概要
穿通性心臓外傷とは、外傷により心臓の壁に穴が開く緊急性の高い状態をいいます。心臓は血液を送り出し、全身の臓器に酸素と栄養を届けている生命の要です。そのため、外傷により心臓の壁が開くことで、血液を送り出す機能は大きく損なわれる危険性があります。
心臓を覆う心膜と心臓の間に血液が溜まると、心タンポナーデという危険な状態に陥ることがあります。心タンポナーデとは、心臓が正常に膨らんで血液をため込むことができなくなり、十分な血液を全身に送り出すことができなくなる状態です。
穿通性心臓外傷は生命に関わる状態であることから、迅速な蘇生処置が必要とされます。
原因
穿通性心臓外傷は、ナイフなどの刺器や銃弾、工事現場の杭などが主に前胸部を貫くことで起こります。
受傷のきっかけの多くは、バイクでの交通事故、工事現場での落下事故をはじめとする職場での事故、傷害事件などです。
症状
穿通性心臓外傷の症状には、血圧低下、全身の循環不全(ショック状態)による意識低下やだるさなどがあります。
心臓が正常に膨らむことができなくなる心タンポナーデでは、本来心臓に戻るはずの血液が滞り、低血圧や首の静脈(頚静脈)の怒張、心音の減弱などがみられます。
検査・診断
危険な状態に陥ることも多い穿通性心臓外傷の検査は、生命を守るための迅速で的確な評価と蘇生処置と並行して行われます。まずはFAST(Focused Assessment With Sonography for Trauma)と呼ばれる超音波検査により、心臓の周りに血液などの液体(心のう液)がみられるかどうかを確認します。
また、全身の血液循環が維持されているかを素早く見極めるために、手首や大腿部、頚部の動脈の脈拍、両手足の冷たさ、爪の血流などの確認や、血圧測定が行われます。
緊急性が極めて高い場合
大量出血や心タンポナーデによって生命の危険がさし迫っている場合には、大量の点滴と止血剤の投与を行いながら、ただちに開胸して止血処置や心タンポナーデに対する治療を行います。
治療
穿通性心臓外傷の治療は、重症度と緊急性に応じた蘇生処置が大前提となります。
最も危険な状態のひとつである心タンポナーデに対しては、心臓と心膜の間の血液を取り除くため、注射針を刺して吸引を行ったり(穿刺ドレナージ)、前胸部を手術で切開して心膜を開放し、血液と凝血塊を取り除きます(心膜開窓術)。
穿通性心臓外傷は重症となることが十分ありうるため、集中治療室での全身管理が行われます。
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