ぼうじょうけっかんしゅ

房状血管腫

同義語
TA:tufted angioma
監修:

概要

房状血管腫は、血管内皮細胞の異常な増殖によって生じる局所性の血管性腫瘍であり、臨床的には悪性と良性の中間的性質(中間悪性血管腫)を持つとされています。発症頻度は高くなく、多くは乳幼児期に発症します。

房状血管腫は病変部に痛みや多汗(汗が多くなること)を伴うことが多く、徐々に大きくなるのが特徴です。発症後は多くが進行性で治療を要しますが、最終的に自然に進行が止まることもあります。しかし多くは病変部の皮膚が硬くなるなどして完全には消失しません。

治療方法は、病変の広がりや発症した部位によって異なりますが、一般的には手術、レーザー治療、薬物療法が行われます。カサバッハ・メリット現象(後述)が改善しない場合に放射線治療が選択されることもあります。

原因

房状血管腫の明確な発症メカニズムは現在のところ解明されていません。GNA14遺伝子の関与を指摘する報告もあり、房状血管腫の多くは乳幼児期に発症するものの、発症に遺伝子変異が関係しているかは明らかになっていないのが現状です。

症状

房状血管腫は、血管内皮細胞から発生する中間悪性血管腫です。発症する部位は腕や足、体幹、顔、頭、首などが多いとされていますが、まれに頭の中や骨などに発症することがあります。

房状血管腫の60~70%が5歳未満でみられ、そのうち25%が1歳以前で発症すると報告されています。病変部に痛み、多毛、多汗などの症状を伴いやすいのが特徴です。病変は小さな赤い斑点状の発疹ほっしんから始まり、徐々に大きくなるケースが多いとされていますが、約10%の症例では自然にほぼ消失することが分かっています。

また、房状血管腫では、病変部で出血を止めるための血小板や凝固因子が大量に消費され、全身が出血しやすい状態になる“カサバッハ・メリット現象”を引き起こすことがあります。このカサバッハ・メリット現象は、出血や多臓器不全などを引き起こし、命に関わる危険性があるため、注意が必要です。

検査・診断

房状血管腫が疑われる場合には、次のような検査が行われます。

病理検査

房状血管腫の診断には、病変部の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する病理検査が行われます。見た目だけではほかの血管腫との区別が難しいため、診断のために病理検査が必要となります。

画像検査

病変の広がりや内部血流の状態を確認するため、また他の病気を除外するために超音波検査やMRI検査などを行うことがあります。

血液検査

上述したように房状血管腫は血小板や凝固因子の低下により全身が出血しやすくなるカサバッハ・メリット現象を発症する場合があります。本疾患が疑われる場合には血液検査を行って、血小板数や凝固因子の濃度などの評価を行います。

治療

房状血管腫で見た目の問題や痛みなどの症状が軽度で病変の増大がみられない場合には、経過観察が選択されることもあります。一方で、病変が大きくなっていくような場合やカサバッハ・メリット現象がある場合には速やかに治療が必要となります。

治療方法は病変の大きさや位置などによって異なり、手術やレーザー治療による切除が選択肢として挙げられます。カサバッハ・メリット現象のリスクがある場合には、シロリムス、ステロイド、ビンクリスチン、インターフェロンなどの投与や不足した血小板の補充といった薬物療法が必要となります。放射線治療は有効であることが多いですが、一般的には推奨されず他の治療法が無効な難治性例に限って検討されることがあります。

最終更新日:
2025年07月17日
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2025/07/17
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