概要
慢性特発性蕁麻疹とは、症状が6週間以上持続する慢性蕁麻疹のうち、原因が特定できないものを指します。
蕁麻疹は皮膚に赤く盛り上がる膨疹が現れ、時間の経過とともに消失する状態です。蕁麻疹では、アレルギー反応や機械的刺激によって皮膚の中に存在する肥満細胞から“ヒスタミン”という物質が分泌されます。ヒスタミンは毛細血管を拡張させて血管内を流れる血漿成分*を皮内へと漏出させるため、毛細血管の血流量が増えて皮膚が赤く膨らみます。また、ヒスタミンはかゆみを引き起こす神経を刺激するため、かゆみを伴います。
蕁麻疹は原因や病態により、急性蕁麻疹または慢性蕁麻疹に分類され、急性蕁麻疹のうち数%~10%前後は、慢性蕁麻疹に移行するといわれています。
蕁麻疹は一般的にアレルギー反応によるものと考えられていますが、感染や運動、暑さ・寒さ、圧迫などさまざまな要因で生じる可能性がありますが、全体の約7割は原因が特定できない慢性特発性蕁麻疹に分類されます。
蕁麻疹が生じた場合は症状の誘因を避けることが重要ですが、慢性特発性蕁麻疹では原因を特定できないため、症状に対する対症療法を中心に行います。
*血漿:血液の液体成分。約90%が水分で構成され、アルブミンや免疫グロブリン、血液凝固因子などのタンパク質、ブドウ糖、脂質などが含まれる。
原因
一般的に、蕁麻疹の原因は食べ物などに対するアレルギー反応と考えられますが、実際にアレルギーが関与して発症するものは全体の5%程度といわれます。そのほかの原因は細菌やウイルス感染、汗、暑さや寒さ、圧迫、日光、振動などの刺激、ストレスや疲労など多岐にわたり、多くは原因が特定できない特発性の蕁麻疹に分類されます。
最近の研究で、慢性特発性蕁麻疹患者の一部でIgEまたは高親和性IgE受容体に対する自己抗体が存在することが分かっています。
症状
皮膚に膨疹が現れ、多くの場合はかゆみを伴います。また、症状は夕方から夜間にかけて現れたり悪化したりする傾向にあります。
通常、蕁麻疹は時間の経過とともにあとを残さず自然に消えますが、慢性特発性蕁麻疹では6週間以上続きます。
検査・診断
蕁麻疹は問診や視診などで現れている症状や考えられる誘因を確認します。患者によってはプリックテストなどの皮膚テストを用いるほか、自己抗体の検査を研究的に行うこともあります。
特別な誘因がなく、皮膚のかゆみや膨疹などの症状が6週間以上持続する場合は慢性特発性蕁麻疹と診断されます。
治療
一般的に蕁麻疹は症状を引き起こす誘因の回避が重要ですが、慢性特発性蕁麻疹では原因を特定できないため、主に症状に対する対症療法(薬物療法)を行います。
薬物療法
薬物療法では、第一選択として第二世代抗ヒスタミン薬(内服薬)が用いられます。抗ヒスタミン薬で症状が抑えられた場合は、症状が現れなくなるまで予防的に内服を続けます。その後は症状の程度に応じて内服量を徐々に減らすものの、長期間の内服が必要になる傾向にあります。
抗ヒスタミン薬で症状を抑えられなかった場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬*やH2受容体拮抗薬*などを併用することもあります。これらによっても効果が得られない場合は免疫抑制剤シクロスポリン*や抗IgE抗体治療薬であるオマリズマブを検討します。臨床的にはシクロスポリンは皮膚の炎症やかゆみなどに関係するサイトカインという物質の発生を低下させるはたらきが、オマリズマブはヒスタミンの分泌を抑える作用が期待されます。また、最近の研究ではサイトカインのはたらきを直接抑制する薬の開発も進められ、保険適用で使用できる薬剤も登場しています。
*ロイコトリエン受容体拮抗薬・H2受容体拮抗薬・シクロスポリンは蕁麻疹に対して保険適用外。
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