ちゅうぶかんしょうこうぐん

肘部管症候群

最終更新日:
2024年10月17日
Icon close
2024/10/17
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

肘部管症候群は、肘の内側を通る尺骨神経が障害を受けることで手指のしびれや痛みが生じる病気です。この症候群の名前の由来となる肘部管は、肘の内側にある狭いトンネル状の空間のことを指します。肘部管は上腕骨内側上顆*、靱帯、筋膜などによって形成されており、尺骨神経が通過しています。肘部管症候群は、この部位で尺骨神経が持続的に圧迫されたり、繰り返し過度に引っ張られたりすることで発症します。

症状は通常、小指と薬指の一部にしびれ感を感じることから始まります。病状が進行すると、小指や薬指の小指側の痛みや感覚の違和感、手の筋肉の萎縮(痩せ)、握力の低下、さらには指先の細かい動作が困難になるなどの症状が現れます。

治療は症状の程度によって異なります。軽度の場合は、肘関節の安静や肘の屈曲を制限する装具の使用、日常生活での動作改善、鎮痛薬による薬物療法などの保存的治療が行われます。症状が重度な場合や保存的治療で改善がみられない場合などには、手術治療が検討されます。手術では、圧迫の原因となっている靱帯などの組織を切り離す肘部管開放術や、尺骨神経を移動させて圧迫や伸展から保護する尺骨神経前方移動術などが行われます。

*上腕骨内側上顆:肘の内側の骨の出っ張り部分。

原因

肘部管症候群は、尺骨神経が持続的に圧迫されたり、引っ張られたりすることによって生じます。尺骨神経は小指や薬指の感覚や手指の動きに関わる重要な神経で、上腕から肘の内側を通り、指先まで分布しています。特に肘付近では神経が皮膚の表面近くを通っているため、外部からの影響を受けやすい状態にあります。

尺骨神経が障害を受ける原因としては、まず神経を固定する靱帯によって神経が圧迫されてしまうことが挙げられます。また、ガングリオンをはじめとする腫瘤の出現による神経の圧迫も原因となります。ガングリオンとは、関節や腱の周囲にできる良性の袋状のこぶのことです。

さらに、加齢や骨折による骨の変形なども原因となります。特に子どものころに腕の骨折を経験した方の場合、年齢とともに肘が変形し尺骨神経が引っ張られることにより、肘部管症候群に至ることもあります。

そのほか、野球や柔道などのスポーツをする方や、大工など手作業の多い職業に従事する方に生じやすいことも分かっています。これは、繰り返しの動作や肘への負荷が神経に影響を与えるためです。また、長時間肘を曲げた姿勢を維持する習慣がある方も発症リスクが高いとされています。

症状

肘部管症候群の症状は、通常、徐々に進行していきます。初期段階では、小指や薬指の小指側にしびれが現れます。症状が進行すると痛みや感覚の違和感が現れます。この病気の特徴として、薬指のしびれが小指側の半分にのみ現れることが挙げられます。また、これらの症状は肘をまっすぐにしているときよりも、曲げているときにより強く感じられる傾向があります。

時間が経過し、症状が進行すると、手の筋肉に影響が及びます。特に小指の付け根部分や、親指と人差し指の間の部分を中心に、手の筋肉が麻痺し始めます。この麻痺により、筋肉の萎縮が生じ、物をうまくつかめなくなったり、手先を細かく動かすことが困難になったりします。

さらに症状が進行すると、手の筋肉の麻痺がより顕著になり、小指と薬指が折れ曲がってうまく伸ばせなくなる状態になることがあります。この状態は医学的には“かぎ爪変形”や“鷲手(わして)変形”と呼ばれます。

検査・診断

肘部管症候群の診断は、問診と視診・触診による症状の確認から始まります。小指や薬指の半分にしびれがあり、筋肉の萎縮がみられれば、この疾患が疑われます。具体的な検査としては、ティネル兆候の確認、肘屈曲テストなどが実施されます。

ティネル兆候は、肘部管を叩いたときに指先にしびれや痛みが響く現象を指します。肘屈曲テストでは、肘関節と手の関節を最大限に曲げた状態を維持し、症状の出現を観察します。

これらの基本的な検査に加えて、画像検査や神経伝導速度検査を行います。画像検査では、X線撮影、MRI、超音波検査などが用いられ、骨の変形や腫瘤の有無、神経の圧迫などを詳細に観察することができます。神経伝導速度検査は、皮膚の上から神経に電気刺激を与え、神経を通る電気信号の伝達速度を測定する検査です。この検査により、神経障害の部位や程度を評価することができます。

治療

肘部管症候群の治療には、保存的治療と手術治療の2つのアプローチがあります。軽症例では主に保存的治療が試みられますが、症状が改善しない場合や進行し始めた場合には、手術治療が検討されます。

保存的治療

保存的治療の基本は肘の安静です。日常生活で肘を過度に曲げることを避け、負担をかけないようにします。また、鎮痛薬やビタミン剤などの薬物療法を併用して、炎症が落ち着くのを待つ場合もあります。場合によっては、肘用のサポーターやギプスなどの装具の使用も効果的です。

手術治療

手術治療は、保存的治療で改善がみられない場合や症状が進行し始めた場合に選択されます。近年では内視鏡を用いた低侵襲(ていしんしゅう)手術も行われるようになり、術後の傷や痛みを最小限に抑えることが可能になっています。代表的な手術方法には以下のようなものがあります。

肘部管開放術

肘部管開放術では、肘関節の内側を切開し、尺骨神経を圧迫している組織(靱帯、筋肉、筋膜、腱膜など)を切離します。また、ガングリオンなどの腫瘤が存在する場合は、それらも切除します。この手術により、神経への圧迫が軽減され、症状の改善が期待できます。症例によっては骨を削って神経の通り道を広げることもあります。

尺骨神経前方移動術

尺骨神経前方移動術は、尺骨神経を通常の位置から前方に移動させる術式です。圧迫が少ない位置に神経を移動させることで、神経への圧迫や摩擦を軽減させます。特に、肘の屈曲時に神経が過度に緊張する場合に有効です。

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「肘部管症候群」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

肘部管症候群

Icon unfold more