記事1『思春期早発症とは―早期に初経(生理)や発毛、声変わりが生じる』では思春期早発症の原因と症状についてお伝えしました。問診に加え各種ホルモン検査や画像診断などを行い、思春期早発症と診断され、必要があれば治療を開始します。思春期早発症のメインの治療はホルモン療法です。引き続き、思春期早発症の診断・検査と治療法について群馬大学副学長・理事で産婦人科医でもいらっしゃる峯岸 敬先生にお話を伺いました。
思春期早発症とは、通常よりも早く思春期が訪れて心身の変化の生じる疾患です。発症率は同性同年齢のおよそ2〜3%といわれており、男女比では1対1.5〜5で、女児のほうが男児の3〜5倍多いといわれています。
原因が不明のものから、脳腫瘍など脳の中枢の疾患により発症するもの、卵巣・精巣といった末梢の疾患により発症するものまであります。いずれの場合も性ホルモン(男性はテストステロン、女性はエストロゲン)が早期から過剰に分泌されることで症状を呈します。
<男児の主な症状>
<女児の主な症状>
思春期早発症の概要や原因、症状については記事1『思春期早発症とは―早期に初経(生理)や発毛、声変わりが生じる』をご覧ください。
思春期早発症は一見、人よりも早く心身が成熟するだけのもののように思えますが、弊害もあります。背景に脳腫瘍など時に命にかかわることもある重篤な疾患が原因である場合や、早期に体の成長が止まることによる低身長、周りよりも早く二次性徴が現れて注目を浴びる、からかわれるなどの社会的ストレスなどがその一例です。
ですから、思春期早発症が疑われる場合はまずは医療機関を受診してください。まずはかかりつけの小児科、あるいは産婦人科がよいでしょう。小児科と産婦人科には、内分泌専門医という思春期早発症の治療を専門としている医師がいます。
次に、思春期早発症が疑われた場合に実施される検査について説明します。
思春期早発症では、まずは問診を行います。症状がいつごろ現れたか、どのような症状かなどを尋ねます。思春期早発症は発症の年齢がひとつの診断基準になるため、問診は重要です。
次に陰毛の発育や女児であれば乳房の発育状況、男児であれば精巣の発育状況などを観察します。身長と体重の発育曲線による成長率、Tanner分類を参考にして実施します。
思春期早発症では骨年齢の測定も重要です。なぜなら、骨年齢は過去のエストロゲンレベルが反映されているためです。また、治療を開始した際にどれだけ治療効果が出ているかを判断する指標にもなります。
下垂体から分泌されるLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)やエストロゲン、テストステロンなどのホルモン値を測定します。さらに必要であれば、GnRH負荷テスト、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)値測定、甲状腺機能検査、性ステロイドホルモンの測定、副腎皮質ホルモンの測定などを実施します。
脳や精巣・卵巣の疾患が原因で思春期早発症を起こしている可能性があるため、脳に腫瘍などの異常がないかを調べるMRIや、卵巣の状態をみる腹部の超音波(エコー)検査を実施します。
まれに遺伝性疾患が起因となって思春期早発症が起きることもあるため、遺伝子検査を実施する場合もあります。
思春期早発症で実施される検査は、子どもの体への影響はありません。特にMRI検査は脳腫瘍など重篤な疾患がないか調べるために重要です。しかしMRIは短時間ではありますが閉鎖された場所で検査を受け、機械から大きな音がするため怖がる子どももいます。検査時には医師や診療放射線技師から説明がありますから、これらのことを心得ておくとよいでしょう。
また、超音波検査では尿が溜まっていると検査部位がみやすくなります。
思春期早発症では下垂体から出るLH(黄体ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が精巣・卵巣に働きかけることによって症状が出ます。検査の結果でこれらのホルモン値が高ければ、このLHとFSHの分泌を抑えるために、LHやFSHの分泌を促すGnRHというホルモンのアナログ(GnRHに似た作用を持ち、長時間作用する特殊な製剤)を注射してGnRHの受容体の機能を低下させます。そして本来体内から分泌されるGnRHホルモンが受容体と結合しないようにすることで、本来のGnRHが作用しないようにします。
