概要
結節性紅斑とは皮膚に赤い斑点(紅斑)が生じるとともに、発熱や体のだるさ、関節痛などが生じる状態をいいます。紅斑は主に膝下~くるぶし(下腿)に生じやすく、足底に生じることもあります。押すと痛みがあるほか、皮膚の下に硬いしこり(硬結)を触れることが一般的です。紅斑は左右対称に生じることもあれば、非対称に生じることもあります。
結節性紅斑はあらゆる年齢の方に起こる可能性がありますが、特に20~40歳代の女性に発症しやすいといわれています。
原因
結節性紅斑は何らかの原因により、皮下脂肪組織が炎症を起こすことによって生じると考えられています。結節性紅斑の半数以上は“特発性”といって、発症の原因が分からないものが占めます。原因の分かっている結節性紅斑は“続発性”と呼ばれ、病気や使用している薬の影響で発症します。
続発性結節性紅斑の原因になり得る病気として主に挙げられるのは、細菌やウイルスなどの感染症や炎症性腸疾患、自己免疫性疾患などです。なお、病気を患っていなくても妊娠を機に発症する方もいます。
結節性紅斑の原因となり得る感染症
- 溶連菌、結核菌、マイコプラズマなどの感染症
- ヘルペスウイルス、EBウイルスなどのウイルス性感染症
- 原虫や真菌(カビ)による感染症 など
結節性紅斑の原因となり得る炎症性疾患
結節性紅斑の原因となり得る悪性腫瘍
結節性紅斑の原因となり得る治療薬
症状
結節性紅斑の主な症状は、膝下など下肢に好発する紅斑です。紅斑の大きさは2〜5cm程度で、複数個生じることもあり、左右対称に生じる場合と、そうでない場合があります。押すと痛みを感じるほか、皮膚の下に硬いしこりを触れます。重症化すると、紅斑がほかの部位にも生じるようになります。
そのほか、発熱や体のだるさ、関節痛などを伴うこともあります。症状は一般的に数週間で徐々に治っていき、紅斑の生じた部分に色素沈着が起こることもあります。また、原因となる病気などによっては再発を繰り返す場合もあります。
検査・診断
前述のとおり、結節性紅斑はさまざまな病気や治療薬などを原因に発症することがあります。そのため、まずは原因となる病気や治療薬の服用などの有無を確認するため、問診や身体所見の診察を行います。また、似たような症状を現す皮膚の病気は複数あるため、それらと見分けるための検査も大切です。診断にあたっては、主に以下のような検査を行います。
皮膚生検
炎症を起こしている脂肪組織を含めて皮膚を採取し、顕微鏡で観察します。炎症の性質や場所を明らかにすることで、症状を引き起こしている病気をある程度絞り込むことが可能です。
血液検査
血液検査では白血球の数や炎症が起きたときに上昇しやすいCRPの数値などを確認します。また、血液から溶連菌感染症に関与する“抗ストレプトリジンO抗体”の有無を確認することもあります。
感染症検査
感染症が疑われる場合には、咽頭ぬぐい液や便などを採取・培養して、感染している細菌の有無を確認します。また、さまざまなウイルスに対する抗体価を測定し、原因となる可能性のあるウイルス感染の有無を検索します。性感染症が疑われる場合は、それに関する検査も行います。
胸部X線検査
肺の状態や肺門リンパ節の状態を観察するためにX線による画像検査を行うことがあります。
その他の検査
想定される原因の病気によって、追加で検査が行われることもあります。たとえば、サルコイドーシスを疑う場合には、より詳しい血液検査やシンチグラフィ検査(腫瘍や臓器の機能を調べるための画像検査)などが検討されるほか、炎症性腸疾患が疑われる場合には大腸カメラのような消化管内視鏡検査も検討されます。
治療
原因の明らかな続発性結節性紅斑の場合、まずは原因となる病気などに対する治療を行います。たとえば、細菌感染症が原因であれば抗菌薬の投与を行い、炎症性腸疾患が関与している場合にはその治療を行います。結節性紅斑の症状に対する治療としては基本的に安静が選択され、痛みが強い場合は薬物療法を行うのが一般的です。
安静
結節性紅斑が膝下にあって比較的軽症の場合や、妊娠中などで使用できる薬がない場合などには、いったん薬物療法を行わず、安静にして経過を観察します。この間はなるべく激しい運動を避け、横になって過ごしましょう。このとき下肢を冷却したり、横になるときは下肢の下に枕などを当てて拳上しておいたりするとよいといわれています。
結節性紅斑に対する薬物療法
重症度によっても異なるものの、痛みや発熱がある場合は非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)を用いた治療が一般的です。何らかの理由で非ステロイド消炎鎮痛薬の使用ができない場合や、非ステロイド消炎鎮痛薬では十分な効果が得られない場合などには、ステロイドなどの薬も検討されます。
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