実した学校生活を送り、社会で自立できるよう、気になることがあれば医療機関の受診や地域の発達障害支援センターなどへ相談することをおすすめします。

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    門田 行史 先生

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