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山梨県立中央病院における大腸がん治療の特徴と診療体制

山梨県立中央病院における大腸がん治療の特徴と診療体制
渡邊 英樹 先生

山梨県立中央病院 外科 副部長

渡邊 英樹 先生

目次
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大腸がんは日本人に多いがんの1つで、高齢化などを背景に患者数は増加傾向にあります。一方、診断技術や手術方法、薬物療法などは年々進歩しており、患者さん一人ひとりの病状や生活背景に応じた治療を選択できる時代になってきました。

山梨県の都道府県がん診療連携拠点病院である山梨県立中央病院では、消化器内科・外科をはじめ、多職種が連携しながら、患者さん一人ひとりに適した大腸がん治療を行っています。山梨県立中央病院 外科 医長の渡邊 英樹(わたなべ ひでき)先生に、同院の大腸がん診療の特徴や治療に対する考え方についてお話を伺いました。

日々の診療の中で最も変化を実感しているのは高齢の患者さんが増えていることです。私が医師になった十数年前は、80代や90代の患者さんに手術を行うことは一般的ではなかったように感じます。しかし現在は、そうした高齢の方々の手術を担当することも珍しくありません。以前は年齢を理由に手術が難しいと判断されたケースでも、現在では治療の対象となることが増えてきました。

その背景には医療技術の進歩があります。従来の開腹手術に加え、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)やロボット支援下手術といった低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)が普及したことで、体への負担を軽減できるようになりました。必ずしも年齢のみを理由に治療を諦める必要はなく、患者さんの状態に応じた治療を選択できる時代になっています。

近年、大腸がんの手術では腹腔鏡下手術が標準的な術式として広く行われるようになり、ロボット支援下手術も治療の選択肢として普及してきました。当院でも大腸がんでは腹腔鏡下手術の割合が増加しており、ロボット支援下手術も積極的に導入しています。

ここで大切なのは、あくまでも手術の方法はそれぞれの患者さんに適したものを選択するべきであるという点です。腹腔鏡下手術やロボット支援下手術には傷が小さい、術後の痛みが少ない、腸の動きの回復が早いといったメリットがあります。一方、がんの進行度や患者さんの状態によっては、開腹手術を選択したほうが安全かつ短時間に手術を行える場合もあります。

そのため、一概にどの術式がすぐれているというわけではありません。患者さんにとって本当に負担の少ない治療とは何か、その答えは一人ひとり異なります。当院では、先々の治療まで見据え、それぞれの術式のメリットとデメリットを踏まえながら、患者さんによりよい治療を提案しています。

大腸がんは、早期の発見であれば内視鏡治療や手術で治癒が期待できる病気です。一方、進行した状態で発見された場合や再発・転移を伴う場合には、手術だけではなく、化学療法や放射線治療などを組み合わせた「集学的治療」が必要になります。

当院では、外科のほか、消化器内科、放射線治療科などのさまざまな診療科が連携し、患者さん一人ひとりに適した治療方針を検討します。治療は複雑で長期間に及ぶこともありますが、速やかに各科の医師が相談しあえる体制が整っています。たとえば、他院から進行した大腸がんが疑われる患者さんのご紹介が消化器内科医にあった場合、大腸内視鏡検査や病理検査を経て診断確定までは約1~2週間を要します。しかし、患者さんの状態が不安定で迅速な治療が必要と判断されれば、確定診断を待たずに内科から外科へ情報共有がなされます。想定される治療法の検討を始め、治療開始までの期間が最小限になるよう取り組んでいます。また、化学療法や放射線治療では皮膚トラブルなどの副作用が生じることがあります。その際には皮膚科をはじめ各診療科が迅速に対応し、患者さんが安心して治療を継続できるようサポートしています。

私たちが日々の診療で大切にしているのは、「過去20年の患者さんから得られた知見を、これから治療を受ける患者さんに還元していく」ということです。
当院では2006年から院内がん登録を行っており、全てのがん患者さんの診断や治療内容、その後の予後に関するデータを蓄積しています。大腸がんについても、これまでの症例の治療成績を長期的に振り返ることができる環境が整っています。
ロボット手術や集学的治療といった新たな治療を積極的に取り入れることはもちろん重要ですが、自分たちが行っている治療が、実際に患者さんのその後にどうつながっているのかを振り返ることも同じくらい大切だと考えています。日々患者さんを治療する一方で、症例を積み重ね、データで振り返り、治療を改善し、次の患者さんへつなげる。この循環を続けられることが、当院の大腸外科の大きな強みだと考えています。

大腸がんの手術では、病状によって人工肛門(じんこうこうもん)(ストーマ)の造設が必要になることがあります。患者さんにとって「ストーマになるかもしれない」という不安は非常に大きく、外来でも多くの方から質問をいただきます。もちろん、私たちは可能な限りストーマを回避できる手術を目指します。しかし、切除した腸をつなぎ合わせた部分(吻合部)がしっかり治ることを優先したほうがよい場合や、患者さんにとってストーマ造設がより安全な選択となる場合には、その理由を丁寧に説明したうえで治療方針を決定します。

ストーマを造設する手術が決まった場合、看護師などで構成されるWOC(皮膚・排泄ケア)チームが中心となって、患者さんへのサポートを行います。手術の前にはストーマケアの経験を積んだ認定看護師*などが患者さんにオリエンテーションを実施します。ストーマとはどのようなものか、ストーマができてからの生活はどうなるのか、装具の管理方法などについて丁寧に説明します。

どうしてもネガティブなイメージが先行してしまいがちですが、造設する意味やケア方法などを学んでいただくことで、ストーマを受け入れ安心して退院いただけるようサポートしています。なお、当院ではストーマ外来も設けており、装具の使い方や皮膚トラブルなどについて、必要な場合は退院後もWOCチームへ相談できる体制を整えています。

*認定看護師:ここでは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会認定 皮膚・排泄ケア認定看護師のこと。

大腸がんの治療は、手術だけで終わるものではありません。術後の生活や仕事への復帰、再発予防、定期的な経過観察など長く続いていきます。だからこそ私は患者さんとの対話を何よりも大切にしています。患者さんご自身が納得したうえで治療を受けていただくことが一番大事だと考えているからです。

大腸がんと診断されると、「本当に治るのか」「人工肛門になるのではないか」「これまでどおりの生活に戻れるだろうか」といったさまざまな不安が生じると思います。診察では「こんなことを聞いてもいいのかな」と遠慮される患者さんも少なくありませんが、どうか遠慮なくお尋ねいただければと思います。患者さんが不安に感じていることや疑問に思っていることは、とても大切な情報です。些細なことでも全く構いませんので、相談を重ねながら治療を進めていきましょう。

▼山梨県立中央病院を初めて受診される方へ

初めて当院を受診される方には、スムーズな診療のため事前のご予約をお願いしております。予約がない場合でも診察はお受けいただけますが、待ち時間が長くなってしまうことがあります。また、紹介状をお持ちの方の診療を優先しておりますので、初診の際には、ぜひかかりつけの医療機関などで発行された当院宛の紹介状をご持参いただきますようお願いいたします。

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