概要
眼皮膚白皮症とは、眼や皮膚、髪の毛の色素が薄くなることを特徴とする病気を指します。眼や皮膚、髪の毛の色素は「メラニン」と呼ばれますが、メラニン合成に関わる遺伝子異常を原因として発症する病気です。皮膚や髪の毛などの色が薄くなる以外にも、感染症にかかりやすくなったり出血をしやすくなったりすることもある病気です。
こうした全身症状を伴う病気の例としては、チェディアック・東症候群があります。 日本においては難病指定を受けている疾患の一つであり、およそ5,000人の患者さんがいらっしゃると推定されています。 病気の自然経過は、全身症状の有無にも応じて異なりますが、眼皮膚白皮症の多くの患者さんでは視力障害や、中高年以降の皮膚がんのリスクが伴います。根治的な治療方法が必ずしも確立しているとはいい切れない部分も多く、日常生活において日光を避ける工夫を行うことが大切になります。
原因
眼皮膚白皮症は、TYR、OCA2、TYRP1、SLC45A、MC1Rなど、メラニンと呼ばれる色素の合成過程に関わる遺伝子の異常により引き起こされる病気です。メラニンは皮膚や眼球、髪の色に深く関わる色素です。
メラニン色素は「メラノサイト」と呼ばれる細胞において生成されています。メラニンがメラノサイトで生成されるためには、「メラノソーム」という細胞器官への物質輸送が適切に行われる必要があります。メラノソームにメラニンの原料が運ばれた後に、原料が何段階かの酵素反応を受けることからメラニンは合成されることになります。メラノソーム内への原料の輸送、メラノソーム内の代謝に関わる酵素など、どのステップに異常が生じてもメラニン色素は合成されなくなってしまいます。眼皮膚白皮症でみられる遺伝子異常は、こうしたステップを障害することになります。
眼皮膚白皮症は、「常染色体劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式を示します。ある特定の遺伝子は人の細胞内に2本存在していますが、1つが異常なだけでは病気は発症しません(病気の保因者になります)。しかし、2つの遺伝子に異常が生じると、病気が発症することになります。眼皮膚白皮症では、両親が保因者となり次世代に病気が伝播することになります。
症状
眼皮膚白皮症は、皮膚や眼、髪の毛の色素が薄くなる症状を呈するのみの「無症候性」と、色素の薄くなる症状以外にも全身症状を伴う「症候性」に分類されます。
色素が薄くなることに関連した症状として、全身の皮膚が白い、本来黒目の部分が青から灰色になるといったものを挙げることができます。髪の毛の色も完全な黒髪ではなく、茶褐色や銀色を呈します。また多くの眼皮膚白皮症の患者さんにおいて、羞明(ものがまぶしくみえます)、眼振を認めます。
症候性の眼皮膚白皮症としては、LYST遺伝子異常によるチェディアック・東症候群、MY05A遺伝子等の異常によるグリセリ症候群、HPS1遺伝子異常などによるヘルマンスキー・パドラック症候群を挙げることができます。チェディアック・東症候群では、通常は問題にならないような病原体に対して感染症を発症するようになり、特に呼吸器や皮膚に感染を来すようになります。また、血小板の機能異常を伴うこともあるため、軽度の外傷においても容易に出血によるあざを生じるようになります。神経系の症状として歩行がふらつく小脳失調や手足の感覚異常、けいれんなどを認めるようになります。
グリセリ症候群も類似の症状を呈することが知られています。ヘルマンスキー・パドラック症候群では40代頃になると、難知性の間質性肺炎や肉芽腫性大腸炎を発症するようになります。
検査・診断
眼皮膚白皮症では、皮膚と髪の毛の色のみでは判断がつかないこともあります。そのため眼底検査が重要であり、これを通して眼底の色素も薄くなっていることや黄斑低形成を確認することになります。また視力検査では矯正不可能な視力低下を認めます。
症候性の眼皮膚白皮症においては、血小板の異常、免疫系の異常、神経系の異常、肺の異常などを伴うことになります。血小板や免疫系の異常を確認するために血液検査が必要になります。また間質性肺炎を評価するために、胸部CTを行うこともあります。
眼皮膚白皮症では、原因となる遺伝子が判明しているものも多いです。これらの遺伝子異常を確認するために、遺伝子検査が行われることもあります。
治療
眼皮膚白皮症では、日光に対して過敏な状況であり、過剰な紫外線は皮膚がんや視力障害の発症リスクにつながります。したがって、日常生活において紫外線から身を守る対策を講じることが重要になります。具体的な紫外線対策としては、サンスクリーンを使用する、外での活動をできるだけ少なくする、肌の露出を少なくする服を着用するなどです。
また定期的に皮膚がんの発生がないかどうかをチェックすることも大切です。 その他、全身症状を伴う症候性の眼皮膚白皮症については、症状に応じた治療が必要になります。たとえば、チェディアック・東症候群では免疫不全を伴うことがあり、骨髄移植が治療方法として選択されることもあります。
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