眼瞼裂傷

概要

外傷によって眼瞼(まぶた)が切れたものを眼瞼裂傷(がんけんれっしょう)といいます。涙小管という眼瞼の内側にある涙の排水管が切れた涙小管断裂を伴うものや、ガラス片や砂、木くずなどの異物が傷口に入り込んだ眼瞼内異物を伴うものなど、さまざまです。

原因

主に転倒やスポーツ、交通外傷などがきっかけとなります。涙小管断裂は、フック状のものにまぶたを引っかけるなどして生じます。外での転倒では砂や木くず、交通事故などではガラス片などの眼瞼異物を伴うことがあります。

症状

眼瞼が切れることで出血や疼痛を生じます。

検査・診断

詳細に観察して、傷がどの程度の深さか、組織の欠損があるか、涙小管断裂や眼瞼内異物を伴っていないかを確認します。眼瞼の内側の裂傷で涙小管断裂の有無がはっきりしない場合、涙点という眼瞼の縁にある涙の排水管の入り口から針金を入れたり、水を通したりして確認します。また、交通外傷などで眼瞼内異物の可能性があり、肉眼的に異物の有無がはっきりしない場合には、CT撮影をして確認します。異物が金属片の可能性がある場合には、MRIは禁忌となります。外傷によって眼球破裂などの眼球自体の損傷や、眼球の周りの骨の骨折などを伴っていないかも調べます。

治療

眼瞼内異物を伴う場合には、必ず異物を取り除きます。砂や木くずなどの汚い異物の場合には、感染症にも注意する必要があります。

眼瞼のしわに沿った横方向の小さな浅い傷であれば、消毒、止血後に傷口をテープで合わせるだけで治せます。しかし、傷が深い場合や眼瞼の縁に及んでいる場合には縫合が必要となります。眼瞼では皮膚、眼輪筋（まぶたを閉じる筋肉）、瞼板（まぶたの深いところにある、脂を出す硬い板）など、さまざまな組織が層状の構造をとっています。そのため、それぞれの層を合わせた適切な縫合をしなければ、後に眼瞼の変形を生じてしまいます。変形治癒してしまうと、ゴロゴロするといった異物感を生じたり、目を閉じようとしても閉じきらない兎眼(とがん)になったりします。

涙小管断裂を伴う場合、そのままでは涙目が生じるため、切れた涙小管の断端を探し出して、縫い合わせる必要があります。涙小管は単なる管ではなく、その周囲にはホルネル筋という筋肉が取り囲んでおり、これらのポンプ作用によって、涙を目の表面から鼻へと排泄しています。そのため、涙小管断裂の治療の際には、切れてしまった涙小管とその周囲のホルネル筋の断端同士を縫い合わせます。涙小管は非常に細い管なので、管の内腔がつぶれないように中にチューブを入れた状態で縫合します。チューブは1か月半～2か月程度で抜き取ります。重症の眼瞼裂傷で、傷口の洗浄や消毒、異物除去、縫合などに時間がかかることが予想される場合には、全身麻酔で行います。

受傷後に時間が経ってしまうと、治療の難易度が上がるため、受傷後早期（受傷当日か翌日）の治療が望ましいと思われます。

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