強迫性障害では、診断が治療法の選択に大きく影響します。特にチック関連は、強迫性障害の標準治療であるSSRIが効きにくいということがわかっているので、これがあれば、それを考慮し治療を行うことが非常に重要です。今回は強迫性障害の診断について、兵庫医科大学病院 精神科神経科 主任教授の松永寿人先生にお話しいただきました。
強迫性障害の診断には、WHOが定める診断基準のICD-10やアメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSM-IVやDSM-5が用いられています。また、本人が感じている症状の分類や重症度の評価として、Y-BOCS(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale)が用いられます。正確な診断は、治療法選択や予後判定の基準として非常に重要です。
DSM-5という精神疾患の診断・統計マニュアルが2013年に改定され、現在運用されています。
記事1「強迫性障害とは-QOL(生活の質)に影響する重大疾病」でも述べましたが、強迫性障害に対する考え方は変わってきており、それを象徴するのが、DSM-IVからDSM-5への改定です。DSM-5では強迫性障害を不安障害カテゴリーから分離し、「とらわれ」、あるいは「繰り返し行為」を特徴とする疾患群、すなわち「強迫症および関連症群」カテゴリーに分類しました。
かつての強迫性障害では、不安障害の症状を中心とする病気であると考えられており、観念や不安増大に関わる認知的プロセスを介して強迫行為を起こすというものが一般的でした。しかし近年(DSM-5では)、このような「認知的タイプ」とは異なる「運動性タイプ」についても考える必要が出てきました。「運動性タイプ」は、「厳密に適用しなければならないルールに従って、駆り立てられるように行なわれる」というものです。観念や不安などの認知的プロセスはもたず、「まさにぴったり感(just right feeling)」を求める中で、繰り返し行為が生じています。
たとえば、泥棒が入るかもしれないという不安から鍵の確認を繰り返すという行為は「認知的タイプ」ですが、「運動性 タイプ」はカチャという鍵が閉まる感覚が納得できるまで繰り返すというものです。他にも、「運動性 タイプ」は「スリッパを左右対称に並べないと気が済まない」「冷蔵庫を締める際にピッタリ感を求める」など、「そうしたいという」前駆衝動や「まさにぴったり感(just right feeling)」を求めて起こります。強迫関連症群もこの2つのタイプに分けられます。
すなわち、身体醜形障害や溜め込み障害は不安やとらわれから行動を起こす「認知的タイプ」で、抜毛障害や皮膚むしり障害は、そうせずにはいられないという前駆衝動が行動のきっかけとなる「運動性 タイプ」といえるでしょう。
このような強迫性障害(強迫症および関連症群)の2つのタイプは治療内容に大きく影響するため、正確に診断する必要があります。
記事1「強迫性障害とは-QOL(生活の質)に影響する重大疾病」で「チック関連」について述べました。トウレット障害など重症チックをもつ方の約30〜40%は強迫性障害を合併するといわれており、強迫性障害とチックには強い関連があります。DSM-5では、チックの経験をもつ強迫性障害を特定する必要があるとされました。後述しますが、チック関連には標準治療であるSSRIが効きにくいため、非定型抗精神病薬による増強療法を行う必要があるからです。つまり、チック関連の強迫性障害と診断できれば、SSRIへの抵抗性や、必要な治療方法がある程度予測できるのです。
繰り返しになりますが、「認知的タイプ」と「運動性タイプ」やチック関連の強迫性障害などを見分けること、つまり強迫性障害の異種性を把握し、正確に診断することで的確な治療が行いやすくなるのです。
兵庫医科大学 精神科神経科学講座 主任教授
松永 寿人 先生の所属医療機関
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