インタビュー

男性更年期障害との付き合いかた

男性更年期障害との付き合いかた
松田 公志 先生

関西医科大学附属病院 病院長、泌尿器科学講座 教授/評議員・理事

松田 公志 先生

この記事の最終更新は2016年03月22日です。

男性更年期障害の治療において難しいテーマの一つが、いつまでホルモン補充療法を続けるかを見極めることです。関西大学腎泌尿器外科学講座教授の松田公志先生は、治療を継続しながら患者さんとじっくり話し合うことによって治療方針を決めていらっしゃいます。

日本では注射によるホルモン補充療法以外に健康保険が認める男性ホルモン製剤はありません。薬局で市販の塗り薬を手に入れることはできますが、自分の判断だけでそうした市販薬を使うのはとても危険です。

例えば前立腺がんの患者さんの場合、意図的に男性ホルモンの値を下げ、それによって前立腺がんの勢いを弱める内分泌治療を行います。このために男性更年期症状が出ている方が、自身の判断で市販薬を使ってしまうとまた前立腺がんが進行してしまうことになりかねません。ですから、男性ホルモンの投与は必ず医師の診断のもとで行うようにしてください。

男性更年期障害の治療を行っていて突き当たる問題があります。それは、治療として男性ホルモンを打ち続けるかどうかということです。もともと正常だった方が加齢により男性ホルモンが少なくなり、男性更年期障害の症状が出てきたので男性ホルモンの注射を打ったら有効だったという理由で注射を打ち続ける場合を考えてみましょう(ただし先天性や後天性の明らかに病的な異常があり男性ホルモンが少ない方は別にして考えます)。

体の外から男性ホルモンを打ち続けると、脳はそもそも男性ホルモンを生成している睾丸に対し「働け」という指令を行わなくなります。では男性ホルモンの注射をやめるべきかというとこれも難しい判断です。そこはジレンマであり、解決法はありません。

そこで、私はホルモン補充療法を続ける半年ほどの間に患者さんとじっくり話をします。まずストレスを解消するよう勧めます。会社に仕事を少し減らしてもらう、休みの日はしっかり休むなど、なるべく休養を取り、リフレッシュしてもらうことが大切です。そうすると、中には治療をやめても、症状が出なくなる人もいます。

男性更年期障害で現れるいくつかの症状について、それが加齢による自然な衰えなのだと理解して、治療をやめられる方もおられます。以上のことも踏まえ、治療を継続するのか、やめるのか医師と相談し納得した上で判断してください。ただし、男性ホルモンが極端に低くなって明らかに病的な人はもちろん補充療法を続けなければなりません。

要は加齢に伴って変化する自分の心身の状態と、どう折り合いをつけられるかが重要です。私はそのような悩みを抱える患者さんをサポートし、男性更年期障害に関する啓蒙を続けていきたいと考えています。

 

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