治療
治療は、病気の種類や症状、重症度に応じて選択されます。クリッペル・トレノネー症候群では、以下のような治療や処置が行われ、必要に応じて組み合わせて治療されます。重症例の場合、生涯にわたり継続して症状をコントロールしていくことになります。
保存療法
弾性ストッキングや着圧サポーターを用いて、血流やリンパ液の流れを促し、滞りを減らすための圧迫療法が行われます。痛みを緩和させ、血栓を防止することが期待できます。
装具の使用や矯正手術
左右の足の長さに差が生じて歩行に支障がある場合は、補装具(下肢補高装具など)の使用や外科的矯正手術が検討されます。外科的矯正手術には、成長中の骨を一時的に抑える方法(骨端線成長抑制術)や、骨をゆっくりと延長させる方法(骨延長術*)などがあります。
*骨延長術:人工的に骨を切り、骨の再生に合わせて少しずつ延長させる方法。長管骨(腿や脛、腕などの長い骨)の変形や、先天性の成長障害などに対して行われることがある。
外科的切除・レーザー療法
外科的切除は、メスを使って病変を切り取る方法です。患部の大きさや病変の部位などを考慮して選択されます。しかし、クリッペル・トレノネー症候群やパークス ウェーバー症候群などでは病状が広範囲に及ぶことが多く、完全な切除が困難なため部分切除にとどまることがあります。また、正常な組織も併せて切除せざるを得ない場合もあるため、病変の範囲や位置を考慮して手術を実施するかどうか判断します。レーザー療法は、レーザー光を用いて組織を破壊し皮膚病変を治療する方法です。
硬化療法
病変に注射針を刺し、硬化剤(OK-432、モノエタノールアミンオレイン酸塩、無水エタノールなど)と呼ばれる薬剤を注入する方法です。脈管を固めたり塞いだりする目的で行われます。切除術と比べると根治は難しいものの、病変がある部位の機能に影響をあたえる可能性が低く、体への負担が少ないため繰り返し行うことも可能です。なお、2025年5月現在はOK-432による治療のみ医療保険が適用されます。
薬物療法
痛みに対しては、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬が使用されます。出血に対しては止血薬、血栓の治療または予防を目的として抗凝固薬が使用される場合があります。
また、シロリムスという内服薬を混合型脈管奇形の患者に使用することで、病気の進行が抑えられ、症状が改善したとの報告があり、2024年に治療薬として承認されています。シロリムスは、PIK3CA遺伝子の異常によって起こる体内の伝達経路の過剰な活性化を抑える働きがあると考えられています。
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