脳の中枢部の腫瘍や奇形、精巣・卵巣の腫瘍が原因で思春期早発症となっている場合には、原因となる腫瘍に対する治療を実施します。
腫瘍により手術や放射線療法、化学療法が適応となります。
しかし、なかには良性の腫瘍で、腫瘍の増大・転移がみられないものもあります。その際には手術などのリスクを考慮し、腫瘍に対する積極的な治療を行わず、思春期早発症に対するホルモン療法のみを実施することもあります。
ホルモン療法はGnRHアナログで受容体をブロックし、体内から分泌されるGnRHが結合しないようにして思春期の進行を止めるものです。そのため、治療を行うと、治療を中止しても体が周りの子ようにきちんと発育しないのではないかとの心配の声も時折聞かれます。しかしながらホルモン療法を中止すれば早期にもとの状態に戻りますから、心配はいりません。ホルモン療法が原因で将来の不妊につながる心配もありません。
ホルモン療法によって周りの子の思春期の程度に応じて進行を止め、周りの子と体の成熟に差がほとんどなくなったときに治療を中止することで、年齢と体の成熟の均衡がとれます。また、治療中でもいつも通りに日常生活を送ることができます。
しかしながら、女児の場合は長期にホルモン療法を実施することで骨がもろくなってしまう(骨粗しょう症)リスクがあります。骨の強度を保つエストロゲンが、治療中は分泌されなくなるためです。そのため、骨粗しょう症を回避するために女児では一定期間治療を行った後、適切な時期に治療を中止します。
思春期早発症は早期に治療を開始することで、低身長や子どもの社会的ストレスの回避、時に背景にある重篤な疾患の早期治療につながります。ですから、思春期早発症は早期治療が大切です。
特に体の変化によって子どもが感じる困惑や、周囲の子どもとの関係の変化は大人が思う以上に大きいものであると考えたほうがよいでしょう。学校の友人など、家庭外で体の変化について指摘されて子どもがストレスを感じることもありますから、家庭内では決して体の変化について指摘しないようにしましょう。
また、この治療は定期的な通院が必要です。学校の先生にこの疾患や治療のため通院が必要なことなどを理解してもらえるよう、まずは保護者の方がしっかりと思春期早発症について理解を深めていくことが大切でしょう。
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思春期早期症など
ご相談:息子(12歳:中学1年)の身長について:①息子の身長はこれ以上伸びるか?②伸びた場合、最終的に何センチくらいになる見込みがあるのか?③思春期、成長期の期間を延ばすために有効な治療はあるのか(思春期早発症?など)について教えてください。本などでは成長期は2年ほど続くとありますが、まだ1年?だけのような気もしていて期待していたのですが… 【息子の身長の状況】小さい時から大きいほうで順調に伸びていましたが、最近2~3カ月は身長が全く伸びていない様子です。私の小学校の友人に小学6年の時と最終身長が変わらなかったのを見ており、心配しております。 *4月→9月→1月で定期測定をしているようです()は体重です 1年:122.2(24.9)→125.5(27.5)→127.9(29.2) 2年:130.4(31.5)→133.0(34.3)→134.0(35.8)+8.2 3年:135.7(37.1)→139.4(40.2)→141.3(41.2)+5.3 4年:142.2(41.1)→144.0(41.8)→145.7(42.0)+6.5 5年:147.8(45.9)→152.3(48.5)→156.6(49.0)+5.6 6年:159.1(52.5)→161.7(57.1)→164.2(62.5)+12.3 中1年:166(64) **父親:171センチ、母親:168センチ **中1年は、小学校6年1月の測定から2センチ伸びてますが、3月以降はは伸びていないと思います **おちんちんの毛もおそらく小学校5年生には生えていましたし(気が付いたのがそれくらいのでもしかしたらもう少し早いのかもしれません)現在はかなり濃くなってきていています。すね毛も濃くなってきています。わき毛もすこし生えてきています(わき毛もまだ完全に濃くなっているわけではありませんが) **ストレス等の影響は、中学受験をしたので追い込み時期12月~2月初旬までは体調不良・睡眠不足・ストレスがあったと思います。受験後も寝る時間がやや遅く11時になることもたまにあるようです**アトピーや喘息は5歳まで軽度の症状がありました
