生まれたばかりの赤ちゃんは免疫の面で比較的無防備な状態にあるため、感染症にかかることは非常に危険です。新生児の感染症にはどのようなものがあり、またこれを防ぐためには何が行われているのでしょうか。東京大学医学部附属病院小児・新生児集中治療部教授・部長の高橋尚人先生にうかがいました。
新生児敗血症は血液の中に本来いないはずの細菌が増殖してしまう全身感染症です。その原因と発症時期によって早発型と遅発型に分かれます。
生後72時間以内に発症するものを早発型敗血症といいます。母体から胎盤を経由して、あるいは出産時に産道から感染します。
原因となる菌はB群溶血性連鎖(ようけつせいれんさ)球菌(GBS)が多く、その他に大腸菌・腸球菌・インフルエンザ桿菌(かんきん)・クレブシエラ菌・リステリア菌などがあります。
生後72時間を過ぎてから発症するものを遅発型敗血症といいます。生まれた後で環境内に存在する細菌などが原因となって発症し、早発型に比べてゆっくりと症状が進みます。NICUに入院中の場合はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの耐性菌によって引き起こされることも多いです。
第一に生まれたばかりの赤ちゃんは免疫機能が未熟なため、病気のもととなる微生物に対する防御機構が弱く、感染した場合に重症化しやすいということがあります。そのほかにも、NICU特有の環境要因など、いくつかのリスクがあります
ご両親に気をつけていただくことは、関連記事「子どもがNICUに入ったときの注意点」でもお伝えしたとおり、感染症の原因となるものをNICUに持ち込まないことです。しかし、本来NICUに入っている赤ちゃんは健康な赤ちゃんよりも抵抗力がなく、よりむずかしい状況にあるので、感染を100%防ぐことはできません。
NICUの中で起こる感染症については、医師やスタッフの懸命の努力により、従来よりもその頻度がかなり少なくなってきています。また、新生児特有の感染症の病態・原因やその仕組みなどについても研究が進んでおり、いったん感染しても大事に至らないうちに対応することができるようになってきています。
たとえばB群溶血性連鎖(ようけつせいれんさ)球菌(GBS)に対しては、妊娠中のお母さんに抗菌薬の投与をすることで予防ができます。MRSAの場合も今は効果のある薬剤があり、その他の原因菌についてもそれぞれに応じた治療ができますので、必要以上に心配することはありません。
東京大学医学部附属病院 小児・新生児集中治療部教授・部長
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