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発達障害における医療の役割
文部科学省が行った調査[注1]では、通常学級に在籍する児童生徒の6.5%には学習面や行動面において特別な支援が必要とされています。このなかには発達障害が疑われるケースもあり、発達障害はめずらしい...
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発達障害における医療の役割

公開日 2018 年 01 月 28 日 | 更新日 2018 年 01 月 29 日

発達障害における医療の役割
岡田 俊 先生

名古屋大学医学部附属病院 准教授/精神科・親と子どもの心療科医師 医学博士

岡田 俊 先生

文部科学省が行った調査[注1]では、通常学級に在籍する児童生徒の6.5%には学習面や行動面において特別な支援が必要とされています。このなかには発達障害が疑われるケースもあり、発達障害はめずらしい障害ではありません。この記事では、発達障害における医療の役割について、名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科准教授の岡田俊先生にお話を伺いました。

注1:文部科学省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(2012年12月)

発達障害を診断するということ

発達障害の診断には、その子の発達の歩みと日々の生活の様子を詳しく聞き、そして現在の様子を観察して、その子の歩みのパターンに定型的な発達と相違があるか、そのために何らかの支援のニードがある状況かということを考えて診断が下されます。

発達障害の特徴は、発達障害の子にのみみられるものではありません。質問をそのまま返したから(エコラリア)、バイバイをする手が逆さだったから、ミニカーを一列に並べたから、ボールがくるくると転がり落ちる遊びを繰り返したから診断がつくというものではなく、これらはほとんどの子どもが短期的には通過する発達段階です。

身体面や社会性、情緒、生活スキルの発達、興味の対象、感情や行動のコントロール、注意の持続など、発達の歩みの全般を把握して診断を行います。

知能検査や発達検査を実施することもありますが、これらは参考にはなりますし、診断をより確からしくするものではありますが、これらの検査によって診断をするものではありません。

診断と向き合う―「告知」と「障害受容」

診断を受ける親子

発達障害ではないかとの疑いを持って受診される保護者の多くは、今日ではインターネットや書籍で発達障害についての一通りの知識を持って病院を訪れます。しかし、知識を持っていることと我が子の発達障害を受け入れることが容易であるかは別問題です。

発達障害のある子を育てるという現実と向き合うことは、そもそも想定の範囲外であり、その現実と向き合うのは時間のかかる作業だからです。

発達障害の診断基準に照らして、発達障害の診断に該当することが説明されると思いますが、もっと大切なことは、本人や保護者にとって、これからの見通しが持てることでしょう。

発達障害は生得的で生涯にわたり持続する障害ですが、その人の抱える問題が解決しないわけではありません。当然のことながら、その子も多くを学び、発達を遂げるわけです。そのなかで、新たな悩みを抱えることもありますが、ともに歩み、そのことに相談に乗ってもらえる支援者がいるということを実感できることが、告知において一番重要なことなのです。

障害受容は、障害に該当するという現実を理性的に受け止めるだけではありません。子どもの様子を見ながら、この子は「車が好き」「独創的な絵を描く」などと思っていたのに、障害特性について意識するようになった途端、心穏やかに見ていられなくなり、本人の特性に合わない活動を強いたりするといったこともあります。

また、その子の発達の伸びに気づいていても、つい周囲と比較して、焦りばかりが空回りすることもあります。これらは、どの保護者も少なからず経験するものでしょう。その子の歩みに応じた育みをしていけるためには、障害受容に向けてのさまざまな紆余曲折があるものです。

本人の障害受容も大切です。しかし、これは障害名のみが降ってくるようなものではなく、その子の自己理解が進み、自分の得手不得手がわかり、それに応じた工夫によってうまくやっていけるという自身のもとに、初めて障害受容が成立します。

しかし、障害名にまつわる否定的なイメージが積み上げられていたり、自分の特性に応じた支援が適切に与えられてこなかった子どもでは、発達障害を受容することは容易ではありません。

発達障害があることを本人に伝える適切な時期は?

保護者のなかには何歳になったら告知、という情報を耳にされたという方もいらっしゃいます。確かに自己理解が可能な年齢という意味では思春期あたりですが、同時にこの時期は多感な時期でもあります。その子がどのような現実と直面し、どのような支えられ方をしてきたのか、そのなかで発達障害についてどのように認識しているのか、ということを踏まえた時期を検討するのがよいでしょう。

発達障害の治療

薬を飲む子ども

発達障害に対する医療は、一般的な支援の方法ではありますが、支援の全般からみればほんの一部分に過ぎないものです。正確な診断を下すことは最も大切な役割の一つであり、そのことによって様々な福祉的支援、教育との連携などとの糸口も開かれます。もっとも円滑な連携が築かれた場合、医療の役割は、その子の育ちと育みについて、ともに考えていく支えに留まるはずです。

