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インタビュー

眼窩内腫瘍の治療後はどのような経過をたどるのか

眼窩内腫瘍の治療後はどのような経過をたどるのか
名取 良弘 先生

飯塚病院 副院長・脳神経外科部長、九州大学 医学部 臨床教授

名取 良弘 先生

この記事の最終更新は2016年01月10日です。

眼窩と呼ばれる目の奥の部分にできる腫瘍(眼窩内腫瘍)は、治療後に特徴的ないくつかの現象が起きるといいます。術後には目のリハビリを行うこともあるという、眼窩内腫瘍の治療後の経過について飯塚病院脳神経外科部長の名取良弘先生にお話を伺いました。

目の奥にできる腫瘍を眼窩内腫瘍といいますが、この病気の症状のひとつに「物が二重にみえる」というものがあります。目が飛び出てくることで眼窩内腫瘍に気づかれる方が多く、進行してくると物が二重に見えてくるようになります。

どういうことが起きているかというと、例えば、遠くを見ていて急に近くに視線を向けると目のなかでは非常に特殊な働きが起こります。

目の前の物にピントを合わせるとき、右目でみた背景と左目でみた背景は本来ならごちゃごちゃになっているはずです。つまり、ズレているということです。しかし、近くの物を見るときにはもちろんピントは合っていますし、背景も二重にはなっていません。というのも、そのときには利き目というどちらかの目が背景の情報だけを入れて、手前のものは両目で見るということが起きているからです。

ところが、腫瘍ができることで、これらの機能にズレが生じてきます。腫瘍がゆっくりと時間をかけて大きくなっていくと、頭の中でもそのズレに対してゆっくりと修正をかけていきます。つまり、脳がズレに対して修正を加えていくので、最初の頃は遠くも近くも二重に見える症状というのが起こりにくいのです。

ところが、ある一定の限界にさしかかったところで、脳がズレに対応できなくなって二重に見えるようになります。遠くを見ているときにもズレるわけですが、さらに近くを見るときにもズレてきます。そうなると、患者さんには非常に困ったことになるわけです。特にズレが背景をみる利き目だったりすると、生活にかなりの支障をきたすことになって、見た目のことよりも生活の不便さを訴えられて手術を希望される方が多くなります。

飯塚病院では、眼窩内腫瘍の手術のあとに目のリハビリを行っています。目のリハビリは極めて重要なものだと考えています。

先ほどもお話したように、何年もの時間をかけて少しずつズレていったものが、手術で一気にもとに戻るわけですから、脳がその急激な変化についていけないわけです。

そのため、手術の前には二重に見えていなかった方にも術後にこの現象が起こります。リハビリでは、二重に見える範囲を狭くしていくような訓練を行います。患者さんによっても多少の差がありますが、だいたい1週間から長い方でも1か月くらいリハビリを行うと改善されるようです。

また手術後に起きる変化として、それまで飛び出ていた目が今度は逆に引っ込んでしまうことがあります。手術で目の周りの脂肪を取り除いているわけではないのですが、例えるなら、絨毯の上に重い家具を置いていたのと同じような状況だと考えるとわかりやすいでしょう。

腫瘍を重い家具と考えてもらうと、腫瘍を取るとその部分にへこみが生じています。それがもとに戻るのにかなりの時間がかかるのです。人によっては、戻りが悪くてへこんだままという方もおられます。そのため、飯塚病院ではそういうことが起きないように、手術の際に眼窩のスペースを狭くする特殊な方法を用いて手術をしています。 

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  • 飯塚病院 副院長・脳神経外科部長、九州大学 医学部 臨床教授

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