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自閉スペクトラム症はどのように診断されるの?~症状の特徴・受診の目安・相談先とは~

自閉スペクトラム症はどのように診断されるの?~症状の特徴・受診の目安・相談先とは~
山末 英典 先生

浜松医科大学 医学部精神医学講座 教授

山末 英典 先生

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自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)とは、“自閉性障害”“アスペルガー障害”“広汎性発達障害”などの発達障害の総称です。“自閉症スペクトラム障害”“自閉症スペクトラム”などと呼ばれることもあります。自閉スペクトラム症の症状は多岐にわたりますが、対人相互作用の障害、コミュニケーションの障害、パターン化した興味や活動という3つの特徴が中心の症状です。自閉スペクトラム症の診断には、問診や心理検査などをもとに症状を確認して行われます。

では自閉スペクトラム症はどのように診断されるのでしょうか。

自閉スペクトラム症は現在のところ原因が不明であり(2020年7月時点)、血液検査やCT・MRIなどの画像検査など生物学的な検査方法を用いて診断することは困難です。そのため、実際に現れている症状から判断し診断を行います。

診断を行う場合にはその信頼性を担保するために明確な診断基準の設定が必要です。そこで自閉スペクトラム症の診断では一般的に、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル(DSM)による診断基準が用いられます。医師は問診や行動の観察、そして心理検査などを通じてその人の症状を確認し、診断基準をもとに診断を行います。

自閉スペクトラム症の診断基準として現在使用されている診断統計マニュアル(DSM)は、2013年に出版された第5版(DSM-5)です。DSM-5によれば以下のような条件を満たすと判断された場合に自閉スペクトラム症と診断されます。

DSM-5による自閉スペクトラム症の診断基準

  • 複数の状況で社会的コミュニケーションや対人反応に持続的な障害がある場合
  • 行動・興味・活動などに繰り返し行う特徴のあるものが2つ以上ある場合
  • 上記2項目のような症状が幼児早期から認められる場合
  • これらの障害によって学業的・職業的に問題が生じている場合
  • これらの障害が知的障害など、ほかの病気では説明しきれない場合

また、自閉スペクトラム症の70%以上がそのほかの精神疾患と併存していると考えられているため、診断の際には併存した病気がないかどうかを含めた医学的な評価が行われます。

自閉スペクトラム症が疑われるような症状が現れた場合、医療機関の受診や地域の福祉施設への相談を検討しましょう。

医療機関を受診する場合はかかりつけの小児科を受診するほか、児童精神科や発達障害の専門外来などの受診を検討してもよいでしょう。一方、福祉施設に相談する場合は保健センターや子育て支援センター、発達障害者支援センター、療育センターなどへの相談を検討するとよいでしょう。福祉施設への相談方法は各市区町村によって異なるため、住まいの地域の施設のウェブサイトなどを確認しましょう。

自閉スペクトラム症の症状は重症度によっても異なりますが、中心となる症状としては“言語・コミュニケーションの障害”“社会性の低下”“興味・関心の集中”などの特徴が挙げられます。

言語・コミュニケーションの障害

言葉の発達の遅れや会話の不成立などが見られることがあります。

社会性の低下

集団生活の中で友達との関わり方が一方的なケースや他人と感情を共有しにくいケースなどが考えられます。

興味・関心の集中

特定の事柄に対して強いこだわりを抱くケースや環境上の変化に対して戸惑いやすいケース、感覚が過敏・鈍感など極端になってしまうケースなどが挙げられます。

これらの特徴が見られた場合には、医療機関の受診や福祉施設への相談などを検討しましょう。

自閉スペクトラム症には、現段階では中心となる症状への根本的な治療方法がありません(2020年7月時点)。しかし、早期に診断し療育(医療・教育など多方面からの援助・支援)を行うことによって、その後の社会適応力を高められると考えられています。そのため、気になる症状や特徴が見受けられたときには、なるべく早い段階で医療機関の受診や福祉施設への相談を検討しましょう。また、子どもが自閉スペクトラム症の診断を受けた場合、保護者や周囲の人がその特徴を理解し支援・援助をしていくことが大切です。

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