しんせいじはいけつしょう

新生児敗血症

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概要

新生児敗血症とは、新生児期に発症する全身症状を伴う非常に重い感染症のひとつです。敗血症そのものは年齢にかかわらず発症する病気ですが、新生児はもともと感染症に対する抵抗力が弱いため、年長の子どもよりも敗血症のリスクが高いと考えられています。また、新生児は、敗血症の原因となる病原体もほかの年齢層と異なります。新生児敗血症で頻度の多いB群溶血性連鎖球菌や、大腸菌は、分娩(ぶんべん)前後にお母さんから赤ちゃんへもらうことや、周囲からもらうことがあります。

新生児敗血症は、致死率や合併症を残すこともあり、早期に診断と治療をすることが望ましい病気です。

原因

新生児敗血症は、血液中に病原体が侵入し、炎症によっておきる種々の臓器の障害を伴う病態です。病原体は、細菌のことが多いですが、一部のウイルスでも生じます。

新生児敗血症は、発症する時期に応じて早発型と遅発型に分類されています。

早発型敗血症

早発型敗血症は、出生後72時間以内に発症する敗血症です。原因菌として多いのは、B群溶血性連鎖球菌や大腸菌などで、出産の前後にお母さんから赤ちゃんが細菌をもらって保菌し、多くの場合は病気になりませんが、そのなかでまれに患児に感染症を引き起こします。特にB群溶血性連鎖球菌は(ちつ)に存在する常在菌ですが、早発型敗血症として急速に進行し重篤な症状をきたすことがあります。特に体重が小さく生まれた赤ちゃんや早産の赤ちゃんはリスクが高いです。

まれですが、リステリア菌と呼ばれる細菌も早発型敗血症の原因菌であり、妊娠中から胎盤を介して赤ちゃんに感染することがあります。その他の要因としては、子宮内での感染や前期破水といって子宮内と外部が交通してしまうことも、新生児の感染リスクとなります。

遅発型敗血症

生後72時間以降に発症する敗血症を遅発型敗血症と呼びます。お母さんからもらうことが多い早発型敗血症の原因菌もみられますが、この時期になると周囲の人がもっている菌やウイルス、環境にいる菌も敗血症の原因となりえます。特にNICUに入院するような体重が小さい赤ちゃん、早産の赤ちゃん、基礎疾患のある赤ちゃんなどでは、感染を起こすことがあります。

原因となる細菌には、黄色ブドウ球菌や緑菌などがあります。特に黄色ブドウ球菌の耐性菌であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、ときどき問題になります。皮膚(ひふ)が成熟していないためにバリア機能が弱かったり、点滴用のカテーテルなどの医療機器を使用したり、元々の感染症に対する抵抗力も充分でなかったりするためです。

ウイルスでは、エンテロウイルス、パレコーウイルス、単純ヒトヘルペスウイルスで敗血症をきたすことがあります。ウイルスは、お母さんや家族、医療従事者などから感染することが多いです。

症状

新生児敗血症でみられる症状は、発熱もしくは低体温、活気低下、意識障害、無呼吸もしくは多呼吸、呻吟(しんぎん)(呼吸をするときにうなるようになります)、鼻翼呼吸(びよくこきゅう)(鼻の孔を広げて呼吸するようになります)、陥没呼吸(肋骨や胸骨の間がへこむ呼吸をします)、頻脈や徐脈、末梢の冷感、血圧低下などがあります。また、腹部膨満(ぼうまん)黄疸(おうだん)なども認めることがあります。

新生児敗血症では全身症状が中心に生じることになりますが、病初期に特異的にそれとわかるものは多くはありません。臨床症状の時間的な変化を確認することも大切です。比較的、短時間で症状が進行してきた際にも、新生児敗血症が疑われることになります。

検査・診断

新生児敗血症の診断では、血液中の病原体を確認することが大切です。新生児敗血症では血液中に細菌やウイルスが侵入し、排除しようとして起きる体の反応から臓器の障害が発症します。そのため、血液を用いての細菌の培養検査、遺伝子検査や抗体でウイルス同定を行います。細菌の場合、菌の培養に成功すると、有効な抗生物質が何であるかを検索する「薬剤感受性検査」も行われます。薬剤感受性検査結果は、使用すべき抗生物質を選択する上で重要な情報になります。

そのほか、全身の臓器障害や末梢循環不全(まっしょうじゅんかんふぜん)を確認するための血液検査が行われます。血液検査では、白血球や血小板数の変化や、CRPといった炎症時に上昇する項目も検査します。新生児敗血症では、末梢循環不全の徴候として代謝性アシドーシスを生じることがあるため、血液ガス検査でこれを確認することがあります。また、血糖コントロールも不良になるため、血糖値を測定することもあります。

治療

新生児敗血症の治療の中心は、病原菌に対しての有効な抗生物質を投与することです。単純ヒトヘルペスウイルスに対しては、抗ウイルス薬を使います。新生児敗血症が診断された初期においては、原因となる病原体を検査にて同定できていないことがほとんどです。したがって、発症までの臨床経過などの情報をもとに、可能性の高い病原体を推定し、それに対して有効な薬を選択することになります。同時に適切な支持療法が重要で、必要に応じて、補液をしたり、昇圧剤を使用したり、人工呼吸器を使用したりします。

たとえば、早発型新生児敗血症であれば、B群溶血性連鎖球菌や大腸菌が原因菌として多いため、アンピシリンやゲンタマイシンといった薬剤を組み合わせて治療が開始されることが多いです。またNICUに入院中などでMRSAの関与が疑われる状況では、MRSA用の抗生物質が使用されます。培養検査にて原因となる菌と感受性が判明したら、より特異的で狙った細菌のみを標的とする薬へと変更します。

B群溶血性連鎖球菌はお母さんの腟内に常在することがある菌で、妊娠期間中にB群溶血性連鎖球菌を保有していないかを確認します。もしお母さんがB群溶血性連鎖球菌の保菌者である場合には、出産時にアンピシリンと呼ばれる抗生物質が予防的に使用されます。

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