概要
アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が沈着する病気のことを、アミロイドーシスといいますが、アミロイドの沈着は全身さまざまな部位に起こる可能性があります。このうち、皮膚にアミロイドの沈着をみる病気を、皮膚アミロイドーシスといいます。
皮膚に限局してアミロイドの沈着をみることがある一方、内臓臓器へのアミロイド沈着に随伴する形で皮膚に病変が出現することがあります。
皮膚にアミロイドが沈着すると、上下肢や腰回り、臀部などにかゆみを伴う見た目の変化が出現します。皮膚に限局するタイプの皮膚アミロイドーシスの場合は、治療は必須ではありません。整容的な観点からの治療や、かゆみなどの症状に対する対症療法が検討されます。
内臓臓器に症状が出現している場合には、アミロイドーシスを引き起こしている基礎疾患に対しての治療も求められます。
原因
アミロイドはタンパク質の一種ですが、液体に溶けにくい性質を有しています。そのため、人の体の中においてアミロイドが産生されると、さまざまな部位に蓄積する可能性があります。アミロイドには、人に健康被害をもたらすさまざまなタイプが存在することが知られています。皮膚アミロイドーシスは、アミロイドが皮膚に沈着する病気です。
アミロイドは心臓や腎臓、神経などの臓器にも沈着することがあり、全身各所にアミロイドがみられる病気のことを全身性アミロイドーシスといいます。皮膚アミロイドーシスは、全身性アミロイドーシスの一症状としてみられることもあります。全身性アミロイドーシスは、多発性骨髄腫や透析、慢性炎症疾患(関節リウマチなど)を原因として発症することがあります。
皮膚だけに限局するタイプの皮膚アミロイドーシスでは、アミロイド苔癬、斑状アミロイドーシスが代表的なものとして知られています。皮膚の表面には「表皮細胞」と呼ばれる細胞が存在していますが、アミロイド苔癬や斑状アミロイドーシスの発症には表皮細胞が深く関与しています。
表皮細胞はケラチンと呼ばれるタンパク質を持ちますが、表皮細胞が新陳代謝する過程においてケラチン由来のアミロイドが形成されることがあります。ケラチン由来のアミロイドが皮膚に沈着することを原因として、アミロイド苔癬や斑状アミロイドーシスは発症すると考えられています。
その他、家族性に皮膚アミロイドーシスが発症することもあります。
症状
皮膚に限局して発症した場合
皮膚において色素沈着や色調の変化、皮膚のドーム状の盛り上がりといった見た目の変化を来します。また、皮膚にかゆみを伴うことや水ぶくれを形成することもあります。好発部位としては背中や四肢、向こう脛などを例に挙げることができます。
全身性アミロイドーシスの一環として発症した場合
全身各臓器に由来する症状が出現します。動悸や息苦しさ、咳、痰、むくみ、手足のしびれや感覚障害など、全身性アミロイドーシスでみるようなさまざまな症状が出現する可能性があります。
検査・診断
皮膚アミロイドーシスの診断は、皮膚病変を詳細に観察、評価することからなされます。皮膚の症状から診断に迷う際には、皮膚の一部を採取して病理組織検査を行うことがあります。
全身性アミロイドーシスの一症状として発症していることもあるため、血液検査や尿検査、レントゲン写真、心エコー、心電図、骨髄検査などが適宜検討されます。
これら検査は、全身性アミロイドーシスの基礎疾患(多発性骨髄腫や関節リウマチなど)、臓器障害の程度(心機能、腎機能など)などを検討することを目的として行われます。
治療
皮膚だけに限局するタイプのアミロイドーシスでは、主に自覚症状と整容的な面からのアプローチがなされます。
皮膚アミロイドーシスではかゆみを伴うことがありますが、局所をかくことで症状が増悪します。そのため、かゆくてもできるだけかかないようにすることが大切です。かゆみの症状が強い場合には、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬を使用します。
皮膚アミロイドーシスが整容的に問題になる場合には、炭酸ガスレーザーなどの外科的治療を始めとした対応が検討されます。
全身性アミロイドーシスの一環として皮膚アミロイドーシスを発症している場合には、基礎疾患に対する治療に加えて、臓器障害に対する対症療法を行います。どういった治療方針をとるかは、臓器障害や原因疾患に応じて大きく異なります。
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