ADHDの検査は、問診を中心にさまざまな検査が行われます。多くは時間をかけて検査していきますが、それはADHDの症状である衝動・多動・不注意そのものは誰にでもあるもので、正常な範囲との鑑別に時間を要するためです。ADHDの検査の種類や内容、診断基準などについて、国際医療福祉大学病院 小児科 部長・准教授の門田 行史先生にお話をうかがいました。
ADHDの検査は
の3つに大別されます。このなかでも特に重視されるものが問診です。
ADHDが疑われる方や、保護者への聞き取りではADHDの診断に重要な情報が多く得られます。まずは、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準に書かれている内容に沿って問診を進めます。
問診を進めるうえで重要なポイントは以下の2点です。
ADHDの診断のポイントについて、詳しくは本記事の『リハビリ評価―発達協調運動障害の診断』を参照ください。
本人や保護者から家庭や学校、職場での様子や、幼少時からの傾向などについて話を聞きます。本人や保護者の記憶のほか、以下のものがあると診断の役に立ちます。
<問診時に持参するとよい持ち物>
症状を知るために、ADHDの症状などに関する下記のチェックリストの記入をお願いすることがあります。
子どもの場合(保護者が記入)
成人の場合(本人が記入)
ADHDでは、
を行うことがあります。これらの検査で直接ADHDかどうかがわかるわけではありませんが、ADHDであるかどうかを間接的に知る手がかりになります。また、併せてそのほかの発達障害との合併を知るための検査を実施することもあります。
発達・知能検査には次の種類があります。
これらは主に年齢や発達の段階に合わせて使いわけます。
他の発達障害の有無や鑑別のために実施される心理検査があります。検査は多岐にわたりますが、代表的なものは次の検査です。
など
リハビリ評価では、作業療法士がADHDの疑われる方の運動機能をチェックします。
ADHDの患者さんの約半数が手先や運動感覚の不器用さとなって現れる発達性協調運動障害を併発するといわれます。
具体的には以下の症状が日常生活に現れます。
ADHDを疑ったとしても、他の神経疾患である可能性があります。他の神経疾患でないことを明らかにするために、
といった各種身体的検査を実施することがあります。
ADHDは、定型発達児と比べて脳機能の変化があるといわれます。特に行動抑制障害(多動症状に関与する)や注意力低下(不注意症状に関与する)に大きく関与する右前頭前野の機能低下が指摘されています。
そこで、光トポグラフィーという体への負担がまったくない脳機能イメージング検査で、行動抑制・注意力ゲーム時にADHDの患者さんの脳の血流を計測すると、通常であれば右前頭前野の血流が増えるところ、ADHDの患者さんでは血流の増加がみられません。
光トポグラフィー検査はADHDの多動・衝動性・不注意症状(落ち着きがない、我慢できない、忘れ物が多い、等)をおよそ80%の精度で見わけることができます。
以上から、ADHDの症状である多動性や衝動性は、しばしば定型発達のなかの「子どもらしい活発さ」や、「躾の問題」と見分けがつきません。しかし、光トポグラフィー検査によって、安全に、そして客観的にADHDを可視化することができます。
ADHDの脳機能研究や子育てのコツなどを幅広く紹介している、門田先生の研究室のHPについては以下を参照ください。
ADHDの診断までにかかる日数は、個人によってさまざまです。診断に十分な情報が初診の段階でそろっていれば初診で診断される場合もありますし、合併症がある場合や多方面(教師、保護者など)への問診に時間を要する場合だと数か月から半年程度かかることもあります。
ただし、下記のケースでは日常生活に大きな支障が出ていることから、急いで診断、または症状に応じた治療を優先する必要があります。
(自尊心の低下から「どうせ僕/私なんか・・という発言が増える。失敗を隠すために嘘をつく、など。眠れない/朝起きられない、登校を渋る、ストレスによる腹痛や頭痛、吐き気の症状があるなど)
大人と子どもで大きく検査内容は変わりませんが、大人はインターネットなどで公開されているセルフチェック(ASRS-v1.1)を持参することがあります。
子どものADHDについて詳しくはこちら『子どものADHD症状にはどう対応する? 年齢別の症状と対応』
製薬会社などが公開しているADHDの啓発サイトなどにある、ADHDのセルフチェックは、有用なものです。しかしセルフチェックはあくまで主観的な検査に過ぎず、医学的知見をもとに確実にADHDであるかを判断するには医師の診断が必須です。
