インタビュー

学校保健と保健管理センターの役割

学校保健と保健管理センターの役割
小田原 俊成 先生

横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長

小田原 俊成 先生

この記事の最終更新は2016年01月16日です。

日本の若者の死因第一位は自殺ともいわれ、若者のメンタルヘルスは現在非常に注目されている課題となっています。思春期から青年期に移り変わり、中学・高校という守られた環境から大学へステージを進めた大学生は、非常に多感で自由であり、それに伴うケア体制を築いておくことも重要なことといえます。今回は、横浜市立大学保健管理センター センター長の小田原俊成先生に、学校保健の定義と横浜市立大学における保健管理センターの役割についてお話頂きました。

学校保健とは、学校施設において、学生および児童・生徒の健康を保ち育てていくように様々な施策を推進し、教育活動に必要な健康・安全への対策や、学生の健康保持増進を図るための能力育成を目標としているものです。

健康に対する意識が高まると同時に、健康本来の定義である「心身共に健康であること」の“心”の部分に関心が向けられ、“体”だけでなくメンタルヘルスの重要性も指摘されるようになってきました。人格の涵養を行う思春期・青年期の学生にとって、心身の健康はとても大切な事柄です。近年では文部科学省が中心となり、国を挙げて学生の保健活動に取り組んでいます。

横浜市立大学における保健管理の役目は、大学生を中心に教員・職員の健康増進を図り、学生が勉強していくうえで必要な環境や健康管理をしていくという点にあります。そして、保健管理センター(以下、センター)はそのためのサポート部署ともいえます。具体的には心身の不調への対応や疾病予防のために活動しています。

通常、入学した学生に対しては、健康診断をまず受けていただくことが一般的です。どこの大学でも身体的な健康診断は行われていますが、心の健康診断はあまり一般的ではありません。

横浜市立大学では、オリエンテーションをするにあたり保護者の方にも来てもらい、親子別々に説明を行います。入学時オリエンテーションという形を取ってはいますが、その内容は学生の健康管理のポイントや、学校感染症、そして心の病気などが中心となります。横浜市立大学を含め、様々な大学で少しずつ心の健康診断、つまりメンタルヘルススクリーニングというものをやっているところが増えてきているようです。

ここでの内容は心身に関するSF-8という健康関連尺度を用いたスクリーニング検査であり、心の健康に関する部分を聞いているのが特徴です。

(※SF-8…iHope International株式会社により提供されている健康関連QOL尺度測定項目)

本学の健康診断では、SF-8に加え自殺に関する項目や抑うつに関する項目を設けており、この検査を入学後すぐに行っています。なお、自殺に関する項目に該当した学生(自殺の恐れがある学生)は緊急対応者とし、直接連絡を取るようにします。

2012年にこの制度を導入して以降、自殺を考える学生に対し、少しずつですが支援ができるようになってきた手ごたえを感じます。

前項では大学入学時点で学生および保護者の方に健康管理の重要性を説くことを述べましたが、私が精神科医ということもあり、横浜市立大学では特に心の健康を強調しています。

「健康」に対する意識は、学生の場合稀薄であるように思います。社会人と同様、毎年の健康診断が義務付けられてはいるものの、学生は若くて大きな病気の問題も成人に比べると多くないため、健康増進に対する動機付けが少ないのです。

しかし、地方からやってきた学生が一人暮らしをはじめると、今まで実家では見えなかった様々な問題が出てきます。代表的なものとして、生活のリズム障害や飲酒が挙げられます。高校までは親に起こされていた学生が夜間のアルバイトや遊びで朝起きれなくなったり、サークルや部活動を通じて飲酒習慣が身について、授業に出れなくなったりするというものです。

薬物依存については国が対策を呼びかけ、文科省からパンフレットも出ていますが、「ダメ、絶対。」(標語)だけでは防ぐことはできません。(違法)薬物がダメなことは分かっていても、「孤立」「淋しさ」「物事がうまくいかない苛立たしさ」など、些細なことが手を染めるきっかけになってしまうこともあるのです。重要なことは家族、友人あるいは教職員など、気軽に相談できる人間関係を構築することであり、センターではキャンパス相談と称して、臨床心理士が大学生活に関するよろず相談を行っています。

このように、センターでは、学生・教職員を対象としたさまざまな講演、研修、セミナーを通じ、健康増進や疾病予防の取り組みを行っています。

 

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