特発性思春期早発症について
4年生の中ごろぐらいに子供からおちんちんに2本毛が生えてきたと言われたが、成長には早い子があり、そういうものかと思っていた。でも、おちんちんも次第に大きくなってきており、声変わりも始まり流石に旦那も少し早いのではと気にし出していた頃、春休みに入り、成績表の整理をしていた時に、健康表を見て身長の1年の伸びを確認したところ4年生の1年間で11㎝伸びており、流石にちょっとおかしいのではないかと思い始めたところネットなどで思春期早発症という言葉がひっかかり、居ても立っても居られず病院を調べて小児科で内分泌科のある先生のところへ4月15日に連れて行きました。 私は1番下の子が入院中であったため旦那に行ってもらったのですが、調べてもらった結果、精巣の大きさ、声変わり、身長の伸びなどやはり第二次性徴の症状であることがわかりました。 骨のレントゲンでは、今の年齢よりも3歳進んでおり14歳の年齢でした。 男の子は女の子に比べ、病的な方向があるとネットで調べていたので、直ちにMRIの予約をしてもらい23日に検査をしてもらいました。 MRIと腹部のエコーは両方とも異常もなく、ほっと胸をなでおろしています。 診断の結果、特発性思春期早発症だということでした。 GnRHをうって30分おきに採血を5本分とってもらい見て頂く検査もMRIの日に同時にしてもらいホルモンがどれぐらい出ているかの検査になるのかそれもしてもらいましたが、そちらに関しては結果待ちになります。(そのような検査だったと思います) 親の身長は母親157㎝、父親163㎝ 本人は今は146.5㎝ 本人はあまりわかってはないですが、このままほっておくと身長は早く止まるということもあり、やはり治療は始めるべきなのか、始めたら160㎝超えるのか、始めなくても超えるのか。選択肢に悩んでいます。 先生は今ならまだ治療の可能性はあるが、半年後とかいう猶予はないとのことでしたが、採血の結果で話をするということでした。 ちなみに私(母親)は初潮が5年生から始まっており、遺伝的な因果関係などもあるのでしょうか? あと、視力がゲームなど目を酷使しているからかどうかわかりませんが、はるやすみは0.6と0.8という診断結果だったのですが、23日に一緒に調べていただいたところ0.4と0.6になっていました。 こちらは因果関係などありますか?
息子が思春期早発症か心配しています。
息子が10歳を過ぎてから急激に身長が伸び11歳までに陰毛、声変わりがありました。 私が171センチ、妻が148センチとあまり大きくはないので、急激に伸びた事が心配で、いろいろ調べたところ思春期早発症に当てはまり脳等に以上がないか気になっております。思春期早発症は、ネットでは9歳未満で身長が小さいのに上記症状がある子が対象の様ですが、11歳までに陰毛、声変わりがあったので、心配しております。 ちなみに息子は現在12歳で、身長は162センチです。 どうかご回答よろしくお願いいたします。
思春期早発症
8歳になったばかりの娘です。 幼稚園の年中から 胸が少しでていたので 病院で 何度か負荷試験をし 今年8歳の時に負荷試験の結果 思春期早発症となりました。 骨年齢も2歳ほど進んでいます。 先生は今、治療して変わることは 胸の膨らみと生理を遅らせること 位で治療は、してもしなくてもいいと 言いました。 女の子の場合、今 治療をすると身長も思ったより 伸びないと聞きました。 治療をした方がいいのか メリット、デメリットなど 知りたいです。 よろしくお願いします。
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