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きゅうしんけいがさいぼうしゅ

嗅神経芽細胞腫

最終更新日:
2020年05月21日
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2020/05/21
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概要

嗅神経芽細胞腫とは、鼻の奥の“嗅上皮(臭いを感知するセンサーがある組織)”から発生する悪性腫瘍(しゅよう)のことです。非常に珍しい病気で、1年間に新たに発症する患者は100万人中1人未満とされています。

嗅神経芽細胞腫は比較的ゆっくり進行し、急激に大きくなったり症状が現れ始めたりすることはありません。しかし、腫瘍は少しずつ大きくなり、鼻づまりや嗅覚障害などの症状を引き起こします。また、発生した部位によっては症状がほとんど現れず発見が遅れるケースや治療が難しいケースもあり、他部位に転移したり、脳を覆う“硬膜”などにまで腫瘍が広がったりすることがあります。

また、この病気は若い世代から高齢者まで幅広い世代に発症する可能性があり、20歳代と60歳代に発症ピークがあるとされています。

原因

嗅神経芽細胞腫とは、鼻の奥に存在する嗅上皮の細胞が異常増殖することによって発症します。しかし、現在のところ、嗅上皮の細胞に異常が生じるメカニズムについては明確には解明されていません。

症状

嗅神経芽細胞腫は発症したとしても早期段階ではほとんど症状がありません。また、進行スピードが遅いため、症状が現れるようになるまでに時間がかかるとされています。

しかし、徐々に腫瘍が大きくなると原因がはっきりしない鼻づまりに悩まされるようになります。また、腫瘍の組織はもろいため、鼻をかんだり鼻の中が乾燥したりするなど些細な刺激によって出血を起こし、鼻血が出やすくなるのも特徴のひとつです。

そして、さらに腫瘍が大きくなるとにおいを感知する機能が損なわれて嗅覚障害を引き起こすほか、鼻の内部と近い脳内や目にも広がると頭痛や眼球運動障害、視力障害などが生じるようになります。

検査・診断

嗅神経芽細胞腫が疑われるときは次のような検査が行われます。

画像検査

腫瘍の大きさ、位置、周囲の臓器や組織への影響を調べるための検査です。

一般的にはCT検査やMRI検査が行われますが、特に造影剤(血管を描出しやすくする薬)を注射しながら画像撮影を行う“造影CT検査”や“造影MRI検査”は腫瘍の進展範囲や転移の有無の把握に有用とされています。

鼻内視鏡検査

先端が曲がる細いスコープを鼻の穴から挿入し、鼻の内部を観察する検査です。腫瘍の状態や広がりなどを鮮明に観察することができるため、鼻の中に何らかの病変があると疑われるときに広く行われています。

病理検査

嗅神経芽細胞腫の確定診断のために必要な検査です。

検査では、腫瘍の組織の一部を採取し、顕微鏡での詳しい観察が行われます。嗅神経芽細胞腫の場合は鼻腔スコープで観察できる範囲に腫瘍ができていることが多いため、鼻内視鏡検査と同時に行うのが一般的です。

治療

嗅神経芽細胞腫の治療は基本的には、手術によって腫瘍を切除し、再発を予防するための放射線療法を行います。手術の方法は腫瘍が発生した部位によって異なりますが、近年では体への負担を最小限に抑えた鼻内視鏡を用いての手術も多く行われています。その一方で、脳内にまで腫瘍が広がっているような場合には頭蓋骨の一部を切除して脳を露出させ、腫瘍を切除する“開頭手術”を行わなければならないことも少なくありません。

また、手術を希望されない場合や全身状態が悪く手術ができない場合は、粒子線治療を行う場合がありますが、失明や晩期の毒性などに留意する必要があります。手術による切除が困難な部位に浸潤した場合や手術前にすでに他臓器に転移している場合などは、手術と放射線療法による治療を行わず、抗がん剤を用いることもあります。その場合、一般的にはシスプラチンを中心とする薬物療法(シスプラチン+エトポシドなど)が選択されます。効果が認められれば、局所の制御を目的として、薬物療法後に手術や放射線治療を行うことがあります。

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