インタビュー

ADHDが疑われた場合はどこへ行く?病院選びのポイント

ADHDが疑われた場合はどこへ行く?病院選びのポイント
原 仁 先生

社会福祉法人青い鳥小児療育相談センター神経小児科 所属

原 仁 先生

クラスに1人か2人はいるといわれる発達障害ADHD。人により症状の程度はさまざまですが、「集中できない」「忘れっぽい」「じっとしてられない」「おしゃべりが止まらない」などのADHDの症状ひとつひとつはありふれたものであることから、病院を受診すべきなのか、どの病院に行けばいいのか、と悩む方も多いことでしょう。

ADHDが疑われる場合の病院の選び方や、受診を迷った際の相談先について、社会福祉法人青い鳥 小児療育相談センター 神経小児科の原 仁先生にうかがいました。

ADHDが疑われた際は、実際にADHDであるかの診断をしてもらい、そして治療を行うために医療機関の受診が必要です。インターネットなどにはADHDのセルフチェックがありますが、あれはあくまでもADHDの傾向があるかを簡易的に知るものにすぎず、医学的な診断に至るには医師による判断が必須です。

ADHDの診療を実施している診療科は、小児科と精神科です。具体的には、小児専門の精神科である児童精神科や子どもの神経疾患を診る小児神経科などがあげられます。最近は大人の精神科でも成人期のADHDを診るクリニックや病院もあります。しかし実際のところ、小児科や精神科の医師の全員がADHDに詳しいわけではありません。

ADHDを多く診ている、専門にしている医師がいるかを知るためのポイントがひとつあります。それは、ADHD治療薬の一種であるメチルフェニデート塩酸塩を処方できる医師がいるかどうかです。

実はメチルフェニデート塩酸塩は、登録された医師しか処方ができません(アトモキセチン塩酸塩、グアンファシン塩酸塩はどの医師でも処方ができます)。そのため、メチルフェニデート塩酸塩処方の登録医がいる病院が、ADHDの患者さんをたくさん診ている病院であるというひとつの判断基準となります。

受診しようと思う病院に「メチルフェニデート塩酸塩を処方できる医師はいますか」と聞けば、登録医の有無を教えてもらえるでしょう。

ただし、第1選択薬は患者さんの状況によって異なり、メチルフェニデート塩酸塩を服用しなければならないと思い込むのは誤解です。

繰り返しになりますが、ADHDは「集中しにくい」「忘れっぽい」「じっとするのが苦手」「話に割って入ってしまう」「おしゃべりが止まらない」などひとつひとつの症状をとってみると、誰にでも少しは当てはまるものです。「ADHDのような行動があるけれど、この程度で本当に病院へ行ってよいのか」と受診をためらう方もいるかもしれません。

迷った場合、まずは子どもの専門家である学校や園の先生に相談してみるとよいでしょう。先生たちは多くの子どもをみていますから、保護者の方では気づきにくい「ほかの子どもと比べてどうか」といったADHDの傾向がみえていることが多いです。

ADHDの診断には「ほかの子どもと比べて程度が激しく、日常生活に支障をきたす」ことがポイントです。例えば、ベテランの先生が20分程度相手をしてどう感じるかがひとつの基準になるでしょう。まずは先生に学校や園での様子を尋ねてみることが大切です。

具体的には、以下の点を先生に尋ねてみるとよいでしょう。

  • 学校や園での友人との関係(トラブルがあるか)
  • 先生との関係
  • 通学・通園時のトラブル
  • 授業中など、集団で何かに取り組む際の様子

友達と遊ぶ小学生

ADHDの治療を受けるメリットは、社会生活で生じている困難をできるだけ軽減・回避することでほかの人と同じように社会生活を快適に送れるようになる点です。

ADHDは、その特性により学校や仕事、家庭などでトラブルを起こすことが多くなります。社会生活に支障をきたしているにもかかわらず治療をしないままだと、対人関係でのトラブルや学力の低下、仕事での評価の低下、家族関係の悪化などが生じます。

そしてそのトラブルを回避できないために、患者さんの自尊心が低下し、自信が持てなくなります。その結果、不登校、いじめ(被害者も加害者もあり)、ネット中毒、学業不振、アルコールやギャンブルへの依存などの二次障害を発症することがあります。

二次障害を防ぎ、ADHDにより生じる困難にうまく対処して社会生活を送るために、治療は有効です。

ADHDの診断にはDSM-5など一定の診断基準がありますが、検査で数値として現れない障害のため、これといった診断の決め手はありません。

まずはチェックリスト方式でADHDの基準を満たしているかをスクリーニングし、時間をかけた問診によってどの症状があるか、どの程度の症状か、実際に日常生活に支障をきたしているかを医師が診ていきます。そしてADHDの診断に至ります。

また、自閉症など他の発達障害との合併で対応や予後も変わるため、それらの鑑別も重要です。

仮にADHDであっても、症状が軽い場合は保護者の方への環境調整とペアレントトレーニングで十分に対応できることもあります。そのため、保護者の方は、お子さんの様子が気になるなったときは、まずは学校や園の先生に相談してみてください。そして早期の病院受診をお勧めします。

  • 社会福祉法人青い鳥小児療育相談センター神経小児科 所属

    日本小児科学会 小児科専門医日本小児神経学会 小児神経専門医日本てんかん学会 会員

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