本人がADHDのような症状で日々の生活や対人関係において困難を覚えている場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
子どもであれば小児科、成人であれば精神科が、ADHDの診療を担当しています。まずはかかりつけの医師に相談してみましょう。
自治医科大学附属病院 とちぎ子ども医療センター 准教授
自治医科大学附属病院 とちぎ子ども医療センター 准教授
日本小児科学会 小児科専門医
日々、子どもの心の診療に関わる診療に携わる中で、『発達障害の診断や治療に役立つ客観的検査法の開発』という着想に至り、約10年間にわたり脳機能研究を続けている。中央大学理工学部をはじめとする複数の施設との医工・多職種連携から生み出された研究成果は複数のジャーナルや複数のメディアで紹介されている。現在、国際医療福祉大学病院の小児科部長として小児一般診療に従事しながら、社会実装を念頭に置いた臨床研究を目指し、特許出願やアウトリーチ活動をすすめている。自治医科大学とちぎ子ども医療センター 准教授、中央大学研究機構 客員准教授。
(門田研究室ホームページ:http://ped-brailab.xii.jp/wp/)
門田 行史 先生の所属医療機関
関連の医療相談が10件あります
自分がADHDが気になります。
仕事で細かいミスやケアレスミスが多いです。 子供の頃から集中できないなどの、特徴がありました。 自分がADHDなのか気になります、、
物忘れが激しくなった
ここ数日、帰り道を間違えたり咄嗟に言われた左右を間違えたりするようになりました。あとは一週間前の写真を見ても、その日1日どこで何をしたのか思い出せなかったりしました。他の人に相談すると病院に行ったほうがいいと言われますが、病院に行くほどなのでしょうか?
ADHDについて
最新、自分はADHDなのではないかと思っています。 小さい頃から注意散漫でな子で、大きくなり勉強に専念しようとすると、長時間座っているのが苦手なためか授業を聞いているはずなのに気づけばいつも別のことをしていました。 貴重品に関わらず無くし物が人より多いと感じます。不注意や遅刻で周りの人に迷惑をかけてしまう事も多々あります。 自分が情けなくて本当に嫌になります。「ちゃんとするんだ!」と意気込んで注意がける事は今まで何度もありました。でもその度に他のことが出来なくなりました。そしてまた周りに迷惑をかけ落ち込んでしまいます。 そして不注意で衝動的な癖を治したいと思い調べていくとADHDという障がい?があることを知りました。でもこういった障害って多かれ少なかれ多くの人に当てはまると思います。なので病院に行くべきなのか、そもそも病院通って治るものなのだろうかと悩んでいます。 長々とすみません
長文を読んだら、ひどいめまいとひどい頭痛に。
↑これは私は何かの病気でしょうか?? 今に始まったことではなく、 子供の頃から 絵本、教科書や本、テストの問題、教習の問題、は急激に眠たくなります。 そして読む段階でミスをしたり、途中で頭が疲れて寝てしまうので最後まで集中して問題が解けなかったりします。 当時は私は人より集中力がない、怠けている、何かに疲れているだけと思ってました。 子供が産まれ、 学校関連の書類、連絡のメール、絵本の読み聞かせ、子供の勉強を手伝うときにプリントの文章を理解するとき…など 親として責任を持ってたくさんの文字を読まなくてはならない時、 車酔いのようなめまいや酷い頭痛に悩まされます。さすがに何とかしなければと思ってます。 私は今アメリカ住みですが、子供の学校がビデオチャット授業に移行しつつあります。 ビデオチャット授業を息子と受けているとき、息子6歳はじっとしていられないので、私が横で座らせたりビデオの授業(子供のバタバタで聞こえにくい)を聞いたりしているうちに、私が15分ほどでめまいがして頭痛がして寝込み、今はアメリカの市販の頭痛薬を飲んでます。子供のきょついくに遅れが出そうです。 ビデオチャット授業のたびに薬を飲んでていいのかという不安もあります。 これは私は何かの病気か障害を持っているのでしょうか? 今後日本に帰ることを選択した場合、 何科の病院に行けばいいでしょうか?? 何の病気が考えられますか? ADHD、聴覚過敏(聴覚情報処理障害)、不安障害、強迫性障害を疑っています。 元々車酔いは酷い方です。 めまいや頭痛はこのどれかに関連していますか? 質問ばかりで申し訳ありません。 よろしくお願いします。
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