しかし、行動上の様々な問題を抱え、その行動の意味を考えたり、望ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためにはどうすればよいか、行動療法の考え方に基づいて最もよい対応を相談することもあります。また、そのためのスキルを、ペアレント・トレーニングとして学ぶ機会を提供することもあるでしょう。また、学校や家庭で起こった現実的な困りごとの相談、それは家族、友人、先生との関係、学習、進学、交際、結婚、出産、育児など多岐にわたるのですが、そういった本人の相談にも応じます。

しかし、こういった介入でも有効な効果がないとき、あるいは、精神的な不調を伴う場合には、薬物療法を併用することがあります。

ADHDの薬物療法

2018年1月現在、注意欠如・多動症(注意欠如・多動性障害、ADHD)に適応がある薬はメチルフェニデート徐放錠、アトモキセチン、グアンファシン徐放錠です。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや副作用が異なり、患者さんの状況や薬物への反応性に応じて使いわけます。

ADHD症状が軽減すると、全体を見渡して分析的に判断したり、順序立てた行動ができたり、思い通りにならない状況に対しても感情的になることなく対処することもできますが、このような体験自体が新しいものであったりします。

また、保護者の方にとっても、子どもの様子の変化が望ましいことであったとしても、その時点では「この子らしくない」とみえ、戸惑うこともあるでしょう。実際には、この「その子らしさ」というのはあくまでADHDの特徴からくる「その子らしさ」であって、本当の「その子らしさ」、すなわち、こんな優しい心配りをしていたんだ、などといったことが、ADHDの症状が消えてみるとみえてくるものです。しかし、それまでにはしばらくの時間が必要です。このような服薬後の変化に対する戸惑いを支えていくことも医療の役割といえるでしょう。

自閉スペクトラム症の薬物療法

 自閉スペクトラム症の易刺激性(いしげきせい)に対して、一部の抗精神病薬を使用することもあります。易刺激性は、かんしゃく、人への攻撃的な言動、自傷、気分の変わりやすさとして観察される感情のコントロールの難しさです。

抗精神病薬は統合失調症の治療にも用いられる薬ですから、不安に思われる保護者の方もいるかもしれません。しかし、自閉スペクトラム症に承認されているのは、統合失調症に使用されるよりも少ない用量であり、易刺激性への効果は鎮静作用を期待するものではありません。易刺激性の精神医学的背景は必ずしも明確ではありません。薬剤は、抑うつ症状や気分の波、衝動性、こだわり、感覚過敏などのさまざまなレベルで効果を示している可能性があります。

他方、易刺激性の背後には、相手の気持ちや社会的文脈を読み取りにくい、見通しを持ちにくい、コミュニケーション障害といった認知特性や対処スキルの乏しさがあります。薬物療法の実施は、その子の社会適応状況を一時的に改善したとしても、そのうえで認知特性に応じた支援やスキル獲得を目指した援助が実施する必要があります。

発達障害の二次障害をどうとらえるか 

落ち込む中高生

発達障害のある子に、学童期後期あるいは思春期以降に二次障害が出現するのではないか、というのは多くの保護者にとって頭を悩ませることとなっています。確かに、発達障害は、うつ病、双極性障害、社交不安症、強迫症、精神病性障害、てんかんなど、さまざまな併存障害を伴うこともありますし、不適応な状況になると抑うつ状態や精神病状態になる、強迫が強まるなど、反応性に精神的不調を来すことはありますが、その精神障害が発達障害に「二次」的に併存したといえるケースは、ほとんどないのではないかと思います。

自閉スペクトラム症とてんかんの合併については、共通の生物学的基盤が想定されているのは古くから知られていますが、双極性障害をはじめ多くの精神障害とも共通の基盤がある可能性のほうが高いといえましょう。併存する精神障害を適切に診断し、これらに対する治療を行うことが、その人の生活の質の向上やよりよい適応につながることになります。

しかし、発達障害に伴う二次的な障害がないわけではありません。それは、発達障害とともに生き、育ちゆく過程のなかで経験する心のトラブルです。発達障害の子どものなかには、家族や担任の先生など、周囲の大人に信頼感を抱けない、同世代の子どもに対して安心感を持てず、周囲への警戒感が持続する子どももいます。自分に自信が持てなかったり、好きだと思えなかったりという子もいます。

家庭環境、仲間関係、学校の状況などは千差万別で、それぞれにはそれぞれの事情がありますから、どれも理想通りとはいかず、人は皆、自分の置かれた環境の中で生きていくほかはありません。そうしたとき、その子のどこかのチャンネルに、自分が尊重され、訴えに真摯に耳を傾けられ、ともに悩んでくれるような、そういう場所が必要であれば、心の傷付きが最小限になるでしょう。それは家庭でも、学校でも、友人でも、カウンセリングでも、医療でも、福祉的支援でもよいわけですが、世の中にどこかそんなチャンネルがある、そのチャンネルの一つが医療であると考えています。

 

発達障害(岡田 俊 先生)の連載記事

発達障害をはじめチック(トゥレット症候群)の治療にも詳しく、子どもの成長やそれぞれの特徴に合わせた診療を行っている。また、教育機関などへの情報提供活動も積極的に行っている。

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