そうざんじのひんけつ

早産児の貧血

同義語
未熟性による貧血,未熟児貧血
最終更新日:
2025年01月07日
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2025/01/07
更新しました
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概要

産児の貧血とは、早産による未熟性によって発症する貧血を指します。発症する時期と原因により“早期貧血”と“後期貧血”に分けられます。

私たちの血液中には、“ヘモグロビン”という酸素と強く結合して全身を循環し、さまざまな臓器や組織に酸素を運ぶタンパク質があります。胎児はエベレストの頂上とほぼ同じぐらい酸素が少ない環境にいるため、その環境に適応できるように、酸素と結びつきやすい“胎児ヘモグロビン”を全身に循環させることで生命を維持します。

出生後は肺呼吸で多くの酸素を取り込めるようになるため、血液中のヘモグロビンが成人ヘモグロビンへと切り替わり、胎児ヘモグロビンは減少します。さらに、成長の過程で血液を作る“エリスロポエチン”というホルモンの濃度が減少するため、出生後は一時的な貧血状態がみられます。

通常であれば、生後数か月程度で赤血球濃度は自然に上昇し、貧血は自然に改善します。しかし、早産児は出生時の体重が少ない分、通常よりも血液量が少なく、一方で体重増加の割合が大きいことから重度の貧血を招くことがあります(早期貧血)。また、早産児は母体から十分な鉄を供給される前に出生するため、血液を作る鉄が不足し、生後3か月以降にも貧血がみられることがあります(後期貧血)。

早産児の貧血では、貧血の程度に応じて脈拍数の増加や無呼吸発作、哺乳力(母乳を吸う力)の低下による体重増加不良などがみられることがあります。

治療は、エリスロポエチンの皮下注射や鉄剤を用いた薬物療法のほか、赤血球輸血が行われます。

原因

産児の貧血は、生後3か月までに発症する早期貧血と、生後3か月~12か月 の間に発症する後期貧血に分けられ、それぞれ原因が異なります。

早期貧血

産児は出生時の体重と血液量が少ない一方、体重増加の割合が大きいため貧血が進行しやすい状態です。さらに、ヘモグロビン濃度が低下した際に赤血球産生を促すホルモンのエリスロポエチンを作りにくく、作ってもすぐに代謝されて消えてしまいやすいことや、検査のために頻回な採血が必要なことも早期貧血の原因です。たった1mLの採血でも、1kgの赤ちゃんにとっての1mLは、40kgの大人にとっての約40mLの採血に相当します。1mLの採血が毎日のように続くとことは、40kgの大人が毎日40mL採血されるようなものです。

後期貧血

後期貧血は、赤血球を作る鉄の不足による“鉄欠乏性貧血”が原因です。通常、母体から胎児への鉄の供給は妊娠後期に行われます。しかし、早産児は母体から十分な鉄を受け取る前に出生するため、生後、赤血球の産生に必要な鉄が不足して貧血になることがあります。

症状

産児の貧血では、全身の組織に酸素を供給する機能が低下してさまざまな症状が現れます。元気がなくなったり哺乳力が低下して体重が増えにくくなったりするほか、心拍数の増加や一時的に呼吸が停止する無呼吸発作などを生じることがあります。

また、貧血になると酸素が供給されなくなるために成長障害を招くこともあります。

検査・診断

産児の貧血が疑われる場合は血液検査を行い、血清鉄やフェリチン、ヘモグロビン、赤血球数、ヘマトクリット、網状赤血球数などの値を確認します。そのほか、新生児貧血の原因となる溶血や遺伝性の病気の有無を確認するため、問診で血液型や家族歴などを聞くこともあります。

治療

産児の貧血では、状態に応じて薬物療法や赤血球輸血が行われます。

高度な貧血の場合には赤血球輸血が考慮されます。しかし、輸血による未知の感染症や拒否反応が起こる可能性も、非常に低いですが全くないとはいえません。また、未熟性による網膜症などのリスクと関連があるという報告もありますがまだはっきりしていません。

そのため、早産児に貧血の進行を認めた場合には、予防的に薬物療法が行われます。薬物療法では、シロップ状や顆粒状の鉄剤の内服のほか、赤血球を産生するエリスロポエチンを皮下注射で投与します。

薬物療法で改善がみられず、頻脈や多呼吸、無呼吸発作などの症状があったり、人工呼吸器の装着が必要になったりする場合は、赤血球輸血が行われることが多くなります。

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