だいどうみゃくえんしょうこうぐん

大動脈炎症候群

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

大動脈炎症候群とは、主に大動脈などの太い血管に炎症が生じ、血管の狭窄や閉塞が起こることで、手足が疲れやすくなったり、脳・心臓・腎臓といった生命活動に重要な臓器に障害を与えたりする病気です。若い女性、また東洋人にも多いことが知られています。

大動脈炎症候群には、難病指定を受けている「高安動脈炎」や梅毒などの感染症による大型血管炎も含んでいます。以前は厚生労働省でも、高安動脈炎を大動脈炎症候群として難病に指定していましたが、2013年の難病法の制定により病名改訂が行われ、大動脈炎症候群の名称は高安動脈炎と変更されました。現在、指定難病に認定されているのは高安動脈炎です。以上のような背景も踏まえ、以下では高安動脈炎(大動脈炎症候群)としています。

高安動脈炎(大動脈炎症候群)は、大動脈並びにその分岐動脈(腕頭動脈、鎖骨か動脈、椎骨動脈、腹腔動脈、腎動脈)、冠動脈、肺動脈に炎症が生じることから発症します。全身には大動脈のような大きな血管もあれば、さらに小さい血管もありますが、特に大きな血管を中心に炎症が生じる疾患です。

動脈が炎症を起こすと、動脈が狭くなったり最終的には閉塞したりするようになります。動脈が狭くなったり閉塞したりすると、その先に位置する臓器に血液がうまく運ばれなくなり、臓器が活動するにあたり必要な酸素や栄養が充分供給されないようになってしまいます(「虚血(きょけつ)」と呼びます)。また、炎症により血管そのものが弱くなり、血圧の影響を受けることから血管が広がることもあります(拡張(かくちょう)と呼びます)。心臓から大動脈に移り変わる部位が拡張すると、大動脈弁輪拡大に続発して大動脈弁閉鎖不全を発症することもあります。

原因

遺伝的な要素(たとえば、HLA-B52やHLA-B39など)や環境的な要因(たとえば感染症)が関係していることが推察されていますが、なぜ炎症が生じてしまうのかについては完全には明らかになっていません。

症状

一般的に初期には、

など

風邪をひいたようなはっきりしない症状から始まることが多いです。その後、虚血や拡張に関連した症状が出現するようになり、障害を受けた動脈に応じて症状の現れ方も異なります。たとえば、脳に血液を送るのに重要な働きを示す「腕頭動脈」が障害を受けると、脳の虚血症状として、めまい頭痛、失神などを生じることになります。また、腕への血液が障害を受けると、手のしびれや痛みを生じることもあります。その他、冠状動脈が影響を受けると心臓虚血が引き起こされることになるため、息切れや動悸、胸痛、不整脈などを生じます。

拡張に関連した症状としては、たとえば大動脈弁周囲の大動脈が拡張してしまうことから、大動脈弁閉鎖不全症が発症することがあります。これにより心不全症状が発症することもありえます。さらには、突然死のリスクを伴う大動脈瘤大動脈解離といった病気を続発することもあります。

検査・診断

高安動脈炎(大動脈炎症候群)を確定診断するためには画像診断が重要となります。具体的には、CT、MRI、MRAなどで、大動脈の狭窄や拡張の有無、壁の厚さの程度を確認し、血管の形の変化から診断します。

また、PET-CTにて炎症部位を同定することもされています。また、血液検査では、全身のどこかに炎症が生じているかどうかを判定するために、血沈、CRPなどを確認します。その他、一部HLA型で高安動脈炎(大動脈炎症候群)のリスクが高まることも知られていますが、確定診断には何よりも画像検査が重要になります。

治療

高安動脈炎(大動脈炎症候群)の治療は、ステロイド療法がもっとも代表的であり効果的であることが知られています。ステロイドは効果が高い反面、副作用も看過できない面もありますので、病状が抑制できる程度まで容量を減少しつつステロイドの離脱を図ります。

ステロイドの効果が高くない場合や副作用が懸念される場合は、免疫抑制剤(メソトレキセートやチオプリン、シクロスポリンなど)も検討されます。高安動脈炎(大動脈炎症候群)では、血管が閉塞もしくは拡張をすることから、臓器障害を生じることもある病気です。各種血管病変により続発する臓器障害を起こしている場合には、外科的な治療介入も検討されます。たとえば、大動脈弁閉鎖不全症では弁置換術が考慮されることがありますし、動脈瘤に対しては人工血管置換術が検討されることもあります。

また血管狭窄により、脳虚血や腎臓の障害などが生じることもあります。こうした狭窄性病変に対しては、ステント留置やバイパス手術が施行されることもあります。

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