さんごうつびょう

産後うつ病

最終更新日:
2020年05月21日
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2020/05/21
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概要

産後うつ病とは、出産後数か月以内に発生するうつ病です。定義としてはうつ病の亜型と分類されています。

多くの女性は、出産後の経過が正常な場合でも何らかの精神的な変調を経験します。ホルモンの急激な変化、出産そのものによるストレスや疲労、など女性が“母になる”変化を経験します。このため、約30%の女性は、出産後2日~5日ごろに、涙もろさや不安定な気分、抑うつ、イライラなどを経験しますが、多くの場合一過性で自然に軽快します。これは、マタニティブルーズと呼ばれており、生活や育児への支障はほとんどないか最小限です。ところが、抑うつ気分や過度の不安、興味または喜びの喪失、不眠、気力の減退などが2週間以上続く場合は、産後うつ病が示唆されます。

日本では出産を経験した女性の約10%が産後うつ病を発症するといわれており、決して珍しい病気ではありません。母子双方に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、妊娠~出産期に見逃してはならない病気のひとつとされています。

原因

産後うつ病は、必ずしも原因があるわけではありません。リスク要因としては、うつ病の既往、妊娠中のうつ症状や不安、パートナーや家族からのサポート不足、妊娠・出産に対する葛藤など、環境的な要因も大きいと考えられています。産後うつ病は、誰にでも起こりうる病気です。

症状

産後うつ病は産後2、3週間~3か月の間に発症しやすいとされています。“授乳がうまくいかず母親失格と思う”“周囲のサポートが乏しく疲労がたまり、睡眠不足が連続した”などの状況が重なり症状が出現する場合もあります。

症状は、寝ようと思っても眠れない、食欲がなくなり体重の減少がみられる、抑うつ気分、興味または喜びの喪失、集中力の低下、気力の減退、決断することが困難、などが見られます。ひどい場合は、消えてしまいたいと感じ、自殺念慮や自殺企図につながる場合があり、注意が必要です。赤ちゃんのお世話や家事ができなくなったり、自殺念慮が出現したりする場合は、ためらわずに精神科や心療内科などの専門科への相談や受診を検討し、治療を受けることが必要です。

検査・診断

産後うつ病の診断は、一般のうつ病の診断基準を用いて判断します。産後うつ病の一次スクリーニングとしては、“エジンバラ産後うつ病質問票”が多く使用されています。これは、10項目からなる自記式質問票で、海外でも多く使用され、日本語訳版が普及しています。公費負担で行われる産婦健診での必須スクリーニングとして利用されています。合計点9点以上がスクリーニング陽性ですが、産後うつ病の確定診断ではありません。

また、産後うつ病に似た症状は、甲状腺や脳下垂体機能の異常など産後に起こりやすい病気によって引き起こされることもあります。このため、症状の背景に別の身体的な病気が潜んでいないか血液検査やCT検査などの画像検査が行われることがあります。

治療

産後うつ病の治療は、薬物療法と精神療法が主体となります。母乳育児中の服薬については、服薬によるメリットや、母乳中や乳児への薬物の移行、母乳育児の負担など、総合的に判断して方針を決定します。母乳育児中の薬物療法への抵抗から精神科受診をためらう女性もいますが、母乳移行が少ないタイプの薬剤や、医師や臨床心理士によるカウンセリングなどの治療もあります。本人が受診の判断をできない場合、家族のすすめで受診につながることもあります。

近年、産後うつ病が一般的に周知されるようになりましたが、対策としては、妊娠中からの備えが大切です。ポイントは、“疲れすぎない育児”環境を作ること、疲れたら休める環境を作ることです。パートナーと家事や育児のシェアについてあらかじめ話し合っておくこと、親族による支援だけでなく外部サービスの利用も検討すること、出産後の女性が疲労を感じたら短時間でも安心して休めるように、パートナーが赤ちゃんの抱っこやおむつ替えなどの育児技術を知っておくことは、産後の疲労緩和策に有効です。

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