概要
急性外陰潰瘍とは、比較的急な経過で外陰部(大陰唇・小陰唇・会陰など)に生じた、潰瘍のことです。潰瘍とは、組織に傷ができて皮膚の表面がくずれ、内側の比較的深いところ、つまり皮下組織にまで傷が到達してしまった状態のことをいいます。
外陰部はもともと微生物の多い環境であるため、小さな傷などをきっかけに微生物が入り込んで重症化しやすい部位といえます。そのため、潰瘍をはじめとする皮膚病変を形成しやすいです。また一部の病気では、皮膚の表面に傷がなくても外陰潰瘍を引き起こすこともあります。
原因
主に、ベーチェット病、リップシュッツ潰瘍、外陰ヘルペス、淋菌感染症、外陰癌などが原因となること多いです。
ベーチェット病
ベーチェット病は、口腔内アフタ、結節性紅斑、網膜ぶどう膜炎、外陰潰瘍などの皮膚症状を特徴とする炎症性疾患です。ベーチェット病自体の原因は、まだ解明されていません。ベーチェット病に伴う外陰潰瘍の場合、非常に短期間で外陰潰瘍が生じるとは限らず、むしろ長期間かけて徐々に発生してくることが多いとされています。
リップシュッツ潰瘍
リップシュッツ潰瘍は、この病気自体が別名として急性外陰潰瘍と呼ばれることもあります。比較的若い年代の女性に突然発症して、外陰潰瘍や周辺のリンパ節の腫れが出現するほか、口腔内アフタを伴うこともあるため、ベーチェット病の類似疾患と考える研究者もいます。
外陰ヘルペス
外陰ヘルペスは、性器にヘルペスウイルスが感染すると生じる性器ヘルペスのうち、外陰部に発生したものを指します。初めての感染では、性的接触後2〜10日の潜伏期間を経て、外陰部に広く多数の潰瘍や水疱を形成することが多いです。このヘルペス感染は治療しても再発率が高いですが、症状は再発時のほうが軽くなる傾向にあります。
症状
外陰部に強い痛みが現れます。鏡などで外陰部を見ると、表面の皮膚がえぐれたようになっていることがわかります。なお潰瘍や付随する症状の有無と程度は、原因となっている病気によって異なります。
急性外陰潰瘍では必ず出血を伴わけではありませんが、患部を掻いたり下着で擦ったりしてしまうと、表面から少し出血することもあります。また性器ヘルペスによる急性外陰潰瘍では、潰瘍と水疱が同時に出現することが多いです。
また急性外陰潰瘍では、鼠径部(太ももの付け根)のリンパ節が腫れて、触ると痛みを感じたり熱く感じたりすることもあります。
検査・診断
外陰潰瘍では視診で潰瘍の状態を確認するほか、何が潰瘍を引き起こしたのか調べるため問診や検査を実施します。たとえば、ベーチェット病を疑えば全身の診察に加えて採血検査などの精密検査、ヘルペス感染をはじめとする感染症が考えられるようであれば採血検査をするほか、潰瘍部分の表面を拭って検体を採取して微生物検査を実施、原因微生物を特定します。
治療
原因疾患によって根本的な治療は異なります。潰瘍部分に痛み止めや抗炎症作用を持つ軟膏などを塗ることもありますが、原因疾患が他にあるのであれば、軟膏だけの治療では完治が難しい場合が多く、きちんとした原因と治療への理解が重要となります。
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