インタビュー

耳の構造と耳小骨の役割

耳の構造と耳小骨の役割
奥野 妙子 先生

三井記念病院  耳鼻咽喉科特任顧問

奥野 妙子 先生

この記事の最終更新は2015年12月15日です。

私たちが普段当たり前のように聞いている声や音、言葉は、すべて「耳」という器官を通じて処理され、それらを脳が知覚することによって「聞こえている」と認識することができるようになっています。また、耳は外耳から中耳、中耳から内耳を通して神経へとつながっており、耳のなかにある様々な組織がそれぞれの働きをもたらすことによって、私たちは音を楽しんだり言葉を伝えたりしています。今回は、耳の構造と、音を伝達するにあたって欠かせない器官である「耳小骨」の役割について、三井記念病院耳鼻咽喉科部長の奥野妙子先生にお話し頂きました。

耳は耳介、外耳道、鼓膜を通して、中耳、内耳へとつながっていきます。

まず、耳介が空気の振動(音)を耳へと集める役割を果たします。耳介から外耳道を通った音は、外耳道の最も奥にある鼓膜を振動させます。この鼓膜が振動することで、音が「振動」として中耳に伝達されます。中耳にある耳小骨(後述します)が順に鼓膜の振動を内耳にある蝸牛へと伝え、蝸牛のなかのリンパ(外リンパ、内リンパ)が揺れ動くと、感覚細胞がその振動を電気信号に変換します。その電気信号が蝸牛神経から大脳へと伝わり、脳が「音」としてその信号を認知したとき、私たちは「音」が聞こえたと判断できます。

耳小骨はツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの骨から構成される

耳は感覚器のひとつであり、外耳、中耳、内耳の3つで成り立っています。また中耳には鼓膜と耳小骨があります(耳小骨は、鼓膜の近くから順にツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨といいます)。耳小骨の役割は、鼓膜の振動エネルギーを大きく増幅させて内耳にある蝸牛へと伝えるというものです。また、耳小骨には筋肉がついていて、蝸牛に伝える振動の量を調整し、蝸牛に過剰な振動が伝わらないよう守る働きもあります。つまり、外部から入ってきた音を脳が正しく知覚するために重要な部分といえるでしょう。

なお、耳小骨は基本的に全206ある人体の骨(成人)のうち、最も小さな骨だということが分かっています。

ツチ骨は、3つある耳小骨のうち最も大きく(8~9mm)、下部分のツチ骨柄という場所が直接鼓膜に接しているのが特徴です。鼓膜から受け取った振動を、キヌタ骨とアブミ骨へと伝える役割を果たしています。

また、ツチ骨は頭部が球状で、関節のような動きをしており、キヌタ骨へとつながります。ツチ骨の頸部には鼓膜張筋という筋肉がついており、鼓膜の張力を調節しています。鼓膜が円錐形を保っているのもこの筋の働きによるものです。

キヌタ骨はツチ骨とアブミ骨の中間に位置します。全長はツチ骨よりも長く、その脚の先端からは豆状突起が出ており、アブミ骨頭への関節になっています。ツチ骨とつながっているため、鼓膜が押され、ツチ骨の振動を受けると、キヌタ骨がてこの原理で動きだし、アブミ骨へと伝わっていきます。

アブミ骨は内耳に最も近い位置にある耳小骨です。高さが4mmともっとも小さい耳小骨ですが、大切な働きをしています。キヌタ骨とつながっており、ツチ骨とキヌタ骨から伝わってきた振動を、前庭窓(中耳と内耳の交通路のような部分。ここにアブミ骨の底がはまり込んでいる)を通じて内耳にある蝸牛のリンパへ伝える役割を果たしています。アブミ骨にて鼓膜が受けた音の圧力が約30倍に増幅され、内耳へとエネルギーが伝えられます。

また、アブミ骨にはアブミ骨筋という筋肉がついていて、強大音が入ったときにアブミ骨の振動を制限し、大きな音から蝸牛を守る働きをしています。

 

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