すいほうせいかくまくしょう

水疱性角膜症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

水疱性角膜症とは、角膜内皮細胞数の機能低下により角膜内に水がたまり、本来は透明である角膜が白く濁った状態です。角膜は、組織学的には5層から成ります。一番内側に位置している組織が角膜内皮です。角膜内皮はデスメ膜という基底膜とともに、角膜実質組織と前房水との境に位置します。生体内では増殖しない組織で、損傷を受けると周辺部の細胞が拡大して損傷を補います。つまり、内皮細胞は障害されると細胞数は減少し増加することはありません。

細胞密度は、正常で2500-3000個/mm2です。内皮細胞の機能は、角膜の含水率を一定に維持することです。内皮細胞のポンプ機能とバリア機能が角膜の厚みを一定に調節しています。ポンプ機能とは、角膜実質から前房側への水輸送で、Na-K ATPaseがエネルギー源です。バリア機能とは、タイトジャンクションという構造が、前房水が角膜内に入らないようにする柵のことです。一般的に、角膜内皮細胞密度が、400個/mm2以下になると、ポンプ機能とバリア機能が低下し、角膜内に水がたまり、角膜が厚くなります。その状態が水疱性角膜症です。
 

原因

角膜内皮が障害される主な原因として、以下が考えられます。

  • 内眼手術
  • 急激な眼圧の上昇
  • 眼の外傷
  • 眼内の炎症
  • コンタクトレンズ
  • 先天性の疾患

症状

角膜内に水がたまり角膜に浮腫(ふしゅ)(むくみ)が生じます。角膜の透明性が低下してかすみを自覚したり、表面に水疱ができて水疱がはがれて眼の痛みを自覚したりします。

検査・診断

角膜内皮の検査法としては、以下が挙げられます。

  • 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査
  • スペキュラーマイクロスコープ
  • 角膜形状解析装置(スリット式、光干渉式)

細隙灯顕微鏡検査は、鏡面反射法で角膜内皮面からの反射光を利用して角膜内皮細胞の形状を観察します。スペキュラーマイクロスコープは、鏡面反射像を用いた生体顕微鏡で、原理は細隙灯顕微鏡と同じですが定量化(数値化)できることが利点です。具体的には、角膜内皮細胞密度のほか変動係数や角膜厚などが測定できます。角膜形状解析装置(スリット式、光干渉式)は、角膜厚の分布を疑似カラー表示してマップ化できます。正常の角膜は、中央が薄く(約0.5mm)、周辺が厚く(約0.7mm)なっていますが、水疱性角膜症になると正常な角膜厚分布が崩れます。角膜形状解析装置は、角膜浮腫の部位が限局的か全体的かを検査することができるので、治療法の選択にも有用です。
 

治療

痛みを和らげるために油性眼軟膏や治療用ソフトコンタクトレンズ装用をおこないます。浮腫が高度な場合は角膜移植手術を行います。目的は、減少した角膜内皮細胞の供給です。従来は全層角膜移植を行い、角膜全層を置換していました。近年は、水疱性角膜症のうち、角膜実質が透明な場合に限り角膜内皮移植を行います。角膜内皮移植は、正常部位をできる限り温存し、異常な層のみを置換する角膜パーツ移植です。早期の視機能回復と拒絶反応発症率が低いのが利点です。2018年現在の水疱性角膜症に対する再生医療のトピックスとして、提供された角膜由来の角膜内皮細胞を生体外で培養した“培養ヒト角膜内皮細胞”を前房内に注入する治験(治療の臨床試験)も行われています。
 

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