ひふはこうしょう

皮膚爬行症

同義語
皮膚幼虫移行症,クリーピング病
最終更新日:
2024年01月26日
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2024/01/26
更新しました
2017/04/25
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概要

皮膚爬行症とは、寄生虫の幼虫がヒトの口あるいは皮膚から侵入し、皮下に迷入することによって皮膚に線状の皮疹(ひしん)ができる病気です。日本では、主に魚介類に寄生した幼虫の経口摂取によって感染します。皮膚爬行症の原因となる寄生虫は、基本的にヒトが好適宿主ではないためにヒトの体内では成虫になることができず、幼虫のまま皮下を移動し続け、その痕跡が赤みを伴う線状の“爬行疹(はこうしん)”となって現れます。感染した幼虫の種類によって随伴する症状は異なりますが、ホタルイカによる旋尾線虫(せんびせんちゅう)の感染では皮膚爬行症のほか、急性腹症を起こすことがあります。治療としては、主に外科的に虫体を摘出します。また、駆虫薬を用いた治療が行われることもあります。

原因

皮膚爬行症の原因となる寄生虫は、顎口虫(がっこうちゅう)、マンソン裂頭条虫(れっとうじょうちゅう)、旋尾線虫、糞線虫(ふんせんちゅう)などです。

顎口虫

ヒトへの感染は主に淡水魚(川魚)の生食または不完全調理による食事で、具体的にはフナ、ドジョウ、ナマズ、ヤマメ、コイ、ヒメマス、カエルなどが挙げられます。

顎口虫は世界中に生息していますが、日本では有棘顎口虫、剛棘顎口虫、日本顎口虫、ドロレス顎口虫の4種類が健康被害を引き起こしています。

マンソン裂頭条虫

カエル、ヘビ、ブタ、イノシシ、ニワトリなどの両生類や家禽肉(かきんにく)を生食もしくは不完全調理で食べることによって感染しますが、マンソン裂頭条虫の中間宿主であるケシミジンコを含む井戸水を飲むことで感染する場合もあります。

旋尾線虫

旋尾線虫の幼虫は、体長5~10mm、体幅0.1mmで、ホタルイカやスルメイカ、スケソウダラ、ハタハタ、アンコウ、スッポンなどの内臓に寄生します。特にホタルイカを生食あるいは不完全調理で食べることによる感染が多くみられます。

糞線虫

糞線虫の幼虫は、主に汚染された土壌を裸足で歩くなどして直接触った際に皮膚から侵入して感染します。

鉤虫

鉤虫の幼虫は土壌中に存在するため、鉤虫の幼虫がいる土や砂の上を裸足で歩いたり日光浴をしていたりするときに皮膚から入りこみ感染します。主な侵入部位は足、お尻、背中などです。

症状

皮下を赤い線状の皮疹が蛇行して移動していきますが、随伴する症状などについては原因となる寄生虫によって異なります。

顎口虫

川魚などを生食した数週から数か月後に、皮膚の腫れ、発赤、痛みやかゆみなどの症状とともに、皮膚爬行症がみられます。発熱や腹痛などの全身症状を伴うこともあります。また、有棘顎口虫は時に内臓や脳などに移動することもあります。

マンソン裂頭条虫

主な症状は無痛性の皮膚爬行症です。まれに体の中で成虫になることがあり、成虫によって障害を受けることもあります。

旋尾線虫

旋尾線虫が寄生したホタルイカなどを食べてから2週間前後で皮膚爬行症がみられます。

皮疹はお腹から始まることが多く、数mm幅の赤い線状の皮疹が蛇行して長く伸びていきます。また、水疱(すいほう)をつくることが多いです。

糞線虫

皮膚爬行症がみられますが、糞線虫の幼虫は肺や腸などの臓器に移動することもあります。その場合、肺では乾いた咳などが生じ、消化管に達すると腹痛、下痢、食欲不振などの症状が現れることがあります。

鉤虫

皮膚から侵入した鉤虫が皮下を掘り進むことで皮膚爬行症が生じます。強いかゆみを伴い、小さな隆起や水疱(すいほう)がみられることもあります。

検査・診断

一般的に皮膚爬行症では、摂取した食べ物(食歴)、土や砂への接触の有無、皮膚症状などを基に診断されます。

診断の確定には爬行疹の先端部の組織を採取し、幼虫断端を証明してその形態的特徴から原因となる幼虫を同定します。また、血液検査で寄生虫への抗体を確認することもあります。そのほか、糞線虫では糞便中の虫体を証明するための糞便検査や、喀痰(かくたん)、気管支洗浄液、腹水などから虫体を証明することで確定診断とする場合もあります。

治療

皮膚爬行症に対する治療の第一選択は、病変部からの虫体の外科的摘出です。そのほか、アルベンダゾールやイベルメクチンなどの駆虫薬の内服によって虫体を殺滅する場合もあります。

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