こうもうしょう

咬耗症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

咬耗(こうもう)が病的に進んだ状態を指します。歯質の主成分はリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトであり、エナメル質の97%、象牙質の70%を占めています。歯質の表層を構成しているエナメル質は生体では最も硬度の高い組織で水晶と同程度の硬さがあります。

象牙質はエナメル質に比べると有機質の組成率が高く軟らかいですが、それでもガラスやオパールなどと同程度の硬さがあります。そのように硬い組織であっても、海岸で見られるシーグラスと同じように長い年月をかけて他の物質とぶつかり合うことで削れ、すり減っていきます。

具体的には毎日の咀嚼(そしゃく)や歯ぎしり、歯磨きなどにより歯は損耗します。咬耗は特に長年かけ上下の歯がかみ合って歯質が欠損することをいいます。歯磨きなど歯同士の接触以外で歯がすり減ることは摩耗(まもう)と呼び区別されます。

咬耗は歯と歯が接触する部位であればどこでも生じます。生理的な範囲の咬耗であれば、損耗した分だけ歯が萌出(歯がはえること)したり、移動したりすることで補われ咬合に大きな悪影響は及ぼしません。

咬耗の進むスピードは万人に一様ではなく、咬合の状態や歯質の形成状態、食物の嗜好、歯ぎしりの有無などで変わってきます。八重歯のようにかみ合うことのない歯は咬耗が起きず、萌出時の形態が保たれます。

原因

咬耗自体は生理的なものであり、歯と歯が接触する限りは徐々に進みますが、咬耗がより進みやすくなる原因はいくつかあります。

(1)一つ目には食事習慣です。長い時間食物を噛む、硬い食物を好んで食べる、噛む力が強すぎる、といったことにより咬耗しやすくなります。

(2)二つ目には食事時以外に噛みしめる習慣です。歯ぎしりや歯のくいしばりが該当します。スポーツ選手においてもパフォーマンス時に強く噛みしめることが多いと咬耗の原因となります。

(3)三つ目は歯自体の耐久力不足です。歯質の多くは歯が萌出するまでに形成されているのですが、その過程で形成不全や石灰化の障害があると硬度が落ちてしまい、よりすり減りやすい歯質となります。

また、噛み合わせも重要で、切端咬合(せったんこうごう)交叉咬合(こうさこうごう)などの咬合(かみ合わせ)異常があると咬耗しやすくなります。抜歯により歯の本数が減ると残存歯が分担する咬合力が増え咬耗もより進みます。

症状

咬耗は前歯部では切縁(前歯の先端のこと)から、臼歯部では咬合面から始まり、長期にわたり少しずつ進むことが多いため自覚症状がないことが多いです。

咬耗がエナメル質から象牙質に達すると冷水痛など知覚過敏を生じる場合があります。咬耗された歯質は滑沢(かったく)(なめらかでつやがあること)な性状となりますが象牙質が露出した部分には色素が沈着したり虫歯を合併したりすることにより褐色に変色することがあります。

重度に咬耗が進むと歯が破折したり、歯毎の咬合力負担の増大により歯槽骨(歯を支える顎骨)の水平的な吸収(歯槽骨が歯の根に水平に溶けること)が起きたりすることがあります。

また、咬合高径(歯と歯が噛み合ったときの上下の顎の距離)が低くなり、補綴物(義歯やかぶせ物)が入るスペースが確保できなくなったり、審美的にいわゆる老人様の顔貌になったりします。咀嚼筋の筋痛や顎関節痛が起こることや、咬耗により鋭利になった歯牙で口腔粘膜を損傷することがあります。

検査・診断

咬耗症は、歯のすり減った状態を肉眼的に視診することで診断できます。虫歯との鑑別が必要になる症例ではX線診断を行います。歯ぎしりなどの原因で咬耗の進行が早い場合には、定期的にX線撮影や診断用模型を作製することで咬耗や歯槽骨吸収の進行状況を確認できます。
 

治療

咬耗症の治療は咬耗の原因と進行具合により変わります。症状のない初期や生理的な範囲の咬耗は経過観察されることが多いです。咬耗が進み知覚過敏や虫歯の合併、歯牙の破折などがあればそれぞれに応じた治療を行います。

かぶせ物や義歯などの補綴治療により、咬耗した歯質を人工的に回復させることができますが咬合高径の変更には慎重な診査を要します。歯ぎしりなどの習慣がある場合にはマウスピースを使用したり、普段の生活でなるべく噛みしめないように注意したりすることで状況を改善させます。
 

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