けっせつせいたはつどうみゃくえん

結節性多発動脈炎

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

結節性多発動脈炎とは、全身に分布する血管のなかでも中程度の太さの血管を中心に炎症が生じ、さまざまな症状が引き起こされる血管炎を指します。結節性多発動脈炎では全身各種臓器に分布する血管に病変が生じるため、障害を受けた血管に応じた臓器症状が出現します。

結節性多発動脈炎は日本において難病指定を受けている病気のひとつです。男性に多く、40〜60歳で病気が発症することが多いといわれています。

結節性多発動脈炎は、放置すると脳梗塞や消化管出血、腎機能障害などの重篤な症状を惹起(じゃっき)することもあるため、適切な治療を行うことが重要な疾患です。治療の基本はステロイドであり、症状にあわせてその他の免疫抑制剤等も使用されます。

原因

血管炎の種類

人の身体には、大動脈といった太い血管から、毛細血管といった細い血管に至るまで大小さまざまな太さの血管が存在しています。こうした大小さまざまな血管において炎症が生じる病気のことを血管炎と呼びます。

血管炎を分類するにあたって2012年に改訂されたチャペルヒル分類(CHCC2012)と呼ばれるものが使用されることがありますが、障害を受ける血管の大きさと傷害される臓器、血管炎の原因を含めて血管炎は分類されます。

これらの情報をもとにCHCC2012では、血管炎を7つのカテゴリーに分け、26疾患を規定しています。

障害が起こるメカニズム

結節性多発動脈炎とは特に中程度の動脈が障害を受ける病気です。ただし、結節性多発動脈炎では毛細血管には炎症は生じません。血管には、各種の臓器に栄養を供給し、その機能を維持する役割があります。

血管に炎症が生じると、以下のようなことが起こります。

(1)好中球(白血球の一種)をはじめとする炎症細胞が血管壁に浸潤(しんじゅん)(細胞が血管壁に入り込むこと)して、血管壁の構造が破壊されます。

(2)血管炎によって引き起こされた血管の破綻や血管内腔の狭窄・閉塞され、さらに血管が動脈瘤を形成することもあります。

(3)その血管が栄養供給している臓器に虚血や壊死をもたらし、全身にさまざまな症状が現れます。

B型肝炎ウイルスに感染した後など、各種ウイルスに関連して結節性多発動脈炎が発症することもあります。しかし、多くの患者さんにおいてなぜ血管炎が生じるのか、引き金となっている現象は不明なことが多いです。

症状

結節性多発動脈炎では、全身症状として発熱や体重減少などがみられます。より特異的なものとしては、全身に分布する血管が障害を受けるため、血管障害の影響を受けた臓器に一致した症状が出現することになります。

皮膚の血管障害による症状

皮膚に分布する血管が障害を受けると、皮膚への血流障害が生じます。その結果、以下のような症状を現れるようになります。

  • 痛みを伴う結節状の紅斑
  • 皮膚潰瘍
  • 壊死

皮膚に血管炎症状が限局した疾患として皮膚動脈炎が知られていますが、結節性多発動脈炎の部分症状なのか独立した疾患なのか、2017年現在も議論されている部分です。

消化管の血管障害による症状

消化管に分布する動脈が障害を受けることから、

  • 腹痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 血便

などの腹部症状を生じます。初期の症状として、食後の強い腹痛を訴えることもあります。

腎臓の血管障害による症状

腎臓の血管が障害を受けることも多く、高血圧や腎機能障害が生じます。

神経系の症状

神経系の症状としては、しびれやぴりぴりした痛みなどの知覚障害から、さらには末梢神経の運動神経障害を生じることもあります。さらに脳梗塞からの麻痺や意識障害といったより重篤な症状を呈することもあります。

検査・診断

可能なら生検

結節性多発動脈炎の診断を行う際、結節性多発動脈炎において標的になりうる臓器における動脈にて血管炎が生じていることを確認することが重要です。したがって、神経や筋肉、皮膚などの組織を実際に採取する生検と呼ばれる検査が行われることになります。

ただし、一度の生検で病変を確実に診断できないこともあるため、何度か繰り返し生検を行うこともあります。

生検が難しければ画像検査

また臓器によっては生検を行うことが困難な部位もありますので、その場合にはCTやMRIといった画像検査が行われます。

その他の検査

結節性多発動脈炎はB型肝炎をはじめとしたウイルス感染症でも発症することがあるため、ウイルス感染症の評価が行われます。

また、血管炎が起こっている臓器を精査する目的で、各種臓器に関連した検査(たとえば尿検査など)も行われます。血液検査で白血球の増加やCRPの上昇など、炎症反応の評価を行うこともありますが、こうした反応は、結節性多発動脈炎に限ったものではありません。

また、この検査項目が陽性なら結節性多発動脈炎である、と診断ができるマーカーも存在していません。そのため、診断に際しては全身を詳細に評価しつつ、他の疾患との鑑別も並行しながら診断を決めることが必要です。

治療

一般的には、第一選択としてステロイドが使用されます。消化管や腎臓、中枢神経などの重要臓器に症状が出現している場合には、ステロイドパルス療法と呼ばれる大量のステロイド投与を行うことで急性期の病変コントロールを図ります。

その後、ステロイドに対する反応性を見ながら用量を調節します。ステロイドの効果がない場合には、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキセートといった他の薬剤の使用が検討されます。

結節性多発動脈炎では血管病変が進行するため、規則正しい生活スタイルを確立し、症状にあった適切な治療を継続することが重要になります。

結節性多発動脈炎の治療は、B型肝炎ウイルスを代表としたウイルス感染症がある場合には治療方針が変わり、まずウイルスに対応した治療が必要です。しかし、こうしたタイプの結節性多発動脈炎は必ずしも多いわけではありません。

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