インタビュー

大学生の不登校への対応の変化

大学生の不登校への対応の変化
小田原 俊成 先生

横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長

小田原 俊成 先生

この記事の最終更新は2016年01月17日です。

不登校というと小・中学生を想定する方が多いかもしれませんが、実は大学に入ってから不登校となる方も存在します。その原因は様々ですが、心理的な問題が大きく関与している方も少なくありません。大学が不登校に関してどう対応していくべきなのか、横浜市立大学保健管理センター(以下、センター)センター長の小田原俊成先生にお話し頂きました。

学生本人が不登校に対して何らかの問題意識を持ってセンターに来所するケースもありますが、突然学校に来なくなり、連絡が取れなくなるケースも少なからず存在します。そういった学生への対応が現在問題となっています。

これまでは、学生が突然来なくなった場合、学生課から直接本人に連絡を行い、休学の意思表示を示したらその手続きを行い、次年度まで特別なフォローアップをすることはありませんでした。そして、それ自体が特に問題となっていたわけでもありません。

学生が登校しなくなった場合、高校までは担任が本人や家族と連絡を取り、自宅訪問などをするわけですが、大学でも同じことを行う必要が出てきていると感じています。不登校の背景を明らかにし、環境や心理面のサポートをすることにより、登校につなげることができる学生もいるのです。

経済的問題や個人的な悩みを抱えているために不登校となった学生には、教職員やセンター職員が連携して支援にあたる体制が、大学にも求められる時代になっています。

単純に比較はできませんが、近年、人と相談したり、コミュニケーションが上手な学生が増えているように感じています。その一方で、うまく他者に相談できずに不登校になってしまう学生が一定数いることもわかっており、今後の課題ともいえます。しかしセンター設立後、後者のような孤立しやすい学生に対して周りの学生や教職員が気づいて手を差し伸べ、センター職員と連携を取っていこうとする意識が浸透してきたように思います。

不登校の原因は様々です。発達特性によるコミュニケーションの問題、親元を離れて生活が不規則になった結果生じた睡眠覚醒リズム障害、お酒など嗜好品の問題、精神疾患を発症したケースなど、多様な原因があります。これらの原因に対して、一律に「こうすればいい」という対応はありません。一番大事なことは、その人の背景を理解し、個別に対応することです。

学生自身が何に困っているのか理解できていない場合も多いので、そうしたケースでは、情報を整理した上で面談に臨む必要があります。加えて、大学生では経済的な問題も存在します。不登校は精神の問題ととらえられがちですが、お金の問題があれば、当然学生は不安になり、バイト優先の生活にならざるを得ません。奨学金利用などを含め、キャンパス相談では心理士が対応を行い、関連部署と連携しつつ支援を進めていきます。

心身の健康は体だけではなく心の問題も関わってきますが、それが心の「病気」か否かは別問題です。環境の変化や就職活動時など、情緒的不安定になることは正常な心理反応として起こりうることでもあります。私たちは、そういうところも踏まえて適宜サポートしていくことが大事だと考えています。

 

*事例

欠席学生に対し、教員、学務が個別対応を行い、学生同士のピアサポート(詳細は『横浜市立大学の学生支援 キャンパス相談やピアサポートの活動とは』)でも情報を得た。それからキャンパス相談につなげる。

●友だちや先輩・後輩のメンタルヘルスも気にかける

●見て見ぬふりをしない・気になったら声を掛ける

●相談に乗り、相談を勧めよう

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