インタビュー

発達障害と保健管理センターの支援課題

発達障害と保健管理センターの支援課題
小田原 俊成 先生

横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長

小田原 俊成 先生

この記事の最終更新は2016年01月18日です。

近年、「大人の発達障害」という言葉が注目を集めています。大学生においても、発達障害が原因で不登校となってしまう学生は一定数存在し、それらの学生をどのように支援し、卒業・就職支援するかが課題となっています。発達障害の定義を踏まえ、今後彼らにどのような支援をしていくことが求められているのか、その課題について横浜市立大学保健管理センター センター長の小田原俊成先生にお話頂きました。

現在、学校保健の領域でもトピックスになっている発達障害ですが、これは2005年の「発達障害支援法」の施行をきっかけに知られるようになりました。

成人の発達障害を診察できる医師が少ないことや治療が難しいこともあり、きちんと診断治療を受けられない方もいる反面、安易なレッテルを貼られ、不利益を被る方もいるように感じます。診断に必要な症状を把握するには、幼少期からの対人関係や生活歴をきちんと確認しなくてはなりません。

子どもの頃に落ち着きがなくても、大人になれば自然と落ち着く方はいくらでもいます。現在、「発達障害」は自閉スペクトラム症ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などと診断される方が該当します。ASDは言語性コミュニケーション障害や社会的相互交渉の障害と興味の限局の存在が特徴的で、ADHDは不注意や落ち着きのなさといった症状が目立ちます。

(参考記事:『大人の発達障害の種類とその症状・特徴―自閉症スペクトラムとADHD、LD』

そもそも、人の能力はすべて一緒というわけではありません。誰もが得意な分野と不得意な分野を持っています。その得意・不得意の差が極端になり、その結果として学業や生活面に支障を来している方が発達障害なのです。発達の偏りをその方が持つ特性と捉え、どのようなことが不得手なのかを把握し、具体的な対応法について一緒に検討していくような支援が理想です。発達に偏りのある方は、程度に差はありますが、コミュニケーションの取り方や対人関係に悩んでいます。しかし、本人が発達の偏りによる困り感を自覚できないケースの方が多いように感じます。

そういう中で、適応障害うつ病など二次性の精神障害を併発することがあります。事例化すれば介入できますが、そうなる前に対応できることがいいのはいうまでもありません。入学後の手続きのミスが多かったり、実験や就職活動がうまくいかないなどの問題がある場合、周囲が本人に声かけして、センターに相談に来所していただく働きかけも重要と考えています。

横浜市立大学でも2016年度より、発達の問題を健診でスクリーニングしたり、オリエンテーションにコンテンツとして入れていく方針です。

また、発達の問題に関して自覚がある学生は、心理検査などを踏まえ、その学生に合ったキャリア支援を行っていきたいと考えています。その際には、個々の進路相談にも乗れれば理想的です。

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